1991年思想・芸術部門映画・演劇
ピーター・スティーヴン・ポール・ブルック  写真

ピーター・スティーヴン・ポール・ブルック
(Peter Stephen Paul Brook)

  • イギリス / 1925年3月21日
  • 演出家
  • 国際演劇創造センター(CICT) 主宰

東西の演劇を深い次元で融合させた革新的な演出表現により、古典に新たな命を与え世界に大きな影響を与えた演出家

40年以上にわたり、イギリス演劇界のみならず世界の演劇界のリーダーとして、大きな影響を与え続け、古典的でありながら同時に前衛的でもあるという演出表現によって、従来の演劇常識を打ち破るとともに、西洋演劇と東洋演劇とを様式を超えた次元で合体させることを実現した20世紀を代表する演出家である。
[受賞当時の部門: 精神科学・表現芸術部門]

プロフィール

略歴

1925年
イギリス ロンドンに生まれる
1945年
オックスフォード大学卒業
1946年
シェークスピア記念劇場(現ロイヤル・シェークスピア劇場)の最年少招待演出家
1947年
コベント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウス演出家
1962年
ロイヤル・シェークスピア劇団(RSC)を基盤に活動
1971年
国際演劇研究センター(CIRT)設立(パリ)



1974年
国際演劇創造センター(CICT)主宰(パリ)

主な受賞と栄誉

1963年
パリ国際演劇祭グランプリ『リア王』
1970年
ロンドン劇評価最優秀演出家賞『真夏の夜の夢』
1971年
トニー賞最優秀演出家賞『真夏の夜の夢』
1981年
フランス批評家協会優秀舞台賞『桜の園』
1982年
フランス音楽演劇批評家協会大賞『カルメンの悲劇』

主な作品

1955年

『タイタス・アンドロニカス』

1962年

『リア王』

1964年

『マラー/サド』

1970年

『真夏の夜の夢』

1971年

『オルガスト』

1981年

『桜の園』『カルメンの悲劇』

1985年

『マハーバーラタ』

1990年

『テンペスト』

贈賞理由

東西の演劇を深い次元で融合させた革新的な演出表現により、古典に新たな命を与え世界に大きな影響を与えた演出家

ピーター・ブルック氏は、極めて古典的でありながら同時に前衛的でもあるという一見不可能なことを実現するとともに、演劇の劇的展開のリズムをゆるがせにしない演出で、40年以上にわたり、イギリスのみならず世界の演劇界のリーダーとして、大きな影響を与え続けてきた。特に、西洋演劇と東洋演劇の両方の特質を吟味しながら、単なる様式の次元にとどまらず、演劇表現の最も深い次元で両者を合体させた功績は、画期的なものであった。

ブルック氏は、10代から演出を手掛け、若くして天才とうたわれた演出家であり、30代に入ってからは、1962年に『リア王』を不条理劇風の解釈によって演出することにより、シェークスピア劇の演出に一種の革命をもたらした。その後も、残酷劇やハプニングの手法を取り入れた演出、非言語伝達の実験を試みるなど、演劇を根元的に問い直す仕事を続けてきた。

また、1970年には、パリで国際演劇研究センター(CIRT)を、次いで1974年からは国際演劇創造センター(CICT)も発足させて、演劇活動の国際化との取り組みを始められ世界中の若い演劇人の養成に力を尽くしている。

有名な著書としては『何もない空間』があり、古典の現代化が可能であることを示す手引きとして、演劇関係者と研究者に大きな影響を与えている。

ブルック氏は、欧米、アジア、アフリカなど十数カ国の俳優を同じ舞台に出演させることによって、言葉の壁という限界があるにもかかわらず、文化の違いを越えた世界的な演劇を実験し、成功させている。特に、9時間に及ぶ大作『マハーバーラタ』では、インドの叙事詩を素材に、文化の個性と普遍性の両立可能性をみごとに示した。

従来の演劇常識を打ち破り、前衛的でありながら多くの観衆を引き付ける彼の演劇は、人間の問題に直接迫る独自の手法を生むことによって、空前の境地に到達したといえる。ブルック氏はその意味で、まさに20世紀の演出家の頂点に立つ人であり、第7回京都賞精神科学・表現芸術部門の受賞者として、最もふさわしい。

記念講演

記念講演要旨

金色の魚

芸術はすなわち質であり、その質を判定するには何らかの基準が必要である。

昔から演劇においてはこの基準の立て方がとても難しく、文学や美学、絵画、哲学、社会学、政治学といったほかの分野での基準で評価されてしまう場合が多い。何より問題なのは、一番よく用いられる基準が、使い古されて真の意味を全く失ってしまった「文化」なる言葉の中に包含されていることだ。

しかし演劇の性質をよく考えてみるならば、演劇の真実とは唯一、観客との瞬間瞬間の相互関係にしか存在しないことが判ってくる。予測外の価値ある何かが起きるも起きないも、まさにこの、役者と観客が触れあい、摩擦を起こす領域での話なのだ。

もし、この領域こそが金色の魚の住処であったならば、この魚を日の光の下に釣り上げ得る漁網とはどんなものだろうか?

演劇の場で行われていることへの考察は徹頭徹尾「今現在のこの瞬間」に終始するものであり、この深みこそ金色の魚が人知れず泳いでいる。この魚を釣り上げる網とはどんな性質を持っているのだろうか?穴だらけなのだろうか、入念に網あげたものなのだろうか?

【関連情報】
(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

「芝居はどのようにして作られるか」

What is the process through which a production comes into being ?

日時
1991年11月12日(火)13:00-17:25
場所
国立京都国際会館

プログラム

企画構成: 喜志 哲雄 精神科学・表現芸術部門審査委員会委員、京都大学文学部教授
13:20
開会
13:25
業績紹介 喜志 哲雄
13:30
講演及び演技指導 ピーター・ブルック 精神科学・表現芸術部門受賞者
「秘密は何もない」
出演:土取利行 桃山晴衣
14:15
休憩
14:45
討論 ピーター・ブルック
ナターシャ・パリー 受賞者夫人、女優
山崎 正和 精神科学・表現芸術部門専門委員会委員、大阪大学文学部教授
喜志 哲雄
17:25
閉会
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