Witold Lutoslawski

第9回(1993)受賞

思想・芸術部門

音楽

ヴィトルト・ルトスワフスキ

/  作曲家

1913 - 1994

記念講演会

私の人生と音楽

1993年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

ルトスワフスキ イン 京都

1993年

11 /12

13:20~17:25

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

東欧民族音楽の知見をもとに偶然性も取り入れた無調音楽の新しい可能性を切り拓いた作曲家

《葬送音楽》や《交響曲二番》などの代表作を通じ、新しい無調性音楽の手法と、独自の「偶然性」の手法を導入するなど、現代的な音楽表現の手法を開発することによって、20世紀音楽の巨匠として、第二次大戦後の音楽界に大きな影響を与えた現代ヨーロッパを代表する作曲家である。

[受賞当時の部門: 精神科学・表現芸術部門]

贈賞理由

ヴィトルト・ルトスワフスキ氏は、新しい無調音楽の手法と、独自の「偶然性」の手法を導入するなど、現代的な音楽の表現方法をとり入れることによって、20世紀音楽の巨匠として、第二次大戦後の音楽界に大きな影響を与えた現代ヨーロッパを代表する作曲家である。

ルトスワフスキ氏は、祖国ポーランドにふりかかった厳しい状況の中で、音楽家としての感性を磨くとともに、自国の民族音楽を深く研究し、新しい音楽表現の方法を探求してきた。

ルトスワフスキ氏の作風は、新古典主義から始まるが、1941年の《パガニーニの主題による変奏曲》が初期の代表作である。1954年の《管弦楽のための協奏曲》は、調性にとらわれない、いわば「無調性の対位法」ともいうべき新しい語法を駆使し、民謡に動機を得ながら、民謡の次元からはるかに独自の境地に達している。

1956年の「雪解け」が契機になり、決定的な転機を刻んだのは、1958年の《葬送音楽》であった。一見12音音列に基づいているようで必ずしもそうでなく、独特の音程関係と和音で組み立てられており、曲全体の構造が実にみごとな均斉をみせている。また1961年の《ヴェネチアの遊戯》では、「コントロールされた偶然性」を導入し、この手法により、音の混乱が生ずるよりも、むしろ積極的な意味性が曲に宿される結果となった。

ルトスワフスキ氏はその後も《交響曲第2番》(1967)、《チェロ協奏曲》(1970)や、1980年代の《連鎖(チェーン)》シリーズなどの代表作を発表し続けて、時代的精神に対応しながら、積極的に新しい音楽表現の可能性を追及してきた。その音楽手法の先進性と深い精神性との共存のバランスは、聴衆に素晴らしい感銘を与えるとともに、音楽の新しい可能性を幅広く示すことによって、現代音楽家のよき指標ともなっている。

1960年代より現在まで世界各地で活躍を続けてきたヴィトルト・ルトスワフスキ氏は、ヨーロッパはもとより世界を代表する20世紀の作曲家として第9回京都賞精神科学・表現芸術部門の受賞者に最も相応しい。

プロフィール

略歴
1913年
ワルシャワで生まれる
1937年
ワルシャワ音楽院卒業(ピアノと作曲のディプロマ取得、ピアノの師はイェジ・レフェルト、 作曲の師はヴィトルト・マリシェフスキ)
1956年
「ワルシャワの秋」音楽祭の企画委員会委員
1959年
ISCM(国際現代音楽協会)のポーランド支部委員
1963年
国外での国際的な音楽活動に従事しはじめる
1973年
ポーランド作曲家協会 副理事長
主な受賞・栄誉
1959年,1973年
ポーランド作曲家協会賞
1959年,1964年,1968年
ユネスコ作曲賞(第1位)
1964年
クーセヴィッキー賞
1971年
ラヴェル賞
1973年
シベリウス賞
1985年
スペイン・ソフィア女王 フェッラー・サラト賞
1992年
国際音楽協会年間最優秀音楽家賞
主な論文・著書
1954年
『管弦楽のための協奏曲』
1958年
『葬送音楽』
1961年
『ヴェネチアの遊戯』
1963年
『アンリ・ミショーの三つの詩』
1967年
『交響曲第二番』
1970年
『チェロ協奏曲』

プロフィールは受賞時のものです