Morris Cohen

第3回(1987)受賞

先端技術部門

材料科学

モーリス・コーエン

/  金属材料学者

1911 - 2005

マサチューセッツ工科大学 名誉教授

記念講演会

金属学と材料科学・工学の進歩

1987年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

新素材の開発を目指して

1987年

11 /12

13:30~17:00

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

金属の相変態や諸性質に関する幅広い基礎的知見を与え、新しい材料の創出に根幹的貢献

材料における相変態や組織と性質の関連性に幅広い基礎的新知見をもたらし、今日実用化されているすべての超強力鋼や注目を集めている形状記憶合金、セラミック系材料などの開発に草創期から指導的役割を果たしてきた金属工学の第一人者である。

贈賞理由

モーリス・コーエン博士は、1973年マサチューセッツ工科大学の助教授に就任し、専門活動を開始した。博士はその生涯を材料科学・工学、特に物理金属学の分野における教育と研究に捧げてきた。そして今、博士は材料科学・工学分野での優れた学術的指導者の立場にある。

博士の研究成果は、材料における相変態や組織との性質の関連性に、幅広い基礎的新知見をもたらした。博士の業績は次に示す分野で輝かしき展望を開拓した。すなわち、マルテンサイトならびにベイナイト変態の機構と動力学、超強力鋼の焼き戻し現象と強化機構、固体合金の熱力学、合金の時効硬化現象、変態加速拡散、不均質材料の脆性破壊機構、ひずみ硬化と動的回復の機構、ひずみ誘起変態と変態塑性、微量元素を添加した鋼の結晶微粒細化機構、および結晶合金の急速凝固等である。博士の研究成果は、今日実用化されたすべての超強力鋼の基盤となったばかりでなく、金属系材料、セラミック系材料、生体系材料における形状記憶現象や変態塑性などの先端材料科学分野にも深くかかわるものである。

コーエン博士は、そのたゆまざる活動を通じ、材料科学・工学の分野で2世代にもわたる学生や共同研究者に励ましを与えてきた。さらに、博士は国家プロジェクトはもちろんのこと、国際プログラムにも広く貢献している。博士はすでに講義や助言をするために多くの国を訪問しており、博士への評価が高いことは20を超す国際賞の受賞、名誉学位、客員教授称号等からもうかがい知ることができる。博士の人間的な優しさ、深い知性、溢れる活力が今日の指導的立場へと博士を導いたのである。

研究者・教育者としてのコーエン博士の活動はなおも遙かなる完成へ向けて胎動し続けている。

プロフィール

略歴
1911年
アメリカ、マサチューセッツ州チェルシーに生まれる
1933年
マサチューセッツ工科大学卒業
1936年
マサチューセッツ工科大学冶金学博士号取得
1937年
マサチューセッツ工科大学冶金学 助教授
1941年
マサチューセッツ工科大学冶金学 準教授
1946年
マサチューセッツ工科大学物理冶金学 教授
1962年
マサチューセッツ工科大学材料工学フォード教授職
1975年
マサチューセッツ工科大学研究所 教授
1982年
マサチューセッツ工科大学研究所 名誉教授
主な受賞・栄誉
1968年
アメリカ金属学会金賞
1970年
日本金属学会金賞
1971年
フランス金属学会ピエール・シュブナール賞
1977年
アメリカ合衆国科学賞大統領賞
1986年
アメリカ鉱業・冶金・石油技術者協会冶金学会指導者賞
主な論文
1962年
「鋼の強化」
1970年
「塑性変形中の自己拡散」
1978年
「材料と人類」
1982年
「マルテンサイト変態の古典的ならびに非古典的機構」(G. B. オルソンとの共著)
1983年
「急冷凝固プロセスと組織一性質関係の制御」

プロフィールは受賞時のものです