Morris Cohen
第3回(1987)受賞
材料科学
/ 金属材料学者
1911 - 2005
マサチューセッツ工科大学 名誉教授
材料における相変態や組織と性質の関連性に幅広い基礎的新知見をもたらし、今日実用化されているすべての超強力鋼や注目を集めている形状記憶合金、セラミック系材料などの開発に草創期から指導的役割を果たしてきた金属工学の第一人者である。
モーリス・コーエン博士は、1973年マサチューセッツ工科大学の助教授に就任し、専門活動を開始した。博士はその生涯を材料科学・工学、特に物理金属学の分野における教育と研究に捧げてきた。そして今、博士は材料科学・工学分野での優れた学術的指導者の立場にある。
博士の研究成果は、材料における相変態や組織との性質の関連性に、幅広い基礎的新知見をもたらした。博士の業績は次に示す分野で輝かしき展望を開拓した。すなわち、マルテンサイトならびにベイナイト変態の機構と動力学、超強力鋼の焼き戻し現象と強化機構、固体合金の熱力学、合金の時効硬化現象、変態加速拡散、不均質材料の脆性破壊機構、ひずみ硬化と動的回復の機構、ひずみ誘起変態と変態塑性、微量元素を添加した鋼の結晶微粒細化機構、および結晶合金の急速凝固等である。博士の研究成果は、今日実用化されたすべての超強力鋼の基盤となったばかりでなく、金属系材料、セラミック系材料、生体系材料における形状記憶現象や変態塑性などの先端材料科学分野にも深くかかわるものである。
コーエン博士は、そのたゆまざる活動を通じ、材料科学・工学の分野で2世代にもわたる学生や共同研究者に励ましを与えてきた。さらに、博士は国家プロジェクトはもちろんのこと、国際プログラムにも広く貢献している。博士はすでに講義や助言をするために多くの国を訪問しており、博士への評価が高いことは20を超す国際賞の受賞、名誉学位、客員教授称号等からもうかがい知ることができる。博士の人間的な優しさ、深い知性、溢れる活力が今日の指導的立場へと博士を導いたのである。
研究者・教育者としてのコーエン博士の活動はなおも遙かなる完成へ向けて胎動し続けている。
プロフィールは受賞時のものです