2018年思想・芸術部門美術(絵画・彫刻・工芸・建築・写真・デザイン等)
ジョーン・ジョナス 写真

ジョーン・ジョナス
(Joan Jonas)

  • アメリカ / 1936年7月13日
  • 美術家
  • マサチューセッツ工科大学 名誉教授

パフォーマンスとニューメディアを融合させた新しい芸術表現の先駆者であり、50年にわたり現代美術の最先端を走り続ける芸術家

パフォーマンスとビデオアートを融合させた新しい表現形式を創始し、進化・洗練させることで現代美術の最先端を走り続けてきた。観る者に多様な解釈を許す迷宮的な作品によって、1960年代アヴァンギャルドの遺産をポストモダン芸術の枠組みへ発展的に継承し、後続世代へ多大な影響を与えてきた。

プロフィール

略歴

1936年
米国ニューヨーク市生まれ
1958年
マウント・ホリヨーク大学で美術史を修める
1958–1961年
ボストン美術館美術大学で彫刻を学ぶ
1960年代
ロバート・ラウシェンバーグ、クレス・オルデンバーグ、トリシャ・ブラウン、ジョン・ケージなどさまざまな芸術家と交流
1965年
コロンビア大学で彫刻を学び修士号を得る
1968年
セント・ピーターズ教会(ニューヨーク)で初のパブリック・パフォーマンス
1972年
パフォーマンスでビデオを使用開始
1994–1998年
シュツットガルト芸術アカデミー 教授
1998–2015年
マサチューセッツ工科大学 教授
2015年–
マサチューセッツ工科大学 名誉教授
2015年
第56回ヴェネツィア・ビエンナーレのアメリカ代表に選出

主な受賞と栄誉

1989年
マヤ・デレン賞、アメリカン・フィルム・インスティチュート
2009年
生涯功績賞、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館
会員
米国芸術科学アカデミー、米国芸術文学アカデミー

主な作品

1972年

Organic Honey’s Visual Telepathy (ビデオパフォーマンス)

1972年

Vertical Roll (ビデオ)

1976/2000年

Mirage II (ビデオ)

1977年

Three Tales (インスタレーション)

1980年

Double Lunar Dogs (ビデオパフォーマンス)

1985年

Volcano Saga (ビデオパフォーマンス)

2002年

Lines in the Sand (パフォーマンス、インスタレーション)

2004/2006年

The Shape, the Scent, the Feel of Things (パフォーマンス、インスタレーション)

2010/2012/2013年

Reanimation (パフォーマンス、インスタレーション)

2015年

They Come to Us without a Word (パフォーマンス、インスタレーション)

2016–2017年

Stream or River, Flight or Pattern (インスタレーション)

業績

パフォーマンスとニューメディアを融合させた新しい芸術表現の先駆者であり、50年にわたり現代美術の最先端を走り続ける芸術家

ジョーン・ジョナス氏は1970年代初頭にパフォーマンスとビデオを融合させた新しい表現形式を創始し、この表現の進化と洗練に尽力したことで、現代のパフォーマンスとビデオアートの領域における先駆者の一人として、また現在もパフォーマンスと新しいデジタルメディアとの関係を探求し続けるアクティブな芸術家として、高い評価と尊敬を集めている。

ジョナス氏は大学で美術史と彫刻を学んだ後、1960年代後半のニューヨークで多くの作家たちと交流、特に後年ポストモダン・ダンスの神話的存在となるトリシャ・ブラウンやルシンダ・チャイルズのワークショップに参加したことが、身体表現を重視する独自の作品を生み出す契機となった。1970年以後のジョナス氏の作品は、身体表現と生成プロセスの重視、異質な要素を受け入れ、ストーリーを持たないノンリニア・ストラクチャー(非線形構造)が大きな特徴となる。ジョン・ケージなどの1960年代アヴァンギャルドの最良の遺産を、加算的で多元的価値観のポストモダン芸術の枠組みへ発展的に継承し後続世代に伝えてきたことも、ジョナス氏の長年にわたる大きな業績である。

ビデオアートの歴史における古典として評価の高いVertical Roll (1972)は、現前のパフォーマンスのビデオ映像を、舞台上のTVモニターにリアルタイムで映すもので、ライブパフォーマンスと映像の混在、鑑賞者の視線とカメラ角のズレによる時間と空間の齟齬、そして電気的なシステムの遅延の可能性をも導入した革命的な構造を持つものであり、発表後多くの作家たちから研究と参照の対象とされた。2000年代の代表作Reanimation (2010/2012/2013)は、アイスランドの自然や神話、ドローイング、音響、過去の自作の映像断片などが織りなす迷宮的で、さまざまな要素が重層的に加算されていく作品であった。ジョナス氏の作品は鑑賞者に単一な解釈を求めるものではなく、むしろ鑑賞者が主体的に作品を解読し、誤読を含む多様な解釈を獲得することを促す、極めて今日的な物語構造を内包している。

またジョナス氏は1998年から今日までマサチューセッツ工科大学で教鞭を執り、すぐれた人格を持つ教育者としても尊敬を集め、後に続く作家たちに計り知れない影響を与え続けている。

記念講演

記念講演要旨

イン・ザ・シャドウ・ア・シャドウ

本講演では、パフォーマンスやビデオ、インスタレーションなどを媒体として、対象のイメージを変容させるという私の発想をたどるとともに、芸術の歴史や文化的な儀式など、私自身を除き、作品に繰り返し現れるテーマについてお話ししたいと思います。モダニズムの伝統における詩的構造や映画で語られる言葉に対して私が抱いている関心が、作品の構造・内容の着想に不可欠なものになっています。こうした視覚的・聴覚的認識にまつわる体験は、私の記憶と作品に深く刻み込まれています。ドローイングも私の作品と切り離せない要素の一つです。どのプロジェクトでも、作品を展開する空間、技術、主題、素材やテクニックとの相関から、複数のドローイング方法を試します。また、ムーブメントへのアプローチと展開のほか、音、音楽、カメラ、空間などに関連した小道具の使用についてもお話ししたいと思います。内容を十分にご理解いただけるよう、パフォーマンスやビデオ作品の映像も使用する予定です。

まず、鏡を小道具として使うことから始めました。鏡を使ったパフォーマンスを行ったのです。これはミラーステージとも呼べるでしょう。ほぼ同時期にビデオという媒体を取り入れるようになりますが、それは1970年に日本でポータパックを購入してからのことです。ビデオのモニターは、いわば現在進行形の鏡です。Organic Honeyに見られるように、自分とは正反対の別の自己が創り出されるプロセスを映します。その後、ライブビデオパフォーマンスを行ったり、ビデオ作品の自主制作を行ったりするようになりましたが、どちらも互いに影響を及ぼしました。同時に、屋外の空間と距離感が作品のイメージや、音やイメージに対する認識をどのように変えるのかをテーマに、屋外でのパフォーマンスも行いました。

私のアーティストとしての歩みの中で重要な出来事としては、以下の3つが挙げられます。

- おとぎ話を発端に、物語の要素を取り入れた作品の制作を開始(1976年)

- パフォーマンスを行う舞台装置を彫刻と見なすことに着想を得た初のインスタレーションStage Setsを制作(1976年)

- 自身のパフォーマンスを基にしたインスタレーションの制作に興味を持ち始める(1994年)

1990年代後半には、彫刻とビデオの要素を組み合わせた作品“My New Theater”シリーズを発表するとともに、大がかりなパフォーマンスとインスタレーションも制作しました。90年代後半以降は、パフォーマンス用に映像による背景幕のようなものを制作してきました。それそのものは編集された作品で、それを背景に私がパフォーマンスを行います。本講演では、一つの映像を別の映像と並置することで、語りと視覚効果を階層化・複雑化させるという私の作品のコンセプトについても触れたいと思います。上に挙げた初期の作品は、後のより複雑な作品のひな形になっていると言えるでしょう。

さらに、作品の中を歩きながら隣接スペースにある別の作品を見ることができるという、大規模なインスタレーションについてもお話しします。

ワークショップ

ワークショップ

パフォーマンスとメディア・アートのラディカリズム―ジョーン・ジョナスとその変遷あるいは継承―

Radicalism of Performance and Media Art—Joan Jonas and the Succession—

日時
2018年11月14日(水)19:00~(開場:18:30)
場所
ロームシアター京都 ノースホール
企画
橋本 裕介[ロームシアター京都 プログラムディレクター] 藤田 瑞穂[京都市立芸術大学ギャラリー @KCUA 学芸員]
主催
公益財団法人 稲盛財団
企画・制作
ロームシアター京都
後援
京都府 京都市 NHK

プログラム

19:00
受賞者基調講演 ジョーン・ジョナス
19:15
受賞者ビデオ作品上映
19:45
関西の若手アーティストによるパフォーマンス 笹岡 由梨子[美術家]
金氏 徹平[彫刻家]
contact Gonzo[パフォーマンス集団]
20:10
休憩
20:30
受賞者と関西の若手アーティストとの対話 ジョーン・ジョナス
笹岡 由梨子
金氏 徹平
contact Gonzo
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