2013年先端技術部門エレクトロニクス
ロバート・ヒース・デナード 写真

ロバート・ヒース・デナード
(Robert Heath Dennard)

  • アメリカ / 1932年9月5日
  • 電子工学者
  • IBMトーマス・J・ワトソン研究所 IBMフェロー

半導体ダイナミックメモリの発明と電界効果トランジスタ微細化指針の提唱

メモリ用集積回路として広く使われている「半導体ダイナミックメモリ(DRAM:Dynamic Random Access Memory)」の基本構造を発明し、デジタル情報の記憶容量や処理能力を格段に高め、情報・通信技術の飛躍的発展を可能とした。また、集積回路に不可欠なMOS型電界効果トランジスタを微細化するための設計指針を、同僚の協力を得て提案し、DRAMを含む集積回路全般の驚異的進展にも貢献した。

プロフィール

略歴

1932年
米国テキサス州生まれ
1958年
カーネギー工科大学(現カーネギーメロン大学) 博士号(電気工学)
1958年
IBM スタッフエンジニア
1963年
IBMトーマス・J・ワトソン研究所 研究員
1973年
IBMトーマス・J・ワトソン研究所 グループマネージャー
1982年
IBMトーマス・J・ワトソン研究所 シリコンテクノロジー部門 MOSデバイスおよび回路研究マネージャー
1979年
IBMトーマス・J・ワトソン研究所 シリコンテクノロジー部門 IBMフェロー

主な受賞と栄誉

1988年
米国国家技術賞
1997年
米国発明家殿堂入り
2006年
C&C賞、NEC C&C財団
2007年
ベンジャミン・フランクリン・メダル、フランクリン協会
2009年
チャールズ・スターク・ドレイパー賞、米国工学アカデミー
2009年
IEEE栄誉賞、IEEE(米国電気電子学会)
会員
米国工学アカデミー、IEEE、米国哲学会

主な論文

1968年

Field-Effect Transistor Memory, U.S. Patent 3,387,286, June 4, 1968.

1974年

Design of Ion-Implanted MOSFETs with Very Small Physical Dimensions (with Gaensslen, F. H. et al.), IEEE Journal of Solid-State Circuits SC9: 256-268, 1974.

1975年

Fabrication of a Miniature 8K-Bit Memory Chip Using Electron-Beam Exposure (Yu, H. N., Dennard, R. H. et al.), Journal of Vacuum Science and Technology 12: 1297-1300, 1975.

1984年

Evolution of the MOSFET Dynamic RAM – A Personal View, IEEE Transactions on Electron Devices 31: 1549-1555, 1984.

1997年

Scaling Challenges for DRAM and Microprocessors in the 21st Century, in Electrochemical Society Proceedings 97-3: 519-532, 1997.

贈賞理由

半導体ダイナミックメモリの発明と電界効果トランジスタ微細化指針の提唱

ロバート・ヒース・デナード博士は、メモリ用集積回路として広く使われている「半導体ダイナミックメモリ」(DRAM:Dynamic Random Access Memory)の基本構造を発明し、デジタル情報の記憶容量や処理能力を格段に高め、情報・通信技術の飛躍的発展を可能とした。また、集積回路に不可欠なMOS型電界効果トランジスタを微細化するための設計指針を、同僚の協力を得て提案し、DRAMを含む集積回路全般の驚異的な進展にも貢献した。

デナード博士は、コンピュータ用のメモリ集積回路の研究に早くから取り組み、1967年、ひとつの基本構造を発明した。このメモリは、記憶の基本単位(セル)が、一個のMOS型電界効果トランジスタ(以下、トランジスタと略す)と一個のコンデンサから成り、コンデンサに蓄積される電荷の有無で、“1”と“0”を記憶している。このメモリでは、多数の記憶セルを碁盤目状に置き、そこに縦と横方向に配線を設け、横の配線(ワード線)と縦の配線(ビット線)の選択により、任意セルに接続できるため、ランダムアクセスメモリ(RAM)と呼ばれている。

各セルのコンデンサに対し、トランジスタを経由して、ビット線から電荷を流入させるか否かで、“1”か“0”を書き込むが、蓄積された電荷は徐々に抜けるため、定期的に充電する必要がある。このため、ダイナミックRAM(DRAM)と呼ばれるようになった。“1”か“0”かの読み出しは、蓄積電荷の有無に伴うビット線の電位の僅かな違いを、感度よく検出して行う。

1970年、各セルに3個のトランジスタを用いた1kビットDRAMが初めて製品化されたが、デナ―ド博士の発明した1トランジスタ構造を持つDRAMは、1973年に製品化され、それ以降は全てのDRAMに1トランジスタ構造が使われている。

デナード博士は、さらに、電界効果トランジスタを微細化した時の電気特性の変化を同僚とともに検討し、微細化に有用な設計指針(スケーリング則)を提案した。これにより、集積回路内の素子の微細化が進み、DRAMの容量が当初の百万倍以上に高まるとともに、マイクロプロセッサの高速化や高性能化なども可能となった。

デナード博士のこれらの業績は、集積回路技術に驚異的発展をもたらし、情報・通信機器の飛躍的な進歩に不可欠な貢献をなした。

以上の理由によって、ロバート・ヒース・デナード博士に先端技術部門における第29回(2013)京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

創造への途(みち)-私の開発者人生-

私は、世界大恐慌最中の1932年にテキサス州で生まれました。貧しく電気もない農家に育ち、最初に通った学校も教室が1つだけでした。そんなところから始まって私が電気工学の分野でそれなりの成功を収めたことに驚かれるかもしれません。講演では、この間に私の性格や考え方を鍛えてくれたことや成功の要因にもなった教育に関することなど、人生での重要なステップを振り返ってみたいと思います。

私は、コンピュータ分野が急速に成長している時代に、そして何よりマイクロエレクトロニクスの黎明期にIBM研究所に就職できたことは非常に幸運だったと思います。DRAMを発明するきっかけになったこと、構想に描いたシンプルな構造を実現するまで開発意欲を持ち続けることができた理由をお話しします。

マイクロエレクトロニクスのスケーリング則への貢献も、コンピュータ・メモリのコストを大幅に削減する、そのためにはDRAMを大幅に小型化しなければならないという意欲的な目標を掲げた新しいプロジェクトの初期の段階で実現しました。私は、数人いた共同研究者の先頭に立って、DRAMやその他のマイクロエレクトロニクス回路で使われているトランジスタのサイズを大幅に縮小しても動作が保証されるにはどうすればよいかを研究しました。そして、トランジスタが正常に機能し、ずっと少ないエネルギー消費で、より高速に動作させることができるスケーリング則を考案しました。併せて、非常に小型化したDRAMを試作し、実際に適用できることを示しました。日本、そして世界中で超大規模集積回路(VLSI)の開発計画へと繋がったこの仕事のインパクトについても触れてみます。

私がうまくいった理由や他の発明家の人たちと話した結果を振り返ってみると、工学分野で創造的な人々には共通した特徴があることに気付きます。私の結論とスローガンは「考え方(取り組む姿勢)がすべて」です。講演の中で、その意味するところを説明し、私が研究開発を推し進める力となる考え方をどのようにして身につけたかをお話します。

講演の最後では、クリーンエネルギーの供給、環境保全、そして今世紀やそれ以降の地球温暖化の極小化や制御など、長期的かつ世界的な将来の問題を議論したいと思います。私たちの世代が開発したコンピュータや通信の技術が役立つことを願っていますが、この問題の複雑さや難しさは、その解決のためにあらゆる学問分野の人たちの参画を必要としていることも実感しています。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

集積回路の発展50年とその未来

Integrated Circuits: 50 Years of Their Evolution and Future Prospects

日時
2013年11月12日(火)10:00~17:00
場所
国立京都国際会館
企画
平本 俊郎 [東京大学 教授] 谷口 研二 [(審査委員会 委員)奈良工業高等専門学校 校長] 桜井 貴康 [東京大学 教授] 榊 裕之 [(審査委員会 委員長)豊田工業大学 学長]
主催
公益財団法人 稲盛財団
後援
京都府、京都市、NHK
協賛
IEEE SSCS Japan Chapter、IEEE EDS Japan Chapter、応用物理学会、電気学会、電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ、日本学術振興会 第165委員会

プログラム

10:00
開会挨拶受賞者紹介 榊 裕之
セッションⅠ 司会 谷口 研二
受賞者講演 ロバート・ヒース・デナード博士 [先端技術部門 受賞者]
「LSI技術の発展の経緯と挑戦: DRAM、スケーリング則から、超低電力CMOSまで」
休 憩
講演 -各種先端メモリ技術講演-
・三宅 秀治[エルピーダメモリ(株)(マイクロン グループ)DRAM Business Unitプリンシパルプロフェッショナル]
「先端DRAM Technology」
・遠藤 哲郎 [東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターセンター長]
「STT-MRAM技術と究極のパワーマネジメントのための不揮発性ロジック応用」
・高浦 則克[ 超低電圧デバイス技術研究組合相変化デバイス研究グループグループリーダー]
「新規抵抗変化型メモリ」
講演 竹内 健 [中央大学 教授]
「半導体メモリが切り拓くビッグデータのアプリケーション」
休 憩
セッションⅡ 司会 平本 俊郎
講演 井上 弘士 [九州大学 准教授]
「グリーンコンピューティングを支えるコンピュータアーキテクチャ技術」
講演 小柳 光正 [東北大学 教授]
「三次元集積化による超低消費電力化」
講演 木村 紳一郎 [超低電圧デバイス技術研究組合 副プロジェクトリーダー]
「超低消費電力FDSOIデバイス」
講演 高木 信一 [東京大学 教授]
「低消費電力CMOSのための高移動度チャネルトランジスタ技術」
休 憩
パネル討論 「集積回路の未来」
司会 内田 建 [慶應義塾大学 教授]
パネリスト 浅井 哲也 [北海道大学 准教授]
竹内 健
田中 徹 [東北大学 教授]
若林 整 [東京工業大学 教授] 
17:00
閉会
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