1992年先端技術部門情報科学
モーリス・ヴィンセント・ウィルクス  写真

モーリス・ヴィンセント・ウィルクス
(Maurice Vincent Wilkes)

  • イギリス / 1913年-2010年
  • コンピュータ技術者
  • ケンブリッジ大学 名誉教授

世界初のプログラム記憶式コンピュータの開発と計算機アーキテクチャーの先駆的研究

現在のコンピュータの原型で、世界最初に稼働したプログラム記憶式計算機EDSACの開発責任者を務めるとともに、高機能コンピュータ実現のための独創的な方式や機構を数多く考案し、その研究開発と実用化に多大な貢献をした。

プロフィール

略歴

1913年
イギリスに生まれる
1934年
ケンブリッジのセント・ジョンズ・カレッジ卒業(数学専攻)
1937年
ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所(物理学Ph. D.)
1945
ケンブリッジ大学計算機研究所所長
1980年
ケンブリッジ大学名誉教授
1980
デジタル・イクィップメント社(マサチューセッツ)技術顧問
1989年
オリベッティ社研究戦略顧問

主な受賞と栄誉

1956年
イギリス王立協会会員
1967年
チューリング賞(ACM)
1969年
日本情報処理学会名誉会員
1980年
エッカート・モークリー賞(ACM/IEEE)
1981年
マクドウェル賞(IEEE)
1981年
ファラデー・メダル(IEEE)

主な論文・著書

1949年

The EDSAC, an Electronic Calculating Machine. J.Sci. Instr.26 (with Renwick, W.)

1951年

The Best Way to Design an Automatic Computing Machine. Report of Manchester University Computer Inaugural Conference

1951年

Preparation of Programs for an Electronic Digital Computer. Addison-Wesley Press. (with Wheeler, D.J. et al.) an Electronic Calculating Machine. J.Sci. Instr.26 (with Renwick, W.)

1956年

Automatic Digital Computers. Methuen

1968年

Time-Sharing Computer System. Macdonald

1984年

Memoirs of a Computer Pioneer. MIT Press

贈賞理由

世界初のプログラム記憶式コンピュータの開発と計算機アーキテクチャーの先駆的研究

モーリス・ヴィンセント・ウィルクス博士は現在のコンピューターの原型である「プログラム記憶式コンピューター」を世界で最初に開発するとともに、今日のコンピューターに採用されている主要な演算制御方式を数多く考案し、コンピューターの開発と実用化に多大の貢献をした偉大なコンピューター技術者である。

ウィルクス博士は、ジョン・フォン・ノイマン博士のグループの提案に着目し、その実現に必要な超音波遅延線記憶装置や、プログラム記憶方式制御機構などを考案し、1949年世界に先駆けて実用レベルのプログラム記憶式コンピューターEDSACを開発した。このコンピューターの技術は、1951年LEO(Lyons Electronic Office)と呼ばれる最初の商用コンピューターの開発に活かされるとともに、プログラミング手法の基礎、サブルーチンの概念、プログラム・ローディング法、数値計算法など数々の特筆すべき研究業績を生み、プログラム記憶式コンピューターが備える画期的な威力を実証した。

また博士は、高度な機能を持つコンピューターを実現するために必須な方式や機構(アーキテクチャー)についても、多くの独創的な研究を行ってきた。それらは、マイクロプログラミング方式やマルチプログラミング処理方式、オペレーティングシステムの原型、時分割システム、構内ネットワーク(LAN)、記憶保護方式などに関する有用な考案で、特に、マイクロプログラミング方式の提案は、大規模集積化(VLSI)高性能コンピューターの実現に不可欠なものであると同時に、コンピューターに問題適応能力を与える有用な手法を提供し、新しいコンピューター・パラダイムの出現に寄与する技術として、極めて高く評価されている。これらの数多くの研究成果は七冊の著書ならびに130編以上の論文としても世に示されている。

以上のような輝かしい業績により、モーリス・ヴィンセント・ウィルクス博士は第8回京都賞先端技術部門の受賞者に最もふさわしい。

記念講演

記念講演要旨

コンピュータエンジニアへの道

私は1934年に学士号を取得した。その後、キャベンディッシュ研究所に研究生として入り、電離層における電波の伝搬に関する研究を行った。1937年、ケンブリッジ大学は卓上計算機と最新のアナログ・コンピュータを設置する目的で、コンピュータ研究所の設立を決定し、私はこの設立に携わったが、開設を前にして第二次世界大戦が勃発、出征した。帰還後の1945年、私は同研究所の所長に就任した。1946年晩夏、フィラデルフィアに赴いた私は、プレスパー・エッカート博士とジョン・モークリー博士の下で、プログラム記憶式デジタル・コンピュータという新テーマに関して、当時学べることは全て学んだ。当時はまだ、プログラム記憶式コンピュータは開発されていなかった。

ケンブリッジに戻った私は、EDSACとして知られるコンピュータ開発のためのプロジェクトを発足した。講演では、この種のコンピュータがまだ開発されていない時代に、プログラム記憶式コンピュータを開発するという任務を前にしたベテランの電子技術者の様子についても語ってみたい。

1949年、EDSACは作動し、研究チームはプログラミング方法の開発や、可能な限り多岐にわたる科学的分野を対象にしたコンピュータ・アプリケーションの開発に重点を移し、1951年、私はD・J・ウィラー氏、S・キル氏と共著で、コンピュータのプログラミングに関する最初の本を出版した。

講演では、マイクロプログラミングの起源についても少し触れている他、ケンブリッジのコンピュータ研究所におけるその後の研究開発についても述べる。

研究の道に踏み出したばかりの若い人達に対して、短いアドバイスを求められたが、人間の一生の間に世界は大きく変わるため、アドバイスとして言えることはあまりない。若い人にとっては、先輩の言わんとしていることに注意深く耳を傾けることも大切であるが、その意見が今日の状況にそぐわないということがよく解るかも知れない。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

「発展するコンピューター技術」

Evolution in Computer Technology

日時
1992年11月12日(木)13:00-17:30
場所
国立京都国際会館

プログラム

企画: 相磯 秀夫 先端技術部門専門委員会委員、慶應義塾大学環境情報学部学部長
13:00
挨拶 稲盛 和夫 稲盛財団理事長
挨拶 嵩 忠雄 先端技術部門専門委員会委員長、 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科長
業績紹介/ 講演者紹介 相磯 秀夫
13:30
講演 モーリス・ヴィンセント・ウィルクス 先端技術部門受賞者
「コンピューター産業の発達と研究」
14:15
講演 渕 一博 先端技術部門専門委員会委員、新世代コンピューター技術開発機構研究所長
「考えるコンピューター?-『並列推論』のパラダイム-」
15:00
休憩
15:15
講演 島田 潤一 新情報処理開発機構研究所長
「融通のきくコンピューター-Real World Computing-」
16:00
講演 神沼 二真 国立衛生試験所化学物質情報部長
「進化するコンピューター:生物から見たコンピューター」
16:45
パネル討論
17:30
閉会
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