2012年先端技術部門情報科学
アイバン・エドワード・サザランド 写真

アイバン・エドワード・サザランド
(Ivan Edward Sutherland)

  • アメリカ / 1938年5月16日
  • コンピュータ科学者
  • ポートランド州立大学 客員研究員

コンピュータグラフィックスと対話的インタフェースにおける先駆的業績

情報提示のためのコンピュータグラフィックス技術と、それを用いて、プログラミングすることなくコンピュータを使うことのできる対話的インタフェースの発展に先駆的かつ根幹的な貢献を行った。

プロフィール

略歴

1938年
米国ネブラスカ州ヘースティングス生まれ
1963年
マサチューセッツ工科大学 博士号(電気工学)
1964年
米国国防総省高等研究計画局 情報処理技術研究部門 部長
1965年
ハーバード大学 准教授
1968年
エバンス・アンド・サザランド計算機社 共同創立者・副社長
1968年
ユタ大学 教授
1974年
カリフォルニア工科大学 教授
1975年
ランド・コーポレーション 上級技術スタッフ
1980年
サザランド・スプロール・アンド・アソシエイツ社 共同創立者・副社長
1991年
サン・マイクロシステムズ 副社長・フェロー
2009年
ポートランド州立大学 客員研究員

主な受賞と栄誉

1983年
スティーブン・A・クーンズ賞、ACM(米国計算機学会)SIGGRAPH
1986年
エマニエル・R・ピオレ賞、IEEE(米国電気電子学会)
1988年
チューリング賞、ACM
1998年
ジョン・フォン・ノイマン・メダル、IEEE
会員:
米国科学振興協会、ACM、IEEE、米国工学アカデミー、米国科学アカデミー

主な論文・著書

1963年
Sketchpad: a Man-Machine Graphical Communication System, in Proceedings of the AFIPS Spring Joint Computer Conference 23: 329-346, 1963
1965年
The Ultimate Display, in Proceedings of IFIPS Congress 2: 506-508, 1965

 

1968年
A Head-Mounted Three-Dimensional Display, in Proceedings of AFIPS Conference 33: 757-764, 1968
1974年
A Characterization of Ten Hidden-Surface Algorithms (with Sproull, R. F. and Schumacker, R. A.), ACM Computing Surveys 6: 1-55, 1974
1999年
Logical Effort (with Sproull, R. F. and Harris, D.), Morgan Kauffman, 1999
贈賞理由

コンピュータグラフィックスと対話的インタフェースにおける先駆的業績

アイバン・エドワード・サザランド博士は、情報提示のためのコンピュータグラフィックス技術と、それを用いて、プログラミングすることなくコンピュータを使うことのできる対話的インタフェースの発展に先駆的かつ根幹的な貢献を行った。

コンピュータグラフィックスは、映画やゲームなどの娯楽、教育教材、科学技術シミュレーション、産業界での設計支援などに幅広く使われている。今日のコンピュータグラフィックスの発展は、1963年にサザランド博士が開発した「スケッチパッド」が起点となっている。このシステムは画面上の図形を指示デバイスで直接的に操作するもので、その対話的インタフェースは時代を遥かに超えた先進的なものであった。スケッチパッドは、描画対象を、構成部品とその相互関係で表すことによって、粗いスケッチから正確な図面を自動的に生成することができた。これは現在のCAD(コンピュータ支援設計)システムの源流をなすものである。

サザランド博士は、また、大きさの限られた画面上に、描画対象のどの線分や面を表示すべきかを決定する方法など、コンピュータグラフィックスの基本アルゴリズムを数多く考案している。さらに、最初のヘッドマウント3次元ディスプレイシステムである「ダモクレスの剣 (The Sword of Damocles) 」の開発を行い、バーチャルリアリティの世界を切り拓いた。

サザランド博士は、大学での研究活動にとどまらず、企業での製品開発にも積極的に取り組んだ。1968年にユタ大学の同僚と共に、エバンス・アンド・サザランド計算機社を設立し、コンピュータグラフィックスワークステーションESVシリーズなどを開発した。サザランド博士の研究グループは、シリコングラフィックス社、ピクサー・アニメーション・スタジオやアドビ システムズ社の創立者をはじめ、多くの優れた人材を輩出している。

これらの業績からコンピュータグラフィックスの父とも呼ばれるサザランド博士は、コンピュータの対話的利用を可能とする世界の創出に多大な貢献をした。

以上の理由によって、アイバン・エドワード・サザランド博士に先端技術部門における第28回(2012)京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

ものの見え方

人の視覚的記憶は強いものです。私たちは、人々のこと、できごと、ものごとを記憶していて、時が経ってもそれらが「見える」のです。写真はその視覚的記憶を呼び覚ます助けになります。好きなものの写真は、写真に写っている以上のものを思い出させてくれます。

人々は視覚的記憶を共有します。画家は絵画で視覚的記憶を表現します。詩人は注意深く選択した言葉で視覚的記憶を表現します。文学作品は「言葉の絵」で視覚的記憶を記録しています。

視覚的記憶は想像上のことがらであるともいえます。写真と違って、絵画は、画家の心の中にあるものを見せることができます。作家は事実かのように物語を書きます。詩人は、注意深く選択した言葉で人の感情を表現します。画家、作曲家、作家、アニメ製作者などが実際に存在しないものを見せてくれる創造性は素晴らしいものですが、どこかに残っていた記憶かもしれません。

画像は科学の進歩を助けます。顕微鏡は微生物の世界を見せてくれました。望遠鏡のおかげでガリレオは木星の衛星を発見しました。新しい画像は、私たちの住む世界の理解の仕方を完全に変えてしまいます。

人の心から表現された画像もまた、新たな理解をもたらします。画家が存在しないものを絵画で表現するように、数学者、技術者、科学者も想像物の絵を作ります。これらの絵は私たちを未来へ導きます。数学的曲線は、その特性を明らかにします。タンパク質の形状はその機能を明らかにします。橋梁の図面はどのように見えるかを示すだけでなく、どのように建設するかも教えてくれます。

コンピュータグラフィックスは創造のための道具にすぎません。創造性は人の心の中に存在します。これまで存在しなかったもののイメージ、そのようなものであろうというイメージ、あるいは私たちの住む世界を理解する助けとなる考えのイメージ、これらを与えてくれる人間の創造性を大事にしようではありませんか。その手段としてのコンピュータグラフィックス、紙に描いたスケッチ、方程式、または文章といった形式は重要ではありません。その意味するところが、その表現から人の理解の中に飛び込んでくるのであれば、その形式が最善なのです。理解されるということがその価値なのです。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

コンピュータグラフィックスとバーチャルリアリティ~その原点から、未来展開を考える~

Extrapolating the Future from the Origins of Computer Graphics and Virtual Reality Technologies

日時
2012年11月12日(月)13:00~17:30
場所
国立京都国際会館
企画・司会
田村 秀行 [立命館大学]
主催
公益財団法人 稲盛財団
後援
京都府、京都市、NHK
協賛
映像情報メディア学会、画像情報教育振興協会(CG-ARTS協会)、芸術科学会、情報処理学会、電子情報通信学会、日本バーチャルリアリティ学会

プログラム

13:00
開会挨拶 田村 秀行
受賞者紹介 山口 富士夫 [早稲田大学 名誉教授]
受賞者講演 アイバン・エドワード・サザランド
“Computer Graphics: Let Us Distinguish the Medium from the Message”
講演 五十嵐 健夫 [東京大学]
「デザインツールとしての対話型コンピュータグラフィクス」
講演 ナシア・ナヴァブ [ミュンヘン工科大学]
“Medical Augmented Reality: From Early Concepts to First Deployments in Operating Rooms”
パネル討論 司会パネリスト 「サザランド博士が創った現在、これから共に拓く未来」
廣瀬 通孝 [東京大学]
稲見 昌彦 [慶應義塾大学]
河口 洋一郎 [東京大学]
清川 清 [大阪大学]
瀬尾 拡史 [サイアメント/東大病院]
17:30
閉会
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