1989年先端技術部門エレクトロニクス
エイモス・エドワード・ジョエル Jr. 写真

エイモス・エドワード・ジョエル Jr.
(Amos Edward Joel, Jr.)

  • アメリカ / 1918年-2008年
  • 情報通信技術者
  • ベル研究所 特別顧問

蓄積プログラム制御を基本概念とする電子交換機技術への先駆的貢献

電気通信ネットワークの要である交換機の分野において、「蓄積プログラム制御」の基本概念を提唱し、交換の技術とコンピュータの技術を結びつけることによって、交換機の持つ機能をニーズに応じて自由に追加・変更できる道を拓き、近年の高度電気通信ネットワークの普及と発展に長期間にわたってリーダーシップを発揮した電子交換機のパイオニアである。
[受賞当時の対象分野: エレクトロニクス、電気通信技術、レーザー、制御工学]

プロフィール

略歴

1918年
ペンシルベニア州フィラデルフィアに生まれる
1940年
マサチューセッツ工科大学 卒業
ベル研究所 入社
1942年
マサチューセッツ工科大学 博士課程修了
1961年
共通システム交換研究部長
1967年
交換コンサルタント
1983年
ベル研究所 退社

主な受賞と栄誉

1976年
電気電子技術者協会(IEEE)アレキサンダ・グラハム・ベル・メダル
1981年
フランクリン・インスティチュート-スチュアート・バランティン・メダル
1983年
国際電気通信連合(ITU)センテナリー賞
1984年
コロンブス・メダル(イタリア ジェノバ市)
1987年
電子交換国際会議(ISS)"ISSの父"顕彰

主な論文・著書

1956年

『電話交換システムにおけるエレクトロニクス』 ベルシステム・テクニカル・ジャーナル誌

1975年

『スイッチング』 ベル研究所記録

1976年

『世界の電子交換システム』(編集)IEEE

1982年

『世界のデジタル交換システム』(編集)IEEE

贈賞理由

蓄積プログラム制御を基本概念とする電子交換機技術への先駆的貢献

エイモス・エドワード・ジョエル氏は電気通信ネットワークの電子交換分野におけるパイオニアであり、電子交換技術を発想し、育て、さらに世界に普及させる上で長期間にわたってリーダーシップを発揮した。なかでも特筆すべきことは、「蓄積プログラム制御」の基本概念の提唱とその実証であり、これにより交換機の持つ機能を、ニーズに応じて自由に追加・変更できる道を開いた。これらの卓抜した概念なしには、今後さらに高度化・多様化する社会に対して通信網の機能を適合させていくことは不可能と言っても過言ではない。

電気通信ネットワークは人類がつくり出した最大規模のシステムであり、経済社会生活、関連産業などへの影響が極めて大である。現在、世界中の電気通信ネットワークは、電話ネットワークを基に将来の高度情報社会のインフラストラクチャーとしてISDN(サービス総合デジタル網)に変貌しようとしている。

同氏の電子交換について最初の論文は、1956年9月号のベルシステム・テクニカル・ジャーナル誌にさかのぼるが、すでに現在の交換機にみられる基本概念が示されている。これはコンピューター技術自身がまだ特殊な科学技術計算の用途に限られていた極めて早い時期である。蓄積プログラム制御を中心とする交換技術は、1965年に至って、米国における公衆通信網用の電子交換機として実用化された。

こうしたベル研究所における電子交換機の開発が世界に与えた影響は極めて大きいものであった。これ以後各国で大規模な研究が行われるようになり、各国においてデジタル交換機、サービス総合デジタル網などの通信網機能を高度化する一連の研究が継続して行われるようになった。

これらは、ひとえにエイモス・ジョエル氏の高い見識、深い学術上の知識のみならず、その温厚にして誠実な人柄と果敢な実行力によるものであり、1987年には「ISS電子交換国際会議の父」として表彰を受け、「Mr.Switching」として親しまれている。

なお、同氏は、第二次世界大戦中にはデジタル秘話通信システムや、世界最初の汎用デジタル・コンピュータの発明を行い、その広い学問の分野と成果をうかがわせるが、第5回京都賞選考にあたって、特に卓抜にして、社会的影響の大きい電子交換システムに対してまさしくその意義にふさわしい業績として推挙したものである。

記念講演

記念講演要旨

大型システム環境における創造性と技術革新-個人的評価-

大型システムを含む分野における創造性は、私が生まれてから今日に至る間にも相当な変化を遂げてきました。私が最も創意的になり、数々の考案を重ねてきた分野は、“交換技術”と呼ばれるものであります。

私が最初に交換技術に興味を抱くようになった当時、この分野の先駆者達は、それぞれが大きく貢献していたにも関わらず、ほとんど認められていませんでした。私の大きな願いは、各々の先駆者の貢献が認められるようになることだけでなく、この分野全体を曖昧な技術から、ある程度専門的なものへと引き上げようというものでした。今日、交換技術の原理は、一般的に理解され、認められるようになり、そして、受け入れられるようになりました。この分野への多くの貢献者が認められ、また彼らの新しい原理への探求によって、この分野意欲的に拡大されてきました。

この講演では、電気通信技術の分野における個人的な経験のいくつかをご紹介したいと思います。開発に10億ドル以上もの経費を費やすシステムにより、創造性のための環境が変化を遂げてきました。従って私は大型で複雑化したシステムを含む分野において、更に知識を得て、より創造的になりたいと考えている人々のために、自分自身の経験からこうした願いに利益をもたらすような行動パターンを引き出してまいりました。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

電気通信技術の変革と社会への影響

Telecommunication Technology Innovation and its Influence on Society

日時
1989年11月12日
場所
国立京都国際会館
司会
葉原 耕平 先端技術部門専門委員会委員、国際電気通信基礎技術研究所副社長

プログラム

13:10
開会の辞 葉原 耕平
挨拶 稲盛 和夫 稲盛財団理事長
挨拶 櫻井 良文 先端技術部門専門委員会委員長、摂南大学副学長
業績紹介 葉原 耕平
13:30
講演 エイモス・エドワード・ジョエルJr. 先端技術部門受賞者
「電気通信交換技術発展の沿革」
14:15
講演 廣田 憲一郎 未来工学研究所特別参与
「電気通信社会への影響」
14:45
講演 寺田 浩詔 大阪大学工学部教授
「マルチメディア時代における電気通信」
15:15
休憩
15:30
講演 池田 博昌 NTT交換システム研究所所長
「電気通信技術の将来動向」
16:00
講演 斎藤 忠夫 先端技術部門専門委員会委員、東京大学工学部教授
「情報化社会における電気通信の将来展望」
16:30
パネル討論
17:15
閉会
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