Issey Miyake
第22回(2006)受賞
美術(絵画・彫刻・工芸・建築・写真・デザイン等)
/ デザイナー
1938 - 2022
平面である布と立体である身体との関係を独自の眼で捉え直し、「一枚の布」という、東洋文化に根ざした画期的な衣服の概念と最先端の技術の応用により、時、国籍、階級を超えて人々の生活の中に生きる衣服を創造し続けている。
[受賞当時の対象分野: 美術(絵画・彫刻・工芸・建築・デザイン)]
三宅一生氏は、平面である布と立体である身体との関係を独自の眼で捉え直し、「一枚の布」という、東洋文化に根ざした画期的な衣服の概念と最先端の技術の応用により、時、国籍、階級を超えて人々の生活の中に生きる衣服を創造し続けているデザイナーである。
1970年代、三宅氏は和服や折り紙など日本の服飾・工芸文化の持つ、折り畳むことのできる造形を研究し、その成果を衣服のデザインに応用していった。1993年にスタートした「プリーツプリーズ」ではプリーツ(しわ、襞)の生む立体的な性質を応用し、フォルムを保ちつつも、体を縛らず、平たく折り畳める服を開発した。1998年以来の「A-POC」では最先端の製織技術を駆使して、服のデザイン、造形そのものを布に折り込み、筒状に織られた布がそれ自体で服として完成しているという、画期的なコンセプトを提示した。これらの製法の開発により、三宅氏は衣服デザインの一つの理想形を示しながら、同時にそれらが量産可能であることを証明し、衣服生産に大きな革新をもたらした。また三宅氏はこれらの試みの中で、洋の東西、時代、国籍、社会的な層に縛られない衣服デザインを創造し、新しい時代の衣服文化のあり方を示した。
三宅氏が他の芸術分野に対して与えた影響も大きい。ベジャール、フォーサイスそれぞれの率いるバレエの舞台に参画し、大きな成果を残す他、美術的観点からも三宅氏のデザインは、1998~2000年にパリ・カルティエ財団、NY・ACEギャラリー、東京都現代美術館で開催された個展「Making Things」、1990年アムステルダム市立美術館の「Energies」、2005年パリ・ポンピドゥーセンターの「Big Bang」展などで広く世界に紹介され、20世紀後半を特徴付ける芸術として高く評価されている。
20世紀に芸術の領域が広がりを見せ、ジャンルを超えた芸術が生まれる過程で、衣服デザインは三宅氏の業績によって、紛れもなく芸術の一分野であると認識されるに至った。三宅氏は人が着る衣服の意味とあり方を追求し、古代の伝統と最先端技術、西洋と東洋の造形を衣服の中に融合した。さらに三宅氏はその多面的な活動によって、他の芸術分野にも多大な影響を与えたのみならず、服飾デザインが現代の芸術において優れた表現力を持つメディアであると証明すると同時に、服飾生産という行為自体を哲学的な行為に昇華せしめた。
以上の理由によって、三宅一生氏に思想・芸術部門における第22回(2006)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです