George McClelland Whitesides
第19回(2003)受賞
材料科学
/ 化学者
1939 -
ハーバード大学 教授
純粋化学から材料工学までを見通す広い視野に立ち、有機分子が無機物質の上で自己組織化して超薄膜を作る過程に着目し、両物質が接する界面で起きる現象を系統的に解明し、これを制御・活用する卓越した技術を開発した。特に、この技術がナノメートル級の機能材料の構築に活用できることを独創的な実例で示し、有機分子を活用したナノ材料の研究分野に新領域を拓き、材料科学の発展に大きく貢献した。
ホワイトサイズ教授は、純粋化学から材料工学までを見通す広い視野に立ち、有機分子が無機物質の上で自己組織化して超薄膜を作る過程に着目し、両物質が接する界面で起きる現象を系統的に解明し、これを制御・活用する卓越した技術を開発した。特に、この技術がナノメートル級の機能材料の構築に活用できることを独創的な実例で示し、有機分子を活用したナノ材料の研究分野に新領域を拓き、材料科学の発展に大きく貢献した。
自己組織化とは、特定の材料やデバイスを形成する上で必要とする分子や原子が、自ら集合・配列し、望ましい構造を自然に形成することを意味する。例えば生体では、細胞内のタンパク質や膜構造において自己組織化が大きな役割を果たしており、同様の現象をエレクトロニクスに応用する可能性が探索されている。
ホワイトサイズ教授は、硫黄の原子を末端にもつ炭化水素分子群(有機チオール)が、金や銀の基板の表面によく吸着して整列化する事実に着目し、この時得られる自己組織化単分子膜(Self‐Assembled Monolayer: SAM)の活用に関する技術を開発した。この単分子膜は、1nmほどであるが、きわめて安定で、無機材料の保護膜としてだけでなく、膜上に異種の有機分子や生体分子を配列・操作させることにも活用でき、有機ナノテクノロジーの分野できわめて重要な材料の一つになっている。教授は、このチオール系のSAMに留まらず、多様な物質の組み合わせを対象として、分子や原子の間の相互作用と分子集団の自己組織化過程を物理化学的な手法で詳しく評価し、有機分子と金属など異種物質で構成される機能材料の新たな可能性を明らかにした。
さらにホワイトサイズ教授は、極微のスタンプを用いて単分子膜(SAM)のパターンを作り、これを基板上に転写する「ミクロ接触印刷法」を考案しその有効性を示した。集積回路の製造に広く用いられるリソグラフィ法では、感光性の有機樹脂を半導体の上に塗って加工する。このため、他の有機材料への適用が困難であったが、本印刷法の登場で、複雑で微細な有機物質のパターンの形成も可能となった。この方法はソフトリソグラフィとも呼ばれ、タンパク質などの生体分子を特定のパターンに従って配置できるため、バイオ・デバイス分野でも活用されつつある。特に、生体分子の2次元的な配列の制御やパターン化を活用したセンサー・DNAチップ・タンパク分析チップなどにも応用できる可能性があり、広汎な成長が期待されている。
以上のように、ホワイトサイズ教授は、有機分子の自己組織化を軸に、単分子膜を用いた機能物質構造に関する卓越した技術を開発し、ナノ材料の合成や構築法に貴重な知見を与えるとともに、応用への新たな展望を拓くうえで多大な寄与をなした。
以上の理由によって、ジョージ・マクレランド・ホワイトサイズ教授に先端技術部門における第19回(2003)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです