音楽観の変革を促した知の巨人、タラスキン博士を偲ぶ

音楽学者のリチャード・タラスキン博士が7月1日、逝去されました。77歳でした。

タラスキン博士は、従来の歴史記述の方法を乗り越えた斬新な音楽史研究と、該博な知識に裏打ちされた先鋭的な批評によって、西洋の音楽文化に新たな次元を切り拓いてきました。他の追随を許さないその仕事は、音楽において言論が創造的価値を持つことを示し、音楽の世界に大きな足跡を残しました。

タラスキン博士は2017年、「音楽史研究と批評を通じて基本概念や作曲家像を決定的に更新し、音楽観の変革を促してきた知の巨人」として、第33回京都賞思想・芸術部門を受賞しました。

タラスキン博士が京都賞ウイークの際に語られた言葉をご紹介します。

「自らを鼓舞しようと、いつもチャイコフスキーの言葉を思い浮かべています。『私は朝9時に机に向かう。ミューズは定刻に舞い降りる』。私は一日も欠かさず机に向かい、書くことを自分に課しました。大きな仕事を成し遂げるには、規則正しく仕事をするしかないのです」──受賞者インタビュー動画より

心よりご冥福をお祈りいたします。

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