Bryan T. GrenfellPopulation Biologist基礎科学部門

研究イメージ

感染症流行のメカニズムを
数学でよみとくには?

病原体の進化と感染拡大を
統一的に分析する革新的方法論の開拓

ブライアン・T・グレンフェル/ 集団生物学者

進化を考慮してRNAウイルス感染症の消長を予測する方法論「ファイロダイナミクス」を提案し、免疫動態・疫学・進化学を統合した研究分野の開拓・発展に貢献した。これらの成果に基づき、さまざまな感染症の感染メカニズムの理解や効果的な感染予防方針の提案に大きな役割を果たした。

KEYWORDS

  • #数理モデル
  • #病原体の進化
  • #感染症流行パターンの予測

INTRODUCTION受賞者紹介動画

LECTURE記念講演動画

感染症の時間的・空間的ダイナミクスをよみとく─ 疫学・進化学の視点から ─

私はこれまでの研究人生を通じて、感染症の個体群動態や進化に取り組んできました。この講演では、感染症の流行と、そのダイナミクスが明確に現れている膨大な長期データセットを紹介することから始めます。免疫反応を引き起こす急性感染症の流行ダイナミクスの好例として、はしかを取り上げます。次に、私が取り組んできた主に三つの研究テーマについてお話しします。第一に、私は共同研究者と共に小児感染症、特にはしかについて、非線形の時間的変動を調べました。私たちは単純な数理モデルと感染データの時系列解析を用いました。これによって、変動したり時にはカオス的に振る舞ったりする流行の時間変化が説明できました。また、季節性や人口動態に関わる要因、そしてワクチン接種がそのパターンに与える影響も明らかになりました。第二に、地域的レベルでの流行の時空間ダイナミクスと、局所集団で流行が持続するかどうかを決める要因を分析しました。第三に、インフルエンザやSARS-CoV-2などの不完全な免疫しか得られない病原体の進化的ダイナミクスについて調べました。私は、その時に最も広く行き渡っている免疫を回避するようなウイルス変異株を作り出す疫学的特徴とウイルスの進化の相互作用を表すため、「ファイロダイナミクス」という言葉を作りました。それ以来、ファイロダイナミクスという考え方は、病原体の進化に関するさまざまな問題に適用されてきました。最後に、私のキャリアから得られた教訓、特に学際的な共同研究の力と楽しさについて述べてこの講演を終えたいと思います。

往々にして、生き物の世界は説明するにはあまりにも複雑すぎます。しかし、時にはシンプルなモデルをつかってそれを解きほぐすことができます。
ブライアン・T・グレンフェル

ブライアン・T・グレンフェル/ 集団生物学者

プロフィール

略歴
  • 1954年イギリス スウォンジー生まれ
  • 1981年ヨーク大学 博士
  • 1981–1986年インペリアル・カレッジ・ロンドン 純粋・応用生物学部 研究員
  • 1986–1990年シェフィールド大学 動植物科学部 講師
  • 1990–1998年ケンブリッジ大学 動物学部 講師
  • 1998–2002年ケンブリッジ大学 動物学部 準教授
  • 2002–2004年ケンブリッジ大学 動物学部 集団生物学教授
  • 2004–2009年ペンシルベニア州立大学 生物学特別教授
  • 2009年–プリンストン大学 生態・進化生物学部およびプリンストン公共政策・国際学部 キャスリン・ブリガー・アンド・サラ・フェントン生態・進化生物学および公共政策教授
  • 2014–2021年ウェルカム・トラスト 理事
主な受賞・栄誉
  • 1991年T・H・ハクスリーメダル、インペリアル・カレッジ・ロンドン
  • 1995年サイエンティフィック・メダル、ロンドン動物学会
  • 会員米国科学振興協会、米国芸術科学アカデミー、ロンドン王立協会

※ プロフィールは受賞時のものです

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