1991年先端技術部門材料科学
マイケル・シュワルツ 写真

マイケル・シュワルツ
(Michael Szwarc)

  • アメリカ / 1909年-2000年
  • 高分子化学者
  • 南カリフォルニア大学 教授

「リビング重合」の発見による高分子材料の基礎研究と開発への先駆的貢献

「リビング重合」の発見によって、高分子を先端技術に不可欠な機能材料として発展させる大きな道筋を拓くとともに、高分子化学者のみならず多くの研究者・技術者に、高分子材料の設計と合成のための画期的な方法を与え、材料科学における高分子材料の研究開発と発展に多大な貢献をした。

プロフィール

略歴

1909年
ポーランドに生まれる
1932年
ポーランド ワルシャワ工科大学卒業
1942年
イスラエル ヘブライ大学博士号取得(Ph. D. 有機化学)
1947年
イギリス マンチェスター大学上級博士号取得(D. Sc. 物理化学)
1953年
アメリカ ニューヨーク州立大学教授
同大学 高分子研究センター長
現在
アメリカ 南カリフォルニア大学炭化水素研究所 教授

主な受賞と栄誉

1966年
イギリス王立協会 会員
1969年
アメリカ化学会高分子部会ウィトコ賞
1972年
プラスチックスの化学と技術に関する国際賞
1988年
ポーランド科学アカデミー 会員
1990年
アメリカ化学会 高分子部会賞
1991年
日本高分子学会 名誉会員

主な論文・著書

1956年

『リビング重合の発見』Nature 178巻

1956年

『ブロックポリマーの合成』アメリカ化学会誌78巻(M. Levy他共著)

1959年

『末端に官能基を持つ高分子の合成』ファラデー協会誌55巻(D. H. Richards共著)

1968年

『炭素アニオン、リビングポリマー、および電子移動過程』Wiley(成書)

1972年

『有機反応におけるイオンとイオンペアー』Wiley(編著)

1988年

『リビングアニオン重合の最近の進歩』Advances in Polymer Science 86巻 ポリマー、および電子移動過程』Wiley(成書)

贈賞理由

「リビング重合」の発見による高分子材料の基礎研究と開発への先駆的貢献

シュワルツ博士は、高分子化学の分野において多方面にわたり、優れた研究を展開し、1956年、ナトリウム塩を開始剤とするスチレンのアニオン重合において、反応条件の制御により、重合終了後も末端が活性を持つことを見出し「リビング重合」を確立した。従来の重合法では、高分子の成長反応以外にも種々の副反応が起こるため、精密な合成が不可能で、先端材料としての利用の障害になっていたが、この発見は高分子を先端的機能材料として発展させる大きな道筋を開いたものである。

「リビング重合」では、分子量の揃った高分子の合成が可能であるため、新しい高分子材料の合成への寄与と波及効果は、計り知れないものがある。例えば、分子量測定の標準となる高分子試料の提供、また、半導体集積回路のICやLSI製造用のフォトレジストに必要な高分解能レジスト材料として活用され、現在も大きな注目を集めている。

シュワルツ博士はまた、活性を保った高分子、すなわち「リビングポリマー」の末端に、異なる種類のモノマーを結合させ、「ブロックポリマー」を製造する基礎技術を確立させた。「ブロックポリマー」は、従来のランダム重合法やブレンド法では合成が不可能な高分子材料だが、博士のこの技術により天然ゴムと異なる熱可塑性エラストマーなどの、種々の新しい機能性高分子材料の製造が可能になった。

さらに、「リビングポリマー」に官能基を持つ適当な化合物を反応させると、末端官能性高分子となり、特殊塗料や電気絶縁剤などに用いられている液状ゴムとして、多くの分野で利用されている。

以上のごとく、「リビング重合」の発見に始まるシュワルツ博士の研究業績は、高分子科学者だけでなく、他の多くの分野の研究者と技術者に、先端技術に要求される高分子材料の設計と合成のための画期的な方法を与えたものである。シュワルツ博士は、第7回京都賞先端技術部門の受賞者として、最もふさわしい。

記念講演

記念講演要旨

努力はいつか実を結ぶ

私が高分子化学の世界に入ったことと、リビング・ポリマーを発見したことは予期せぬ出来事の結果であった。確かに私はラッキーだった。ただ、重要なことがひとつある。それは、「一生懸命に頑張れば頑張るほど、多くの幸運を得ることができる」ということだった。これは、特に若い方々に覚えておいてもらいたいことである。

それから、もうひとつ重要なことは、「予期せぬ出来事は頻繁に起こる」ということである。予期せぬ出来事は、記録してその意味を理解することが重要だ。そこで、問題が生じる。予期せぬ出来事を調査すべきか、放っておくべきか、それとも、気に留めておくだけにして予定通りのそれまでの研究を続けるか、こうしたことを決めるのは、とても難しいことだ。予期せぬ出来事をすべて追いかけるのは、野生の雁を追いかけるのと同じで、無駄な努力に終わってしまう。時間と努力はもっと重要な問題に使うべきである。しかし、新たな通路を見つけたのにそれを放っておくのは、金鉱を見逃すことになるのかも知れない。決定を下すためのガイドとなるような規則もない。現象を理解し、知性と直感に頼るほかない。これは一般的な問題で、研究に限らず常日頃の生活でも生じる問題で、そこでなされる決定がきわめて重要なこともあるのだ。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

「先端材料開発のための高分子合成」

Macromolecular Engineering for Advanced Materials

日時
1991年11月12日(火)13:00-17:25
場所
国立京都国際会館

プログラム

司会 三枝武夫 先端技術部門専門委員会委員、京都大学名誉教授
13:00
開会
13:10
業績紹介 三枝 武夫
13:20
講演 マイケル・シュワルツ 先端技術部門受賞者
14:05
座長 松田 實 東北大学反応化学研究所教授
15:00
休憩
15:20
座長 松田 實
講演 高田 十志和 東京工業大学資源化学研究所教授
「有機合成を基礎とする機能性材料の分子設計」
16:00
座長 緒方 直哉 上智大学理工学部教授
講演 畑田 耕一 大阪大学基礎工学部教授
「メタクリル酸エステルのリビング重合を用いる立体規則性高分子構造の構築
16:40
座長 緒方 直哉
講演 三枝 武夫
「有機・無機ポリマーハイブリッド」
17:20
閉会挨拶 東村 敏延
17:25
閉会
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