1995年基礎科学部門地球科学・宇宙科学
 林 忠四郎  写真

林 忠四郎
(Chushiro Hayashi)

  • 日本 / 1920年-2010年
  • 宇宙物理学者
  • 京都大学 名誉教授

星の形成・進化と太陽系形成の理論的研究による宇宙科学への多大な貢献

原子核から流体力学に及ぶ基礎物理学の知識・手法を宇宙現象の解析に導入し、星の進化や、太陽系起源などの研究により、天体の諸現象を理論的に解明し、現代宇宙物理学の発展に多大な貢献をした。

プロフィール

略歴

1920年
京都市に生まれる
1940年
東京大学理学部卒業
1945年
京都大学理学部湯川教授の研究室に入る
1949年
京都大学理学博士号取得
1954年
京都大学理学部教授(物理学教室湯川研究室)
1984年
京都大学名誉教授

主な受賞と栄誉

1963年
仁科記念賞
1966年
朝日賞
1970年
エディントン・メダル賞(英王立天文学会)
1971年
恩腸賞(日本学士院)
1982年
文化功労者
1986年
文化勲章

主な論文・著書

1950年

Proton – Neutron Concentration Ratio in the Expanding Universe at the Stages Preceding the Formation of the Elements. Prog. Theor. Phys., 5., 1950.

1961年

Stellar Evolution in Early Phases of Gravitational Contraction. Publ. Astron. Soc. Japan, 13., 1961.

1962年

Evolution of the Stars (with R. Hoshi and D. Sugimoto). Prog. Theor. Phys. Suppl., 22., 1962.

1970年

Growth of Solid Particles in the Primordial Solar Nebula. (with T. Kusaka and T. Nakano). Prog. Theor. Phys., 44., 1970.

1976年

Formation of the Planets (with I. Adachi and K. Nakazawa). Prog. Theor. Phys., 55., 1976.

1985年

Formation of the Solar System (with K. Nakazawa and Y. Nakagawa). in Protostars and Planets II, Univ. Arizona Press.

贈賞理由

星の形成・進化と太陽系形成の理論的研究による宇宙科学への多大な貢献

林忠四郎博士は、原子核から流体力学に及ぶ基礎物理学の広範な知識・手法を宇宙現象の解析に導入して星の進化や太陽系の起源などの研究に新しい局面を開き、天体の諸現象を理論的に解明することにより、現代宇宙物理学の発展に多大な貢献を成し遂げた。よく知られているように、宇宙物理の扱う対象は、惑星や星といったわれわれが宇宙に見ているなじみの深いものである。しかし、宇宙現象の進化のタイムスケジュールは極めて長いので、観測された対象は、さまざまな進化段階のスナップショットにすぎない。観測で得られた多数のスナップに基礎物理学理論による順序づけをほどこして、星の形成から進化までの一貫した理論を構築した博士の業績は、世界的に極めて高い評価を得ている。

博士は、1950年代から星の進化過程を大局的に理解する解析を行うことにより、星の形成理論にかかわる数多くの先駆的な業績を残している。星の進化理論においては、星の内部構造論および原子核反応論をもとに主系列星をはじめ巨星、白色矮星などの構造ならびに進化を明らかにすることに成功した。特に1962年に発表された論文“Evolution of the Stars”は、その後の世界の恒星進化の研究者にとって長くバイブル的な出版物となっていた。博士の研究によって、星の進化の大筋が理論的に完全に解明されたといっても過言ではない。星の形成理論では、星の誕生時には活動が非常に激しくなり、光度が主系列に達した後よりも数十倍以上明るくなる時期があることを発見した。星の生まれつつあるこのような段階は「林フェイズ」と呼ばれ、よく知られた基礎概念となっている。

さらに太陽系形成理論において、われわれのいる太陽系などの恒星・惑星系がどのように誕生したかを理論的に解析した。これは太陽系起源の「京都モデル」と呼ばれ、天文学と地球惑星科学を結ぶ広い領域で重要な役割を果たしている。最近、電波や光学・赤外線望遠鏡および検出器の飛躍的進歩により、太陽系以外の惑星形成領域の観測が可能となっており、それによってもたらされた事実は、博士の構築したモデルを新たに検証するものが多い。

このように、博士は宇宙物理学に新しい統一的な知見をもたらし、宇宙の基礎的構成物である星と惑星の一貫した理論を構築することに成功した点で、今世紀を代表する宇宙物理学の巨人である。また、これらの研究の過程で、多くの優れた研究者を育成したことも高く評価されており、博士は第11回京都賞基礎科学部門地球科学・宇宙科学の分野の受賞者に真に相応しい。

記念講演

記念講演要旨

私と宇宙物理学-研究の動機、方法、輪郭-

私はこれまで、主として、宇宙物理学の理論的研究を続けてきた。この機会に、過去を振り返って、私がどのようにして物理学を選択し、さらに宇宙物理学を専攻するようになったか、どのような研究のテーマを選んで、どのような方法を用いて研究を遂行したか、また、どのような結果を得ることができたか、などについてお話する。

私が一貫してとってきた研究の方法は、実証された物理学の基礎法則に基づいて、宇宙や種々の天体の進化過程を解明することだった。この基礎法則としては、量子力学や統計力学のようなミクロの法則と、ニュートンの重力理論や一般相対論のようなマクロの法則がある。天体の内部で起こるミクロな過程と天体全体としてのマクロな過程は、互いに強く影響し合っている。天体の進化の研究は、このような二つの過程の時間的変化を追求することにほかならない。

私のこれまでの研究のテーマを大別すると、ビッグバン宇宙初期の元素の合成、赤色星の内部構造と核融合による星の進化、地球などの惑星がどのようにして生まれたかという太陽系の起源の三つになる。以上のテーマのそれぞれについて、私が研究を始める以前の歴史的状況と、私が進めてきた研究の概要をお話しする。

まず、宇宙初期の元素合成は、初期の高温時に存在した陽子と中性子から、その結合によって、どれだけの量のヘリウムがつくられ、どれだけの量の陽子が水素として残ったかという問題である。つぎに、赤色巨星の構造については、温度と密度の分布の様子が太陽とは非常に違っていることをお話しする。最後に、太陽系の起源については、原始的な太陽系星雲のなかで、まず、ガスとダストが分離し、ダストの集積によって微小惑星が生まれ、さらに、その集積によって固体の惑星が形成されるという多段階の過程を概観する。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

星と太陽系の形成

The Formation of Stars and the Solar System

日時
1995年11月12日(日) 13:10-17:15
場所
国立京都国際会館
企画・司会
佐藤 文隆 基礎科学部門専門委員会委員長、京都大学理学部教授

プログラム

13:10
開会 佐藤 文隆
挨拶 稲盛 豊実 稲盛財団常務理事
挨拶 甘利 俊一 基礎科学部門審査委員会委員長、東京大学工学部教授
13:25
受賞者紹介 佐藤 文隆
13:30
記念講演 林 忠四郎 基礎科学部門受賞者
「星と太陽系の形成」
14:30
座長挨拶 杉本 大一郎 基礎科学部門審査委員会委員、東京大学教養学部教授
講演 野本 憲一 基礎科学部門専門委員会委員、東京大学理学部教授
「星の進化と超新星爆発」
講演 海部 宜男 国立天文台教授
「星の形成
15:45
16:00
座長挨拶 中澤 清 東京工業大学理学部教授
講演 井田 茂 東京工業大学理学部助教授
「惑星の形成について」
講演 水谷 仁 基礎科学部門専門委員会委員、宇宙科学研究所教授
「実験・観測惑星科学の最近の進展」
17:15
閉会 佐藤 文隆
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