Isamu Noguchi

第2回(1986)受賞

思想・芸術部門

美術(絵画・彫刻・工芸・建築・写真・デザイン等)

イサム・ノグチ

/  彫刻家

1904 - 1988

記念講演会

私の歩んできた道

1986年

11 /12

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

東の美・西の美

1986年

11 /13

13:30~17:30

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

彫刻のみならず造形芸術の幅広い分野において、西洋と東洋の心を融合させた芸術家

彫刻を世に出すにとどまらず、舞台装置、工芸デザイン、庭園設計など広い分野で活動し、きわめて創造力に富む数多くの優れた芸術家たちに大きな影響を与えている現代の巨匠である。

[受賞当時の部門 / 対象分野: 精神科学・表現芸術部門 / 美術―造形芸術(絵画・彫刻・建築)]

贈賞理由

イサム・ノグチは、20世紀におけるもっとも創造力豊かな、もっとも多産な、そしてもっとも活動的な芸術家の1人である。彼は、これまでにもきわめて想像力に富む数多くの優れた作品を世に送り出してきたが、80歳を越えていまなお、次々に新しい世界を開拓していることは、驚嘆に値するといってよいであろう。今年のヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展においては、アメリカを代表するただ1人の芸術家に選ばれ、つきることのない旺盛な創作力を示した。

イサム・ノグチは、なによりもまず彫刻家であるが、しかし彼の活動は、通常の彫刻の範囲にかぎられるものではない。彼は、舞台装置、工芸デザイン、庭園設計、焼物などの広い領域にわたって、奔放自在に豊饒な世界を展開してみせている。たとえば、彼の多面的な創造力をよく示すものとして、建築と結びついた記念碑的な造形活動がある。パリのユネスコ本部の庭園、ニューヨークのチェイス・マンハッタン・プラザ彫刻庭園、大阪万国博覧会の噴水、東京の『子供の国』の遊び場、東京の草月会館の室内彫刻庭園、ヒューストン美術館の彫刻庭園などがその例である。また、きわめて繊細な造形感覚を物語る照明用具のデザインにおいても、卓越した成果をみせている。

イサム・ノグチは、日本の詩人野口米次郎を父に、アメリカ人を母としてアメリカで生まれているが、微妙なニュアンスに富む詩情と、堂々たる力強さを示す造形性とにおいて、太平洋をはさんだこの二つの国の芸術の伝統を見事にその作品のなかに融合させているといってよいであろう。

イサム・ノグチは、偉大な形体の詩人であると同時に、想像力に富む空間の造形家でもあり、また洗練された生活環境のデザイナーでもある。彼の作品には、空間に秩序を与えようとする強い意志と、人間に対するデリケートな優しさがともに見られ、また時にユーモアの感覚にも欠けてはいない。彼の彫刻作品の前に立つとき、あるいは彼の設計した庭園を訪れるとき、われわれがつねに圧倒されるような力強さと同時に、豊かな心の安らぎを覚えるのもそのためである。

日本とアメリカのみならず、ヨーロッパ、アジアをもしばしば訪れ、世界の各地においてたえず活動を続けながら、人類の遺産をいっそう豊かにし、多くの芸術家たちに大きな影響を与えているイサム・ノグチは、紛れもなく現代の巨匠と呼ぶにふさわしい存在であろう。

プロフィール

略歴
1924年
レオナルド・ダ・ヴィンチ・スクール(ニューヨーク)に入学し、彫刻の勉強を本格的に始める
1927年
グッゲンハイム奨学金を得、パリに留学
1935年
マーサ・グラハム舞踏団の舞台装置の制作
1961年
ロングアイランド・シティにアトリエを設ける
1985年
イサム・ノグチ・ガーエン・ミュージアム(ニューヨーク・ロングアイランド)をオープン
1986年
ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展(1986年度)アメリカ代表に決定
主な受賞・栄誉
1959年
シカゴ芸術協会の第63回絵画・彫刻展第1位「ローガン・メダル」
1965年
ニューヨーク建築協会の金賞
1974年
ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチの造形芸術の名誉博士
主な作品
1951-1952年
慶應義塾大学の庭園、広島の二つの橋
1956-1958年
パリ、ユネスコ本部の庭園
1974年
デトロイトのシビック・センターの噴水と広場
1976年
アトランタの運動場『プレイスケイプス』
1982年
彫刻庭園『カリフォルニア・シナリオ』

プロフィールは受賞時のものです

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