革新的なジャズ・ミュージシャン、セシル・テイラー氏を偲ぶ

写真:稲盛財団サロンにて

セシル・テイラー氏が4月5日、逝去されました。89歳でした。
テイラー氏は2013年、「ピアノによる即興演奏の可能性を極限まで追求した革新的なジャズ・ミュージシャン」として第29回(2013)京都賞思想・芸術部門を受賞。

1950年代後半から60年代にかけて従来のジャズの演奏スタイルにとらわれない革新的な即興演奏法を編みだします。自筆の譜面には、音符ではなくアルファベットのみを記し、ピアノの演奏スタイルも実に革新的なものでした。独特の音楽構成とピアノを掌(てのひら)まで使って弾く打楽器的な奏法。彼の即興演奏法は表現の自由を飛躍的に広げ、ジャズに新たな可能性を提示したのです。

1950年代末、さまざまな音楽的実験から生まれた「フリー・ジャズ運動」。その流れをリードする一人として、ヨーロッパなどの即興演奏家ともたびたびセッションをおこない、それぞれの国の音楽シーンに影響を与えていきます。テイラー氏の芸術表現はピアノ演奏のみにおさまらず、ダンサーとの共演、自身も舞踊や詩の朗読を披露するなど、音楽家の枠を超えた創造の道を切り拓きました。京都賞のワークショップでも、田中泯(たなか みん)氏と共演しています。

“私たちは心拍、心の鼓動と共に息をし、そしてリズムを生きています。これはずっといつまでも、私たちの存在に形を与えてくれるものです”
―――2013年京都賞授賞式でのスピーチより

彼の心のリズムから生まれた音楽。私たちがそれらに触れるとき、セシル・テイラーという偉大な音楽家は、永遠に存在しつづけるのかもしれません。心よりご冥福をお祈りいたします。

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