1997年先端技術部門エレクトロニクス
嶋 正利 写真

嶋 正利
(Masatoshi Shima)

  • 日本 / 1943年8月22日
  • 半導体技術者
  • 有限会社 嶋 正利 代表

世界初のマイクロプロセッサの開発

4氏のグループは世界初のマイクロプロセッサ4004を開発し、広範な機能を備えたマイクロコンピュータが少数の半導体チップで構成できることを示すことにより、マイクロプロセッサを基盤として産業および民生機器のエレクトロニクス化の道を拓き、新産業の創成と現代社会に計り知れない貢献をした。

プロフィール

略歴

1943年
静岡市に生まれる
1967年
東北大学理学部化学科卒業
同ビジコン社入社
1969年
渡米してインテル社と共同でマイクロプロセッサの開発に従事
1971年
リコー入社
1972年
インテル社入社
1975年
ザイログ社入社
1980年
インテルジャパン、デザインセンター所長
1986年
ブイ・エム・テクノロジー社、副会長(のち会長)
1991年
有限会社嶋正利代表
1992年
工学博士号取得、筑波大学

主な受賞と栄誉

1996年
「Z80、25年間にわたる産業への功績」ファジン、他と共同受賞
秋のコムデックス、アメリカ
1996年
PCマガジン優秀技術賞、ホフ、ファジン、メイザーと共同受賞
秋のコムデックス、アメリカ

主な論文・著書

1987年

「マイクロコンピュータの誕生:わが青春の4004」岩波書店 1987年

1995年

「次世代マイクロプロセッサ」日本経済新聞社 1995年

1972年

“The MCS-4 An LSI Microcomputer System” with others, IEEE, 1972.

1974年

“An N-Channel 8-Bit Single Chip Microprocessor” with others, IEEE, ISSCC, 1974.

1976年

“Z-80 Chip Set Heralds Third Microprocessor Generation” with others, Electronics, 1976.

1979年

“Demysitfying Microprocessor Design” IEEE, 1979.

1996年

“The History of the 4004” with Hoff, M. E., Faggin, F. and Mazor, S., IEEE Micro, 1996.

贈賞理由

世界初のマイクロプロセッサの開発

フェデリコ・ファジン博士、マーシャン・エドワード・ホフJr.博士、スタンレー・メイザー氏、嶋正利博士達4人のグループは、共同で1971年に世界最初の汎用マイクロプロセッサ4004を開発し、現代社会に絶大なインパクトを与え、世界の産業構造と社会構造に大きな変革をもたらした。

4氏が開発したマイクロプロセッサ4004は、3mm×4mmのシリコンチップ一枚の上に2300個のトランジスタを集積し、その能力は初期のコンピュータの時代には、一つの部屋を占有する程の大きさであった中央処理装置(CPU)の機能に匹敵するほどの革新的なものであった。

このマイクロプロセッサは、データや命令を収納するメモリーおよび入出力用のレジスタなどと組み合わせることにより、マイクロコンピュータというそれまでなかったシステムを可能とし、その構成要素やプログラムを変えることによって、数字・文字・画像の処理やシステムの制御など、多様な用途に効率よく対応するという全く新しい技術の流れを作り出す役割を果たした。トランジスタや集積回路の発明によってエレクトロニクスは顕著な技術革新をもたらしてきたが、マイクロプロセッサ4004の出現によってプログラムが可能になる電子部品の時代が始まり、さらに飛躍的な発展をすることとなったのである。この結果、システムを構築する技術もハードウエアとソフトウエアを有機的に活用する方式に移行し、いわゆる第二次産業革命の引き金となった。このマイクロプロセッサ4004の登場以降、今日まで約四半世紀が経過し、この間データ幅は4ビットから8ビットへ、さらに16ビットから32ビット、64ビットへと発展、その計算能力と処理能力は驚異的な向上を見せている。マイクロプロセッサ4004には、この発展を遂げつつある技術の基本概念が全て含まれていたといえる。

今日、マイクロプロセッサはパーソナルコンピュータをはじめとして、家電製品から自動車、通信機器、医療機器に組み込まれ、我々の日常生活の隅々まで浸透しており、さらに工作機械などの産業用機器にも幅広く普及している。およそ人間の発明したもので、マイクロプロセッサの開発と発展ほど短期間のうちに大きな影響を与えたものは他に見あたらない。こうした進展は、マイクロプロセッサ4004の誕生が契機となって創り出されたものであり、日米伊4名の技術者の成果なくしてもたらし得なかったものである。よって、ファジン博士、ホフ博士、メイザー氏、及び嶋博士に先端技術部門の第13回京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

私とマイクロプロセッサ-初めに応用ありき、応用が全てである

世界初のマイクロプロセッサ4004は日本の電卓メーカーであったビジコン社と米国の半導体メーカーであるインテル社との間で共同開発された。電卓やビジネス機器にも使える、10進コンピュータとストアードプログラム論理方式を使った、汎用LSIを開発する過程で、1969年8月に2進コンピュータの枠組である基本アーキテクチャが発明され、1969年12月にマイクロプロセッサ4004システムの具体案が完成し、1971年3月に開発に成功した。世界初のマイクロプロセッサが成功裏に開発されたのは、応用、コンピュータ、ソフトウェアそしてLSIなどの異なる専門分野の開発技術者が、協力し合い、学際的に、かつ挑戦的に、知恵とアイデアを出し合い、多くの問題を粘り強く解決しつつ、一粒の種から出発し製品としての完成品を作り上げたからである。

マイクロプロセッサは、『新時代を切り拓く技術』となり、その誕生と共に2つの顔を持つようになった。マイクロプロセッサは、前世代の『論理の時代』の集積回路で作られたハードウェア論理回路網をソフトウェアで置き換えるという、『プログラムの時代』を生み、知的能力としてのマイコンへの道を開いた。同時に、コンピューティング・パワーを創造に挑戦する若き開発者に開放し、パソコンやゲーム機が誕生し、ソフトウェア産業が花開き、高性能マイクロプロセッサへの道が開かれた。

創造的開発とは、未だ世の中に存在していない製品を開発することだから、成功という希望と失敗という不安を抱き合わせて、人跡未踏の荒野を羅針盤も持たずに進むようなものである。また、創造的開発とは、芸術や宗教と同じく、自分の世界を創り出すことでもある。したがって、創造的開発における新規概念の創造のためには、強い意志を持って、開発こそ我が道と信じ、人の歩んだ道を行ってはいけない。創造的開発の基本は現状に決して執着しないことである。今まで培った技術やノウハウや経験を捨てることは決して容易なことではない。しかし、経験という過去と現在を分析し、解析し、昇華させ、エッセンスだけを残し、あとは思い切って捨てるのが成功への一歩である。

解決しなければならない多くの複雑な問題を抱えた応用にこそ、貴重な宝石の原石がいっぱい埋まっている。それを見つけ出し、カットし、磨き上げることが、創造的開発であり、技術者の叡智であり、開発の面白さなのである。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

マイクロプロセッサの誕生からその未来へ

The Birth of Microprocessor and Future Possibility

日時
1997年11月12日(水) 10:00~17:30
場所
国立京都国際会館
企画
大見 忠弘 [専門委員会委員]東北大学大学院工学研究科教授 榊 裕之 [専門委員会委員長]東京大学先端科学技術センター教授
司会
榊 裕之

プログラム

10:00
開会 榊 裕之
10:05
挨拶 稲盛 豊実 稲盛財団常務理事
10:10
挨拶 末松 安晴 [審査委員会委員長]高知工科大学学長
10:15
記念講演 マーシャン・エドワード・ホフJr. 先端技術部門受賞者
「マイクロプロセッサアーキテクチャの着想」
10:45
記念講演 フェデリコ・ファジン 先端技術部門受賞者
「マイクロプロセッサの誕生」
11:15
記念講演 嶋 正利 先端技術部門受賞者
「マイクロプロセッサの未来」
11:45
記念講演 スタンレー・メイザー 先端技術部門受賞者
「ICと設計ツールの進歩」
12:15
昼食
司会 大見 忠弘
13:15
講演 西谷 隆夫 日本電気シリコンシステム研究所所長代理
「マルチメディア時代のプロセッサ」
14:00
講演 南谷 崇 東京大学先端科学技術センター教授
「非同期式プロセッサの研究開発」
14:45
15:00
講演 中村 行宏 京都大学大学院工学研究科教授
「VLSIプロセッサの高位論理合成設計」
15:45
講演 浅田 邦博 東京大学大規模集積システム設計教育研究センター教授
「日本の大学でのVLSI設計教育」
16:30
講演 亀山 充隆 東北大学大学院情報科学研究科教授
「知能集積システムの新しいパラダイムを目指して」
17:15
質疑応答
17:30
閉会 大見 忠弘
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