志村ふくみさん、能『沖宮』を語る(動画)

 

写真:記者会見のようす

6月29日、京都・嵯峨野の都機工房で新作能『沖宮おきのみや』の記者会見がおこなわれ、染織家・志村ふくみさんが、30年来親交のあった作家・石牟礼道子さんへの思いを語り、完成した能衣裳を披露しました。

写真:記者の質問に応える志村ふくみさん

『沖宮』の構想は、東日本大震災をきっかけに、志村さんと石牟礼さんが往復書簡[※1]や対談を通じて互いの考えを交わしたことに始まります。原作を石牟礼さんが、衣裳を志村さんがそれぞれに担当。

舞台は、天草の乱後の天草下島の村。干ばつに苦しむ村のために、雨の神<龍神>への人身御供ひとみごくう[※2]にされた少女あやを、天草四郎が<いのちの母なる神>がいるという海底の沖宮へと導くものがたり。

志村さんが1968年に嵯峨野に工房を構えてから半世紀。織りなす色は現工房でさらに花ひらいたと言われます。2016年には京都国立近代美術館において60年にもおよぶ創作の歩みを紹介する個展『志村ふくみ ―母衣ぼろへの回帰―』が開かれ、石牟礼さんは同展に次のようなメッセージを寄せていました。

志村さんの手に成った御作品は、色の精霊でもあり、いのちの秘光でもあり、魂が発色したような気品を感じます。草木染の色を拝見していると、色の精霊たちのはなやぐ遊びに誘われるようでございます。

――石牟礼道子(2016)「色の精霊たち」『志村ふくみ―母衣への回帰―』京都国立近代美術館 より

写真:緋色(左)と水縹みはなだ色(右)に染められた絹糸

言葉の精神性、色彩の精神性をそれぞれ「言霊」、「色霊」と呼ぶおふたりが手を取り合って結実した本舞台。

近代化が進む中で希薄になりつつあるいのちの深み、そして自然への畏敬の念。日本人が古くから大切にしてきたこの想いを次世代に繋げたい

――「新作能『沖宮』公演へのおもい」石牟礼道子と志村ふくみの願いを叶える会 より

構想から7年の時をへて、おふたりの望いが、この秋、叶います。
ニュース映像では、志村ふくみさんのコメントをお届けしますので、ぜひご覧ください。

稲盛財団は新作能『沖宮』を協賛いたします。

※1 志村さんと石牟礼さんの往復書簡集『遺言』筑摩書房
※2 いけにえ、人の欲望の犠牲になる人

関連情報