2001年先端技術部門エレクトロニクス
ジョレス・イワノヴィッチ・アルフェロフ 写真

ジョレス・イワノヴィッチ・アルフェロフ
(Zhores Ivanovich Alferov)

  • ロシア / 1930年3月15日
  • 物理学者
  • ヨッフェ物理技術研究所 所長、ロシア科学アカデミー 副会長

半導体レーザーの室温連続動作達成による光エレクトロニクス発展への先駆的貢献

室温環境での半導体レーザーの連続レーザー発振動作を達成し、世界的なIT革命を支える情報インフラ構築に不可欠な役割を担うデバイスの実用化への道を拓き、今日の光エレクトロニクスの発展に先駆的な貢献をした。

プロフィール

略歴

1930年
ソビエト、ベラルーシに生まれる
1952年
レニングラード電気技術大学卒業
1953年
ヨッフェ物理技術研究所技師
1964年
同上級研究員
1967年
同研究部長
1970年
博士号取得(物理,数学)
1989年
ロシア科学アカデミーレニングラード(現ペテルスブルグ)研究所常任幹部長、ヨッフェ物理技術研究所所長

主な受賞と栄誉

1971年
バレンタインメダル、フランクリン研究所(アメリカ)
1972年
レーニン賞
1978年
ヒューレット・パッカード ヨーロッパ物理学賞
1984年
ソビエト連邦国家賞
1996年
ヨッフェ賞、ロシア科学アカデミー
2000年
ノーベル物理学賞
会員
ロシア科学アカデミー副会長、ドイツ科学アカデミー、米国科学アカデミー
ハバナ大学名誉教授

主な論文

1969年

Coherent radiation of Epitaxial Heterojunction Structures in the AlAs-GaAs System. Soviet Phys. Semiconductors 2 (10). (with V. M. Andreev and others, 1969

1970年

AlAs-GaAs Heterojunction Injection Lasers with a Low Room Temperature Threshold. Soviet Physics-Semiconductors 3 (9). (with V. M. Andreev and others), 1970

1971年

Investigation of the influence of the AlAs-GaAs Heterostructure Parameters on the Laser Threshold Current and the Realization of Continuous Emission at Room Temperature. Soviet Physics-Semiconductors 4 (9). (with V. M. Andreev and others), 1971

贈賞理由

半導体レーザーの室温連続動作達成による光エレクトロニクス発展への先駆的貢献

アルフェロフ博士ならびに林博士とパニッシュ博士は、1970年に、それまではきわめて困難であった半導体レーザの室温環境における連続動作を達成した。この成果は、その後の半導体レーザ実用化への道を拓き、今日の世界的なIT革命を支える情報インフラ構築に不可欠な役割を担うことになった光エレクトロニクスの発展に先駆的な貢献をした。

1962年に誕生した最初の半導体レーザはホモ接合のガリウム・ヒ素(GaAs)レーザで、液体窒素中でレーザ発振に成功したものの、レーザ発振に必要な最低電流密度である「しきい値」がきわめて高かったためにパルス動作に限られて実用化をはばんでいた。その後、光を導波路中に閉じ込める様々な努力、ストライプ状の電極にする方法、アルミニウム・ガリウム・ヒ素(AlGaAs)とガリウム・ヒ素のヘテロ構造の導入などいろいろな試みがなされたが、いくつもの技術上の壁が立ちはだかり、室温連続動作には至らなかった。このような状況の中、1970年、アルフェロフ博士がロシア(旧ソビエト)で、林博士とパニッシュ博士がアメリカで、ほぼ同時期に半導体レーザの室温連続動作に成功した。3氏が開発した半導体レーザの特徴は、光を放出するための薄膜状のガリウム・ヒ素活性層の両側をアルミニウム・ガリウム・ヒ素結晶層ではさむ二重へテロ構造により、発振しきい値電流密度を飛躍的に低減させたところにある。

この画期的な成果が基になって、その後有力な諸研究が活発になされ、半導体レーザの実用化への道が拓かれた。そして、半導体レーザを用いた様々な新しい技術が生み出され、その結果、光エレクトロニクスの分野が急速に発展し、世界の社会構造と産業構造に大きな変革をもたらしたのである。

今や半導体レーザの応用は、情報化社会を実現させる原動力となったインターネットで世界を結ぶ光ファイバー通信のみならず、CD(コンパクトディスク)やビデオディスクに代表される光記録、コンピュータのメモリ、レーザプリンタなどの情報処理、さらにディジタル出版のようなメディアの分野にも広がっている。

このような革新的な技術開発の原点になったのは、3氏によるアルミニウム・ガリウム・ヒ素系二重へテロ構造レーザによる室温連続動作であり、この達成なくして現在の光エレクトロニクスの隆盛はあり得なかったと言っても過言ではない。

よってアルフェロフ博士、林博士、パニッシュ博士に先端技術部門における2001年京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

私の人生とヘテロ構造の物語

私が物理に興味を抱くようになったのは、ある物理の先生との出会いがきっかけでした。その先生の薦めもあって、私はレニングラード電気技術大学の電子工学部に進み、半導体物理や半導体デバイスの研究を始めました。1953年、ヨッフェ物理技術研究所に研究員として迎えられて以来、今日に至るまで、私は現代物理学のみならず現代の科学技術で最も刺激的な領域において研究活動を行うという幸運に恵まれました。

研究者として大きな転機となったのは、1962年暮れのpn接合半導体レーザの発明でした。これにより、研究の対象がホモ構造からヘテロ構造へと移りました。現在は、これまでにない高度な「人工原子」である量子ドット構造の開発、ならびに大きな可能性を秘めていると考えられる、同構造のオプトエレクトロニクス、高速エレクトロニクスへの応用に注目しています。

講演では、ロシア科学アカデミーが現在置かれている状況、ならびに現代科学全般に関する私の見解も述べたいと思います。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

半導体レーザ ―連続動作と将来への発展―

Semiconductor Laser - Continuous Operation and Progress for the Future -

日時
2001年11月12日(月)13:00
場所
国立京都国際会館
企画・司会
伊賀 健一[(専門委員会 委員)日本学術振興会 理事]
主催
財団法人 稲盛財団
後援
京都府、京都市、NHK
協賛
電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ、応用物理学会、IEEE/LEOS日本チャプタ、光産業技術振興協会、日本学術振興会

プログラム

13:00
開会 伊賀 健一
挨拶 稲盛 豊実 [稲盛財団 常務理事]
挨拶 末松 安晴[(審査委員会 委員長)国立情報学研究所 所長]
受賞者講演 林 厳雄 - 先端技術部門 受賞者
「半導体レーザーの室温連続発振の成功と実用化の難関」
受賞者講演 モートン・B・パニッシュ - 先端技術部門 受賞者
「超格子のX線特性評価と量子井戸におけるサブバンド間遷移を用いるデバイス」
受賞者講演 ジョレス・イワノヴィッチ・アルフェロフ - 先端技術部門 受賞者
「ダブルへテロ構造レーザ ―過去・現在・未来―」
休憩
パネル討論 司会:中村 道治[(専門委員会 委員長) 株式会社日立製作所 常務 研究開発本部 本部長]、伊賀 健一
パネラー:ジョレス・イワノヴィッチ・アルフェロフ、林 厳雄、モートン・B・パニッシュ、末松 安晴、赤崎 勇[名城大学 理工学研究科 ハイテク・リサーチセンター 教授]、池上 徹彦[(審査委員会 委員) 会津大学 学長]
17:30
閉会 伊賀 健一
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