1999年先端技術部門材料科学
W・デービッド・キンガリー 写真

W・デービッド・キンガリー
(W. David Kingery)

  • アメリカ / 1926年-2000年
  • セラミック材料科学者
  • アリゾナ大学 理事教授

セラミックスの物理化学的理論の体系化と材料科学としての確立に根幹的貢献

これまで経験則を頼りにしていたセラミックスの技術を、自身の研究成果も含めて理論的に体系づけ、セラミックスの材料科学としての確立に根幹的な貢献をし、今日のこの分野の発展に大きく寄与している。

プロフィール

略歴

1926年
アメリカ、ニューヨークに生まれる
1948年
マサチューセッツ工科大学(MIT)化学を卒業
1950年
博士号取得、マサチューセッツ工科大学
1951年
マサチューセッツ工科大学に勤務
1962年
同大学 教授(セラミックス)
1988年
アリゾナ大学 材料科学・人類学 教授
1992年
同大学 理事教授

主な受賞と栄誉

1975年
米国工学アカデミー会員
1980年
エドワード・オルトンJr. 記念講演賞
1983年
アメリカセラミック学会功労終身会員
1989年
セラミックスアカデミー会長
1991年
日本セラミック協会100周年記念賞
1992年
セラミック教育者賞、アメリカセラミック学会

主な論文と著作

1959年

Densification During Sintering in the Presence of a Liquid Phase. I . Theory, J. Appl. Phys. II. Experimental, J. Appl. Phys., 1959

1959年

Oxygen Ion Mobility in Cubic Zr0.85 Ca0.15 O1.85 . (with M. E. Doty and other) J. Am. Ceram. Soc., 1959

1960年

Introduction to Ceramics. John Wiley & Sons, New York, 1960

1974年

Plausible Concepts Necessary and Sufficient for the Interpretation of Ceramic Grain-Boundary Phenomena. I. Grain Boundary Characteristics, Structure, and Electrostatic Potential. J. Chem. Soc. II. Solute Segregation, Grain-Boundary Diffusion and General Discussion. J. Chem. Soc., 1974

1996年

Ceramic Masterpieces – Art, Structure, Technology. (with P. B. Vandiver) The Free Press, Macmillan Company, New York, 1996

贈賞理由

セラミックスの物理化学的理論の体系化と材料科学としての確立に根幹的貢献

キンガリー博士は、これまで経験則に頼り、科学的な取り扱いが遅れていたセラミックスに、化学的、物理的考え方を取り入れ、「セラミックス物理」という学問体系を構築することにより、セラミックスの材料科学としての確立に根幹的な貢献をし、この分野の発展に大きく寄与した。

博士は、セラミックス製造の最も基本的な素過程である「焼結」について系統立った研究を行い、種々のモデル系の焼結速度の解析により、焼結機構が粘性流動、蒸発・凝縮、内部拡散などの機構に同定できることを実証した。特に、セラミックス工業の中で最も重要な液相焼結が、液相による粒子のぬれ、粒子の再配列、溶解-析出の3段階で進行することを説明し、その本質を初めて理論的に解明するとともに、これら一連の研究を通じて、セラミックスの焼結機構、焼結体の微細構造、物性を支配する重要因子は、成分イオンの拡散係数であることを明らかにした。更に、博士は焼結の終点である気孔の除去が気孔と粒界の相互作用により進行すると洞察し、焼結に関する初期から終期にわたるすべての過程について、統一的理解の指針を与えたのである。それらの理論は、今日のセラミックス製造の基本的指針となっている。

また、博士はイオン電導性の研究において、酸化物中の酸素イオンの拡散係数を測定することにより、酸素イオンや格子欠陥などの挙動を明らかにし、拡散現象の解明についても重要な貢献をした。さらに、イオン結晶の粒界の特性を洞察した新しい概念を提唱し、多彩なセラミックスの応用展開の基礎的根拠を提供した。このようなセラミックス材料科学に関する研究成果は、エレクトロニクセラミックス、エンジニアリングセラミックス、ストラクチャーセラミックスなど、様々なセラミックスの製造過程に適用され、重要な工業製品群を生み出すことになった。

博士は、これらの成果を「Introduction to Ceramics」として世界に示した。この著書は、今日でもセラミックス材料科学のバイブルといわれており、博士の材料科学への貢献を象徴するもので、それ故、博士は「現代セラミックスの父」と呼ばれている。

このように、キンガリー博士はセラミックスの学問を科学として体系化するとともに、多くの著作や研究指導を通じて、世界的な規模でセラミックス材料科学の発展を先導する大きな功績をあげた。よって、キンガリー博士に先端技術部門における1999年京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

人工物の科学と技術

人工の物を製造、使用し、また経験することは、現代生活の主要な活動です。人工物なくして先端技術の実現は不可能です。人工物というものは、その構成物や構造も含め、生産活動および使用や性能に直接結びついている、という考えがセラミック材料科学の先端技術についての私のビジョンです。セラミックの先端技術の用途が非常に多いので、このビジョンを一般 聴衆の方々によく理解して頂くには、いくつか過去の例を取り上げて紹介するのが適当かと思われます。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

セラミック科学の展開と応用

Development and Applications of Ceramic Science

日時
1999年11月12日 13:00~17:30
場所
国立京都国際会館
企画
柳田 博明 先端技術部門専門委員会委員長、株式会社ファインセラミックスセンター試験研究所所長

プログラム

13:00
開会
挨拶 稲盛 豊実  稲盛財団常務理事
櫻井 良文  先端技術部門審査委員会委員長、大阪大学 名誉教授
13:10
受賞者紹介 柳田 博明
13:20
受賞者講演 W・デービッド・キンガリー 先端技術部門 受賞者
「セラミック材料の設計」
14:10
講演 水谷 惟恭 東京工業大学院理工学研究科教授
「キンガリー博士の想い出と粒界現象」
14:40
講演 曽我 直弘 滋賀県立大学交流センターセンター長
「セラミックス基礎科学の展開」
15:10
休憩
司会 小久保 正
15:30
講演 柳田 博明
「セラミックスの今後の展開」
16:00
講演 一ノ瀬 昇 早稲田大学理工学部教授
「エレクトロニクセラミックスの展開」
16:30
講演 香川 豊 東京大学生産技術研究所所長
「セラミックスの複合材料への展開」
17:00
質疑応答
17:30
閉会
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