2016年先端技術部門情報科学
金出 武雄 写真

金出 武雄
(Takeo Kanade)

  • 日本 / 1945年10月24日
  • ロボット工学者
  • カーネギーメロン大学 ワイタカー記念全学教授

コンピュータビジョンとロボティクス分野での先駆的かつ実践的研究

コンピュータビジョンの基礎理論に根源的に貢献するのみならず、自動運転を含むそのロボティクスへの革新的な応用技術を次々に創出し、長きにわたってこの分野の発展の基礎を築きながら牽引し続ける傑出した先駆者である。

プロフィール

略歴

1945年
兵庫県氷上郡春日町(現 丹波市)生まれ
1974年
京都大学 工学博士
1974年-1976年
京都大学 工学部 助手
1976年-1980年
京都大学 工学部 助教授
1980年-1982年
カーネギーメロン大学 ロボティクス研究所および計算機科学科 高等研究員
1982年-1985年
カーネギーメロン大学 ロボティクス研究所および計算機科学科 准教授
1985年-1994年
カーネギーメロン大学 ロボティクス研究所および計算機科学科 教授
1992年-2001年
カーネギーメロン大学 ロボティクス研究所 所長
1993年-1998年
カーネギーメロン大学 ワイタカー記念教授
1998年-
カーネギーメロン大学 ワイタカー記念全学教授
2004年-2010年
産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究センター センター長
2006年-2012年
カーネギーメロン大学 生活の質工学センター センター長
2014年-
大阪大学 産業科学研究所 特任教授
2014年-
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 客員教授
2015年-
産業技術総合研究所 名誉フェロー
2016年-
理化学研究所 革新知能統合研究センター 特別顧問

主な受賞と栄誉

1995年
ジョゼフ・F・エンゲルバーガー賞
2000年
C&C賞
2004年
船井業績賞
2007年
アズリエル・ローゼンフェルド生涯業績賞、IEEE CS
2007年
RASパイオニア賞、IEEE RAS
2007年
大川賞
2008年
バウアー賞科学部門、フランクリン協会
2010年
ACM-AAAIアレン・ニューウェル賞
2010年
立石賞特別賞
会員:
米国芸術科学アカデミー、米国工学アカデミー

 

贈賞理由

コンピュータビジョンとロボティクス分野での先駆的かつ実践的研究

金出武雄博士は、コンピュータビジョンの基礎的な理論からロボティクスへの応用まで幅広い領域で、長きにわたって活躍してきた。今日、知的機能を備えたカメラやロボットが社会の様々な分野で活躍しているが、これらの技術の基礎および実装の両面で傑出した先駆的な貢献を行った。
金出博士はコンピュータによる画像認識研究の先駆的研究にまず取り組み、ニューラルネットワークによる学習に基づく顔検出手法を提案した。この手法は顔検出率を飛躍的に向上させて、実用的に利用ができるレベルにまで押し上げた。
さらに、動画像をもとに外界の立体構造と運動を認識する問題に取り組み、物体の動きを表すオプティカルフローの推定の基礎となる頑健なアルゴリズムを提案した。加えて、物体の動きから3次元形状を復元する問題に対して特異値分解に基づく3次元復元法を提案した。これらは今日の映像処理の基本となっており、画像をもとに動的な3次元世界を認識する手法を大きく進展させたのである。
特に注目すべきは、自動運転の研究である。1985年から始まった自動走行車のプロジェクトは、今日の自動運転技術のさきがけとなった。車に設置した距離センサとカメラからの情報に基づいて、レーンの認識と変更、障害物の検出と回避、他の車の検出などをリアルタイムで行う人工知能システムを世界で初めて構築した。その成果を実証するために“No Hands Across America”という壮大なデモンストレーションを行ったのである。これはアメリカ大陸を横断するもので、東部のピッツバーグから西海岸のサンディエゴまで約4,500kmをほとんどハンドルから手を放して走行するという画期的な成果を残した。このデモンストレーションが自動運転の実現に道筋をつけた意義は大変大きいものであった。
このように金出博士の業績は、学術的な基礎研究から実用的な技術の実装まで広い分野にわたっており、画像処理、パターン認識の分野において、基礎的、理論的な枠組みを提唱するだけでなく、そこから壮大な実用技術の開発を成し遂げたという点で極めて傑出している。
以上の理由によって、金出武雄博士に先端技術部門における第32回(2016)京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

素人のように考え、玄人として実行する:楽しく役に立つビジョンとロボットの研究

研究開発に従事する人々に希望は何かと尋ねると、皆一様に「良い研究がしたい」と答えます。それでは「良い」研究とは何かと尋ねられると、答えは結構難しいです。私は良い研究の基本は、世の中に現実に存在する問題を解いて役に立つ、そして自分はその活動を楽しむということではないかと思います。そういう良い研究にはストーリーがあり、他の人々に理解させ追随させる力があります。「素人のように考え、玄人として実行する」は私の研究のモットーです。問題や解法を発想するときには、「何ができない、難しい」という先入観を捨て、「まるで」その分野の素人のように簡単に素直に考える、一方で解を実行に移すときには、緻密に正確に専門的なこだわりを持って徹底的に遂行する、という姿勢です。私は、これまで計算機に視覚の機能を持たせ、それを使って知的な行動をすることの出来るロボットの研究と開発に従事してきました。画像中の人の顔を認識し表情解析する技術、車の自動運転、医用手術ロボット、自律的に飛行するヘリコプター、顕微鏡ビデオで細胞行動の自動追跡、多数のカメラとロボットを使うスポーツ観戦の新しいメディアなど、極めて多岐にわたるものを手がけることが出来る幸運に恵まれたと思います。このような研究生活の中で、私はさまざまな人に会い共に仕事をしましたし、さまざまな課題に遭遇しました。私のモットーがそれらの人と課題と偶然にあるいは必然に織りなした研究の面白さと楽しさをお話したいと思います。

ワークショップ

ワークショップ

コンピュータビジョン研究が描く20年後の社会

Society in 20 Years Later Depicted by Computer Vision Research

日時
2016年11月12日(土)10:30~17:30
場所
国立京都国際会館
企画
美濃 導彦 [京都大学 教授] 喜連川 優 [国立情報学研究所 所長]
司会
美濃 導彦
主催
公益財団法人 稲盛財団
後援
京都府、京都市、NHK
協賛
映像情報メディア学会、画像電子学会、情報処理学会、電子情報通信学会、日本バーチャルリアリティ学会、日本ロボット学会、ヒューマンインタフェース学会(五十音順)

プログラム

10:30
開会挨拶・受賞者紹介 美濃 導彦
10:40
受賞者講演 金出 武雄 [先端技術部門 受賞者]
「次世代の計算機視覚科学技術者へのいくつかのチャレンジ問題」
12:00
休憩
13:00
講演 向川 康博 [奈良先端科学技術大学院大学 教授]
「光線計測に基づくコンピュテーショナルフォトグラフィ」
13:30
講演 松下 康之 [大阪大学 教授]
「大きなデータの小さな世界」
14:00
講演 原田 達也 [東京大学 教授]
「機械学習による画像理解と画像生成」
14:30
休憩
14:45
講演 藤吉 弘亘 [中部大学 教授]
「キーポイントマッチングのためのアフィン不変な局所特徴表現」
15:15
講演 内田 誠一 [九州大学 教授]
「文字工学のすすめ~重箱の隅をつつき破り、そこに未来を見る」
15:45
講演 佐藤 真一 [国立情報学研究所 教授]
「大規模マルチメディア情報の偏りから意味を読み解く」
16:15
休憩
16:30
総合討論 「インパクトのある研究とは何か?その秘訣を探る」

ディスカッサント:内田 誠一、金出 武雄、神谷 之康 [京都大学 教授]、喜連川 優、佐藤 真一、原田 達也、藤吉 弘亘、松下 康之、美濃 導彦、向川 康博、山田 敬嗣 [NEC中央研究所 理事]
17:30
閉会
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