Shinya Yamanaka

第26回(2010)受賞

先端技術部門

バイオテクノロジー及びメディカルテクノロジー

山中 伸弥

/  医学者

1962 -

京都大学 教授

記念講演会

iPS細胞がつくる新しい医学

2010年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

iPS細胞の誕生:その原理と再生医療への展開

2010年

11 /12

13:30~17:20

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を誘導する技術の開発

皮膚線維芽細胞にわずか4種類の転写因子遺伝子を導入することによって胚性幹細胞(ES細胞)と同様な多分化能をもつ人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作りだすことに成功した。この技術は再生医療の可能性に道を開くのみならず、医学全般の飛躍的発展に大きく貢献することが期待される。

贈賞理由

山中伸弥博士は、皮膚線維芽細胞にわずか4種類の転写因子遺伝子を導入することによって胚性幹細胞(ES細胞)と同様な多分化能をもつ人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作りだすことに成功した。この技術は再生医療の可能性に道を開くのみならず、医学全般の飛躍的発展に大きく貢献することが期待される。

ES細胞も再生医療に応用できる可能性が大きいと期待されているが、ヒト胚を破壊するという倫理的な問題があり、また免疫学的な拒絶反応も避けられない。

また、脱核した卵細胞に分化した細胞の核を移植すると、遺伝子発現状態が初期化され、未分化細胞になるという生命現象は知られていたが、この複雑な現象が限られた数の因子によって起こることは誰も予想しなかった。

山中博士はES細胞の多能性を維持する因子が、いったん分化した細胞を再び多能性を有する状態に再プログラムする因子になりうるとの仮説を立てて研究を進めた。公開のデータベースからES細胞に特異的に発現している遺伝子群を選び、種々検討の結果、最終的に4個の因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)をマウス皮膚線維芽細胞に導入することにより、ES細胞と同様の自己複製能と多分化能をもつiPS細胞を誘導することに成功した。さらに山中博士の研究グループは同様な方法でヒト線維芽細胞からiPS細胞を誘導することにも成功した。

山中博士によるiPS細胞誘導技術は、分化を終えた体細胞から時間軸を遡って、自己複製能と多分化能をもつ幹細胞を得ることを限られた数の転写因子遺伝子導入により可能にしたという点で極めて独創的かつ革新的である。この技術は再生医療のみならず、難病の病態の解明・治療、創薬スクリーニング・毒性試験など、医学全般の発展に大きく貢献することが期待される。

以上の理由によって、山中伸弥博士に先端技術部門における第26回(2010)京都賞を贈呈する。

プロフィール

略歴
1962年
大阪市生まれ
1987年
神戸大学 医学部 卒業
1993年
大阪市立大学 大学院医学研究科 博士課程修了(博士(医学))
1993年
グラッドストーン研究所 博士研究員
1999年
奈良先端科学技術大学院大学 遺伝子教育研究センター 助教授
2003年
奈良先端科学技術大学院大学 遺伝子教育研究センター 教授
2004年
京都大学 再生医科学研究所 教授
2007年
グラッドストーン研究所 上級研究員
2007年
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 教授
2008年
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 iPS細胞研究センター センター長
2010年
京都大学 iPS細胞研究所 所長
主な受賞・栄誉
2007年
日本学術振興会賞、日本学術振興会
2008年
ショウ賞生命科学・医学部門、ショウ賞財団
2008年
紫綬褒章
2009年
ガードナー国際賞、ガードナー財団
2009年
アルバート・ラスカー基礎医学研究賞、ラスカー財団
2010年
発生生物学マーチ・オブ・ダイムズ賞、マーチ・オブ・ダイムズ財団
主な論文
2003年
The homeoprotein Nanog is required for maintenance of pluripotency in mouse epiblast and ES cell (Mitsui, K., Tokuzawa, Y., Itoh, H., Segawa, K., Murakami, M., Takahashi, K., Maruyama, M., Maeda, M. and Yamanaka, S.). Cell 113: 631-642, 2003.
2006年
Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors (Takahashi, K. and Yamanaka, S.). Cell 126: 663-676, 2006.
2007年
Generation of germline-competent induced pluripotent stem cells (Okita, K., Ichisaka, T. and Yamanaka, S.). Nature 448: 313-317, 2007.
2007年
Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors (Takahashi, K., Tanabe, K., Ohnuki, M., Narita, M., Ichisaka, T., Tomoda, K. and Yamanaka, S.). Cell 131: 861-872, 2007.
2009年
Suppression of induced pluripotent stem cell generation by the p53-p21 pathway (Hong, H., Takahashi, K., Ichisaka, T., Aoi, T., Kanagawa, O., Nakagawa, M., Okita, K. and Yamanaka, S.). Nature 460: 1132-1135, 2009.

プロフィールは受賞時のものです

関連映像

関連ニュース