2010年先端技術部門バイオテクノロジー及びメディカルテクノロジー
山中 伸弥 写真

山中 伸弥
(Shinya Yamanaka)

  • 日本 / 1962年9月4日
  • 医学者
  • 京都大学 教授

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を誘導する技術の開発

皮膚線維芽細胞にわずか4種類の転写因子遺伝子を導入することによって胚性幹細胞(ES細胞)と同様な多分化能をもつ人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作りだすことに成功した。この技術は再生医療の可能性に道を開くのみならず、医学全般の飛躍的発展に大きく貢献することが期待される。

プロフィール

略歴

1962年
大阪市生まれ
1987年
神戸大学 医学部 卒業
1993年
大阪市立大学 大学院医学研究科 博士課程修了(博士(医学))
1993年
グラッドストーン研究所 博士研究員
1999年
奈良先端科学技術大学院大学 遺伝子教育研究センター 助教授
2003年
奈良先端科学技術大学院大学 遺伝子教育研究センター 教授
2004年
京都大学 再生医科学研究所 教授
2007年
グラッドストーン研究所 上級研究員
2007年
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 教授
2008年
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 iPS細胞研究センター センター長
2010年
京都大学 iPS細胞研究所 所長

主な受賞と栄誉

2007年
日本学術振興会賞、日本学術振興会
2008年
ショウ賞生命科学・医学部門、ショウ賞財団
2008年
紫綬褒章
2009年
ガードナー国際賞、ガードナー財団
2009年
アルバート・ラスカー基礎医学研究賞、ラスカー財団
2010年
発生生物学マーチ・オブ・ダイムズ賞、マーチ・オブ・ダイムズ財団

主な論文

2003年

The homeoprotein Nanog is required for maintenance of pluripotency in mouse epiblast and ES cell (Mitsui, K., Tokuzawa, Y., Itoh, H., Segawa, K., Murakami, M., Takahashi, K., Maruyama, M., Maeda, M. and Yamanaka, S.). Cell 113: 631-642, 2003.

2006年

Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors (Takahashi, K. and Yamanaka, S.). Cell 126: 663-676, 2006.

2007年

Generation of germline-competent induced pluripotent stem cells (Okita, K., Ichisaka, T. and Yamanaka, S.). Nature 448: 313-317, 2007.

2007年

Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors (Takahashi, K., Tanabe, K., Ohnuki, M., Narita, M., Ichisaka, T., Tomoda, K. and Yamanaka, S.). Cell 131: 861-872, 2007.

2009年

Suppression of induced pluripotent stem cell generation by the p53-p21 pathway (Hong, H., Takahashi, K., Ichisaka, T., Aoi, T., Kanagawa, O., Nakagawa, M., Okita, K. and Yamanaka, S.). Nature 460: 1132-1135, 2009.

贈賞理由

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を誘導する技術の開発

山中伸弥博士は、皮膚線維芽細胞にわずか4種類の転写因子遺伝子を導入することによって胚性幹細胞(ES細胞)と同様な多分化能をもつ人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作りだすことに成功した。この技術は再生医療の可能性に道を開くのみならず、医学全般の飛躍的発展に大きく貢献することが期待される。

ES細胞も再生医療に応用できる可能性が大きいと期待されているが、ヒト胚を破壊するという倫理的な問題があり、また免疫学的な拒絶反応も避けられない。

また、脱核した卵細胞に分化した細胞の核を移植すると、遺伝子発現状態が初期化され、未分化細胞になるという生命現象は知られていたが、この複雑な現象が限られた数の因子によって起こることは誰も予想しなかった。

山中博士はES細胞の多能性を維持する因子が、いったん分化した細胞を再び多能性を有する状態に再プログラムする因子になりうるとの仮説を立てて研究を進めた。公開のデータベースからES細胞に特異的に発現している遺伝子群を選び、種々検討の結果、最終的に4個の因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)をマウス皮膚線維芽細胞に導入することにより、ES細胞と同様の自己複製能と多分化能をもつiPS細胞を誘導することに成功した。さらに山中博士の研究グループは同様な方法でヒト線維芽細胞からiPS細胞を誘導することにも成功した。

山中博士によるiPS細胞誘導技術は、分化を終えた体細胞から時間軸を遡って、自己複製能と多分化能をもつ幹細胞を得ることを限られた数の転写因子遺伝子導入により可能にしたという点で極めて独創的かつ革新的である。この技術は再生医療のみならず、難病の病態の解明・治療、創薬スクリーニング・毒性試験など、医学全般の発展に大きく貢献することが期待される。

以上の理由によって、山中伸弥博士に先端技術部門における第26回(2010)京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

iPS細胞がつくる新しい医学

病気や怪我で失われた組織や臓器を再生する研究は数十年前から進められてきました。今から10年ほど前に初めて報告されたヒト胚性幹(ES)細胞は、分化多能性や高い増殖能をもち、あらゆる組織や臓器の細胞を作り出す能力により、様々な難治性疾患に対する再生医療が可能になると期待されてきました。しかし、受精卵の犠牲による倫理的問題、また移植後の拒絶反応の課題がありました。これらを回避するため、私たちは、ごくありふれた細胞から有用な幹細胞を作りだす研究に着手しました。その結果、僅か4つの遺伝子の導入により、2006年にマウスの、2007年に人間の皮膚線維芽細胞から人工多能性幹(iPS)細胞を樹立することに世界で初めて成功しました。

患者から樹立されたiPS細胞はES細胞と良く似た性質をもつことから、心筋梗塞、糖尿病、脊髄損傷、パーキンソン病などに対する細胞移植治療への有望な資源として注目されています。また、研究が困難な様々な病気のメカニズムの解明や、新しい薬の探索、薬剤の有効性や副作用の評価にも役立つと期待されています。iPS細胞は様々な年齢の日本人の体細胞からでも樹立できることが確認されており、それらの細胞の多能性に大きな違いはありません。しかし、細胞移植治療への応用を考えたとき、樹立に要する時間短縮、コスト削減という課題があります。そのため、様々な移植適合型の提供者からiPS細胞をあらかじめ樹立しておき、「再生医療用iPS細胞バンク」を構築していくことを考えています。

現在、世界中の多くの大学や企業の研究者がiPS細胞研究に参入し、樹立方法は急速に改善されつつあり、iPS細胞から神経、心筋、血液など様々な組織や臓器の細胞に分化することも報告されています。多くの皆様のご支援を受けて竣工した新研究棟で、私たちは今後10年全力で研究を進め、iPS細胞に立脚した新しい医学を生み出したいと考えています。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

iPS細胞の誕生:その原理と再生医療への展開

Perspective of iPS Cells: Principles of Mechanism and Application to Regenerative Medicine

日時
平成22年11月12日(金)13:30~17:20
場所
国立京都国際会館
企画
本庶 佑[(審査委員会 委員長)内閣府総合科学技術会議 議員] 中畑 龍俊[京都大学 iPS細胞研究所 副所長] 阿形 清和[京都大学 大学院理学研究科 教授]
司会
中畑 龍俊
主催
財団法人 稲盛財団、京都大学
後援
京都府、京都市、NHK
協賛
日本炎症・再生医学会、日本血液学会、日本再生医療学会、日本細胞生物学会、日本発生生物学会、日本分子生物学会(五十音順)

プログラム

13:30
開会挨拶受賞者紹介 中畑 龍俊
受賞者講演 山中伸弥[先端技術部門 受賞者]
「iPS細胞研究の進展」
講演 阿形 清和
「自然界にみる核のリプログラミング」
講演 多田 高[京都大学 再生医科学研究所 准教授]
「空想が現実になった核リプログラミング:細胞融合からiPS細胞へ」
講演 丹羽 仁史[理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
       多能性幹細胞研究プロジェクト プロジェクトリーダー]
「iPS細胞を誘導する転写因子の生理的機能」
講演 斎藤 潤[京都大学iPS細胞研究所 助教]
「疾患関連iPS細胞の応用:Bedside to bench and back」
講演 中内 啓光[(専門委員会 委員)東京大学 医科学研究所 教授]
「iPS細胞研究の進展と新しい医療への期待:iPS細胞から臓器を作る」
講演 岡野 栄之[慶應義塾大学 医学部 教授]
「iPS細胞研究:基礎から臨床への戦略的展開」
閉会挨拶 本庶 佑
17:20
閉会
【関連情報】
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