1995年思想・芸術部門美術(絵画・彫刻・工芸・建築・写真・デザイン等)
ロイ・リキテンスタイン  写真

ロイ・リキテンスタイン
(Roy Lichtenstein)

  • アメリカ / 1923年-1997年
  • 造形芸術家

ポップアート作品により芸術の本質とその社会的役割を問い続けた画家

1960年代にポップアートの旗手として登場して以来、30年以上にわたって、独自の表現語法により、芸術の本質とその社会的役割を鋭く問いただす優れた作品を数多く生み出し、現代美術に大きな影響を与えた。
[受賞当時の部門 / 対象分野: 精神科学・表現芸術部門 / 美術(絵画・彫刻)]

プロフィール

略歴

1923年
アメリカ、ニューヨークに生まれる
1939年
アート・ステューデンツ・リーグに学ぶ
1940年
オハイオ州立大学で美術を学ぶ
1949年
同大学で修士号取得
1960年
ラトガース大学ダクラス・カレッジ助教授
1988年
マンハッタン、ワシントン通りに現在のスタジオをかまえる

主な受賞と栄誉

1951年
初個展(カールバック画廊、ニューヨーク)
1962年
個展(レオ・キャステリ画廊、ニューヨーク)
1969年
回顧展(グッゲンハイム美術館、ニューヨーク)
1979年
アメリカ芸術アカデミー会員、ニューヨーク
1980年
美術名誉博士号、サザンプトンカレッジ、ニューヨーク
1981年
近作回顧展(セントルイス美術館、日本にも巡回)
1988年
名誉博士号、オハイオ大学
1991年
創造芸術賞、ブランディス大学
1994年
回顧展(グッゲンハイム美術館、ニューヨーク)

主な作品

1961年

「見て!ミッキー」「ボールと少女」などの漫画や広告のイメージを直接引用した作品を制作

1965年

「ヘアリボンの少女」

1965年

最初の「ブラッシュストローク」作品を制作

1969年

「鏡」「ピラミッド」シリーズ制作

1992年

バルセロナ・オリンピック・モニュメント「バルセロナ・ヘッド」

1994年

「東京ブラッシュストローク・・・」新宿アイランド

贈賞理由

ポップアート作品により芸術の本質とその社会的役割を問い続けた画家

ロイ・リキテンスタイン氏は1960年代にポップアートの旗手として登場して以来、30年以上にわたって独自の表現語法により、芸術の本質とその社会的役割を鋭く問いただす優れた作品を数多く生み出し、現代美術に多大な影響を与え続けている。

リキテンスタイン氏は、コミック・ストリップという安物の通俗漫画雑誌の一部分や、スーパーマーケットの宣伝チラシのイメージを拡大するという卓抜な発想の作品群によって一躍注目を集め、ポップアートの最も有力な画家の一人に数えられるようになった。事実、ミッキーマウスという大衆イメージを利用したその最初の作品は、当時の芸術界に大きな刺激を与え、今では歴史的意味を持つものとして位置づけられている。これら初期のポップ作品は、誰もがよく知っている見慣れたイメージをあえて取り上げ、拡大、強調することによって、大衆性と無名性を特色とするアメリカの高度消費社会の本質を鋭くえぐり出して見せたという点で、社会的にも重要な意義を有するものと言わなければならない。社会の姿を凝縮した形で示すこと、いわば時代を映す鏡になることは、芸術の基本的役割の一つなのである。

それと同時に、明るい魅力に満ちたこれらの作品によって、氏は通俗的なイメージでさえ優れた芸術作品に変貌し得ることを証明し、造形表現の力を明らかにしてみせた。実際、拡大された網点やハッチング、赤、黄、青、黒、白、緑の6色に限定された色彩配合、力強い単純な輪郭線等は紛れもない氏独自の造形的表現語法として、その作品を特徴づけているのである。その結果、美術は難しいものでも、まして一握りの人たちだけのものでもなくあらゆる人々に美術を享受する機会を提供するものになった。

それ以後も、モネ、ピカソ、マティスなどそれぞれに異なった様式の過去、または同時代の巨匠たちの作品の再解釈、「ブラッシュストローク」「鏡」のような視覚芸術の本質を問いただすシリーズ、あるいは建築モチーフや装飾パターンの絵画化など、いずれも先鋭な問題提起を含んだ作品を次々に発表した。これらの作品に用いられている題材は、広く知られたものばかりであるが、氏の作品世界においては、まったく新しい意味と表現を与えられている。さらに氏は、その平易で明快な造形表現によって、絵画のみならず、彫刻や壁画装飾をも手掛けている。その特徴は絵画から抜け出したような平面性にあるが、豊かで創意にあふれ、あくまでも明るく力強い表現により、人々に大きな喜びを与えている。

リキテンスタイン氏は、ポップ・アートという極めて重要な20世紀美術運動を通じて、美術を誰にでも親しめるものとしてみせるとともに、今も芸術界に大きな刺激と活力を与え続けており、第11回京都賞精神科学・表現芸術部門美術分野の受賞者として最も相応しい。

記念講演

記念講演要旨

1961年からの創作人生を振り返って

私はこのスライド・プレゼンテーションにおいて自分の残してきた作品の思想の進化のいくつかを取り上げ、ひとつの制作が次の作品創造をいかに導きだしてきたのかについてお示ししようと思う。また同時に個々の作品の趣旨や意味についてもコメントしたい。

さて、スライドはまず58年のドナルド・ダックやミッキー・マウスなどのドローイングから入る。すなわちこの時期のペインティングがすでに失われてしまっているからである。次いで61年の最初のポップ・ペインティングである「ルック・ミッキー」をご紹介し、さらに60年代初期の作品のいくつかについて、漫画を主題にした理由やその狙い、さらに限定的でシンプルな色彩、ドット(印刷の網点)を描いてゆくいくつかの手法についてお話しする。

また「ターキー」や「ゴルフ・ボール」「コンポジション」などの64年頃までのオブジェ的作品、さらに63年頃から始めたピカソなどのモダン・マスターズの作品主題からの引用、65年からの「ブラッシュ・ストローク」シリーズへと展開する。

続いて70年代の幾何学的作品とミニマル・アートとの関係、あるいはマティスなどの巨匠の作品や自分の過去の作品の引用の例、また70年代後半のシュールレアリスティックなどの作品、あるいは「だまし絵」的な手法の連作などを紹介する。これらの立体派、未来派、表現主義などからの引用の手法やその理由などを述べつつ、90年代の室内のシリーズやごく最近の作例へと話が及ぶ。

このように60年代から現在に至る50点余りのスライドを通して、私が「作品の中で」伝えようとした意味についてお話しすることにより、私の作品における思想の推移や各作品の関連についてご理解いただけると思う。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

絵画と漫画-ポップ・アートの諸問題

Painting and Comic-strip - Some Problems of Pop-art

日時
1995年11月12日(日) 13:20-17:15
場所
国立京都国際会館
企画・司会
木村 重信 精神科学・表現芸術部門専門委員会委員長、国立国際美術館館長

プログラム

13:20
開会挨拶 木村 重信
挨拶 稲盛 豊実 稲盛財団常務理事
挨拶 高階 秀爾 精神科学・表現芸術部門審査委員会委員長、国立西洋美術館館長
13:30
受賞者紹介 木村 重信
13:40
記念講演 ロイ・リキテンスタイン 精神科学・表現芸術部門受賞者
「美術について」
14:40
ビデオ上映 「リキテンスタインの世界」
15:40
16:00
フォーラム 「絵画と漫画-ポップ・アートと諸問題」
司会:木村 重信

パネリスト:
ロイ・リキテンスタイン
高階 秀爾
本江 邦夫 精神科学・表現芸術部門専門委員会委員、東京国立近代美術館美術課長
矢口 國夫 東京都現代美術館学芸部長
17:15
閉会挨拶 木村 重信
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