Paul Christian Lauterbur

第10回(1994)受賞

先端技術部門

バイオテクノロジー及びメディカルテクノロジー

ポール・クリスチャン・ラウターバー

/  化学者

1929 - 2007

イリノイ大学バイオメディカルMR研究所 所長

記念講演会

考え、実行し、信ずること

1994年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

磁気共鳴イメージング -その応用と展望-

1994年

11 /12

13:00~17:30

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

臨床医学に大きな恩恵を与えているMRIの基本原理の提案及びその発展への多大な貢献

現在、医学領域において、画像診断法として広く行われているMRI(磁気共鳴イメージング)の基本原理を最初に提案し、実験的にその可能性を確かめ、MRIの進歩発展の基礎を創るとともに、多くの関連技術を開発し、臨床医学に多大な貢献をした。

[受賞当時の対象分野: バイオテクノロジー(メディカルテクノロジーも含む)]

贈賞理由

第10回京都賞は先端技術部門において「バイオテクノロジー(メディカルテクノロジーも含む)」の分野で、ポール・クリスチャン・ラウターバー博士に贈られる。

ラウターバー博士は、現在、医学領域において、画像診断法として広く行われているMRI(磁気共鳴イメージング)の基本原理を最初に提案し、実験的にその可能性を確かめ、MRIの進歩発展の基礎を創るとともに、多くの関連技術を開発し、今日の臨床医学の発展に多大な貢献をした。

ラウターバー博士は、傾斜磁場を使いNMR信号に位置情報をエンコードする技術と、CTで実用化した投影データから断層面データを構成する、画像再構成アルゴリズム(投影復元法)を用いたNMRズーグマトグラフィーを着想した。このアイデアを“Image formation by induced local interactons”と題する論文にファントム実験結果をつけて、1973年Nature誌に投稿し、NMR信号の空間分布を測定して画像化するという画期的な手法を、世界で初めて発表した。博士のこの発表が端緒となり、様々な手法が提案され、1982年頃から臨床応用が開始され、今日のMRI技術開発の急速な隆盛を見るに至った。

MRIは、無侵襲性で、骨の影響を受けることがなく、軟部組織のコントラストにも優れている。体の軟部組織の情報を本質的に三次元情報として取得しているので、様々な測定モードを用いることにより、癌の発見はもちろんのこと、脳の活動の様子など血液の変化や化学的変化を伴うものの画像化にも適しており、現在目覚ましい進歩をとげている脳機能解明の研究分野にとって、ますます重要な役割を担うことは確実である。

ラウターバー博士はその後も、選択励起法、化学シフトイメージング、流速の測定、常磁性金属塩による造影、三次元MRI、サーフェイスコイルイメージングなどに関する論文を発表してMRIの発展に貢献し続けてきた。最近ではNMR顕微鏡の改善やNMRによる脳の研究を行っており、またMRIの提案以前には13Cスペクトロスコピーを初めて行い、これに関する数多くの実績もあげている。

今日MRIは、20年前の博士の基本原理に基づき、その後の多くの要素技術の発明と多くの技術者の努力によってなお急速に発展を続けている。

ラウターバー博士のMRIを通じた医学に対する貢献は絶大であり、ラウターバー博士は第10回京都賞先端技術部門の受賞者として最も相応しい。

プロフィール

略歴
1929年
オハイオ州、シドニーに生まれる
1951年
クリーブランド、ケース工科大学化学科卒業
1962年
ペンシルベニア、ピッツバーグ大学博士号取得
1969年
ニューヨーク大学ストーニィー・ブルック校化学・放射線学教授
1985年
イリノイ大学 シカゴ医学校教授
1985年
イリノイ大学 アーバーナ・シャンペーン医学校バイオメディカルMR研究所所長
主な受賞・栄誉
1982年
ゴールド・メダル(磁気共鳴医学会)
1984年
ラスカー賞(臨床部門)
1986年
AAMC賞
1987年
ゴールド・メダル(北米放射線学会)
1992年
国際磁気共鳴学会賞
2003年
ノーベル生理学・医学賞
主な論文・著書
1973年
Image Formation by Induced Local Interactions. Nature.242., 1973.
1975年
Zeugmatographic High Resolution Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy. Images of Chemical Inhomogeneity within Microscopic Objects. (with Kramer, D.M., House, Jr., W.V., and Chen, C. -N.) Am. Chem. Soc. 97., 1975.
1984年
Theory and Simulation of NMR Spectroscopic Imaging and Field Plotting by Projection Reconstruction Involving an Intrinsic Frequency Dimension. (with Levin, D.N. and Marr, R.B.) J. Magn. Reson. 59., 1984.
1993年
Nuclear Magnetic Resonance (NMR) Imaging of Iron Oxide-Labelled Neural Transplants. (with Hawrylak, N. and others) Experimental Neurology.121., 1993.
1993年
Three-Dimensional NMR Microscopy of Rat Spleen and Liver. (with Zhou, X. and others) Mag. Res. in Med. 30., 1993.

プロフィールは受賞時のものです