1987年先端技術部門材料科学
モーリス・コーエン 写真

モーリス・コーエン
(Morris Cohen)

  • アメリカ / 1911年-2005年
  • 金属材料学者
  • マサチューセッツ工科大学 名誉教授

金属の相変態や諸性質に関する幅広い基礎的知見を与え、新しい材料の創出に根幹的貢献

材料における相変態や組織と性質の関連性に幅広い基礎的新知見をもたらし、今日実用化されているすべての超強力鋼や注目を集めている形状記憶合金、セラミック系材料などの開発に草創期から指導的役割を果たしてきた金属工学の第一人者である。

プロフィール

略歴

1911年
アメリカ、マサチューセッツ州チェルシーに生まれる
1933年
マサチューセッツ工科大学卒業
1936年
マサチューセッツ工科大学冶金学博士号取得
1937年
マサチューセッツ工科大学冶金学 助教授
1941年
マサチューセッツ工科大学冶金学 準教授
1946年
マサチューセッツ工科大学物理冶金学 教授
1962年
マサチューセッツ工科大学材料工学フォード教授職
1975年
マサチューセッツ工科大学研究所 教授
1982年
マサチューセッツ工科大学研究所 名誉教授

主な受賞と栄誉

1968年
アメリカ金属学会金賞
1970年
日本金属学会金賞
1971年
フランス金属学会ピエール・シュブナール賞
1977年
アメリカ合衆国科学賞大統領賞
1986年
アメリカ鉱業・冶金・石油技術者協会冶金学会指導者賞

主な論文

1962年

「鋼の強化」

1970年

「塑性変形中の自己拡散」

1978年

「材料と人類」

1982年

「マルテンサイト変態の古典的ならびに非古典的機構」(G. B. オルソンとの共著)

1983年

「急冷凝固プロセスと組織一性質関係の制御」

贈賞理由

金属の相変態や諸性質に関する幅広い基礎的知見を与え、新しい材料の創出に根幹的貢献

モーリス・コーエン博士は、1973年マサチューセッツ工科大学の助教授に就任し、専門活動を開始した。博士はその生涯を材料科学・工学、特に物理金属学の分野における教育と研究に捧げてきた。そして今、博士は材料科学・工学分野での優れた学術的指導者の立場にある。

博士の研究成果は、材料における相変態や組織との性質の関連性に、幅広い基礎的新知見をもたらした。博士の業績は次に示す分野で輝かしき展望を開拓した。すなわち、マルテンサイトならびにベイナイト変態の機構と動力学、超強力鋼の焼き戻し現象と強化機構、固体合金の熱力学、合金の時効硬化現象、変態加速拡散、不均質材料の脆性破壊機構、ひずみ硬化と動的回復の機構、ひずみ誘起変態と変態塑性、微量元素を添加した鋼の結晶微粒細化機構、および結晶合金の急速凝固等である。博士の研究成果は、今日実用化されたすべての超強力鋼の基盤となったばかりでなく、金属系材料、セラミック系材料、生体系材料における形状記憶現象や変態塑性などの先端材料科学分野にも深くかかわるものである。

コーエン博士は、そのたゆまざる活動を通じ、材料科学・工学の分野で2世代にもわたる学生や共同研究者に励ましを与えてきた。さらに、博士は国家プロジェクトはもちろんのこと、国際プログラムにも広く貢献している。博士はすでに講義や助言をするために多くの国を訪問しており、博士への評価が高いことは20を超す国際賞の受賞、名誉学位、客員教授称号等からもうかがい知ることができる。博士の人間的な優しさ、深い知性、溢れる活力が今日の指導的立場へと博士を導いたのである。

研究者・教育者としてのコーエン博士の活動はなおも遙かなる完成へ向けて胎動し続けている。

記念講演

記念講演要旨

金属学と材料科学・工学の進歩

約10万年前に人類が出現して以来、材料というものは、人間存在のなかにますます浸透してきています。文化と材料との結びつきは強まり、現在約 150億トンにのぼる材料が毎年、自然から採掘され、収穫され、引き上げられて、無数の建物や機械や装置や、社会的目的に役立つものに使用されています。 しかし、このような世界的な事業が巨大で重要なものであり、一かたまりの地球規模の材料と呼ばれることもよくあるにもかかわらず、材料の分野が知的な意味 で注目されるようになったのは過去30年さかのぼるにすぎません。事実上注目されるようになったのは、金属学の中心テーマ(つまり、金属的状態の加工処 理、構造、特性、性能の相互関係)を、手に入れやすく、社会に役立つ材料という異なった視点にもっていったからです。言い換えれば、金属学という学問は、 材料科学・工学に、新しく、より広い分野の優れた模範を示し、今や欠くことのできない一部門となっているのです。

しかしながら、材料科学・工学では役に立ついくつかの学科は、まとまった知識分野として充分に役立つほどお互いになじんではいません。だから、材 料科学・工学というものはいまだ活気のある変遷段階にあり、多くの学科が含まれていると見なされるべきでしょう。材料科学・工学がほんとうに一貫した一つ の学問に発展できるのかどうか。社会が判断するには時間が、たぶん1世代か2世代ぐらいかかるでしょう。注目されようと奮闘しているほかの知識分野とも競 わなくてはならないでしょう。そして、社会の決定的な判断は二つの微妙な基準によって下されるように思えます。材料科学・工学が、人類が自然をより徹底的 に理解することをいかにうまく助けるか、そして、社会が自然をより賢く利用することをいかにうまく助けられるか、という二点です。

概念的には金属学と材料科学・工学には多くの共通点があります。双方とも、その科学的内容と工学的内容との間に明確な区別はなく、また、どちらも 悠々と持続させることによって特別な力を蓄えます。両方とも、科学的知識と経験的知識とがピッタリ合うときに、もっとも大きく進歩します。この相互作用に おいて、新しい理論を考えるよりも新しい加工処理や実験をして前進することのほうが、いまだによくあるです。ゆえに、材料科学・工学では、金属学と同様 に、材料の反応は最初の法則から予想されたものとはかなり異なった、加工処理と構造、構造と特性、特性と性能との間に見出される共働の相互作用が証明され たりするのです。最近の進んだ材料の開発例が、これからの相互関係の作用をうまく説明してくれます。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

新素材の開発を目指して

Research and Development for Advanced Materials

日時
1987年11月12日(木)10:30-17:00
場所
国立京都国際会館

プログラム

司会 和泉修 先端技術部門専門委員会委員 東北大学金属材料研究所教授
13:30
挨拶 稲盛和夫 稲盛財団理事長
開会の辞 神原周 先端技術部門専門委員会委員長 東京工業大学名誉教授
13:45
講演 モーリス・コーエン 先端技術部門受賞者
「材料科学・工学におけるマルテンサイト変態」
14:45
講演 田村今男 京都大学名誉教授
「鉄マルテンサイトの形態と諸性質」
15:15
休憩
15:30
講演 平野賢一 東北大学工学部材料物性学科教授
「熱処理に伴う組織変化と性質」
16:00
講演 新宮秀夫 京都大学工学部金属加工学教室教授
「準安定平衡の利用による新素材開発の展望」
16:30
講演 須藤一 東北大学工学部材料加工学科教授
「ジルコニア・アロイにおける相変態」
17:00
閉会
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