2015年基礎科学部門地球科学・宇宙科学
ミシェル・マイヨール 写真

ミシェル・マイヨール
(Michel Mayor)

  • スイス / 1942年1月12日
  • 宇宙物理学者
  • ジュネーブ大学 名誉教授

太陽系外の惑星の発見による新たな宇宙像の展開への多大な貢献

太陽系以外の惑星を見出すという天文学の長年の基本的問題に対して、分光装置の開発などの一連の観測技術の向上により、初めて太陽型恒星のまわりを公転する系外惑星を発見することで答えを与えるとともに、系外惑星の多様な姿を明らかにして新たな研究分野の開拓に大きく貢献した。

プロフィール

略歴

1942年
スイス ローザンヌ生まれ
1971年
ジュネーブ大学 博士号(天文学)
1971年
ジュネーブ大学 研究員
1984年
ジュネーブ大学 准教授
1988年
ジュネーブ大学 教授
1998年
ジュネーブ大学 ジュネーブ天文台 所長
2007年
ジュネーブ大学 名誉教授

主な受賞と栄誉

1998年
マルセル・ブノワ賞
1998年
ジュール・ジャンサン賞
2000年
バルザン賞
2004年
アルバート·アインシュタイン·メダル
2005年
ショウ賞天文学部門
2010年
カール·シュヴァルツシルト·メダル
2010年
ヴィクトル·アンバルツミアン国際賞
2015年
ゴールドメダル、王立天文学会
会員:
欧州科学アカデミー、王立天文学会、フランス科学アカデミー、 米国科学アカデミー、米国芸術科学アカデミー

主な論文

1995年
A Jupiter-Mass Companion to a Solar-Type Star (M. Mayor and D. Queloz), Nature 378: 355−359, 1995.
1996年
ELODIE: A Spectrograph for Accurate Radial Velocity Measurements (A. Baranne et al.), Astronomy & Astrophysics Supplement 119: 373−390, 1996.
2000年
Detection of Planetary Transits across a Sun-like Star (D. Charbonneau et al.), The Astrophysical Journal 529: L45−L48, 2000.
2000年
Detection of a Spectroscopic Transit by the Planet Orbiting the Star HD209458 (D. Queloz et al.) , Astronomy & Astrophysics 359: L13−L17, 2000.
2005年
The HARPS Search for Southern Extra-Solar Planets. VI. A Neptune-Mass Planet around the Nearby M dwarf Gl 581 (X. Bonfils et al.), Astronomy & Astrophysics 443: L15−L18, 2005.
2006年
An Extrasolar Planetary System with Three Neptune-Mass Planets (C. Lovis et al.), Nature 441: 305−309, 2006.
2009年
The HARPS Search for Southern Extra-Solar Planets. XIII. A Planetary System with 3 Super-Earths (4.2, 6.9, & 9.2 M⊕) (M. Mayor et al.), Astronomy & Astrophysics 493: 639−644, 2009.
贈賞理由

太陽系外の惑星の発見による新たな宇宙像の展開への多大な貢献

長年人類が問い続けてきた「我々の太陽系以外に惑星は存在するのか」という根源的な疑問に関して、近年、強大な進展がある。この知の地平を拓く進展の口火を切ったのがミシェル・マイヨール博士による太陽系外の惑星の発見である。観測的に明確な解答を与えたこの発見は過去20年間の天文学においても特筆すべきものであり、その後の数多くの太陽系外の惑星の発見を引き出しており、さらに今後は惑星科学や宇宙生物学などへの実証的な研究にも展望を与えている。その貢献は京都賞授賞にふさわしい業績である。

マイヨール博士は、一連の高分散分光装置の開発により、太陽に似た星の周りの小質量伴星の分光探査を精力的に続けてきた。その過程で、当時大学院生であったディディエ・ケロー博士とともに、ペガスス座51番星の周りを公転している惑星51 Pegasi bを1995年に発見した。それは、木星程度の質量でありながらわずか4.2日で公転しているという、太陽系の姿や惑星形成理論からは全く予想できない驚くべきものであった。

彼らの発見は、ジェフリー・マーシー博士による独立な観測によって確認され、系外惑星という全く新たな研究分野が誕生した。引き続き他の観測でも同じような短周期巨大ガス惑星が多く発見され、ホットジュピターと名付けられた。さらに、ほぼ円軌道の太陽系惑星とは異なり、大きく歪んだ楕円軌道をもつ惑星発見など、太陽系とは大きく異なる系外惑星の多様性が明らかになった。マイヨール博士はその後も高分散分光装置の改良を続け、地球の質量の数倍程度のスーパーアースの発見にも貢献している。

現在ではマイヨール博士が用いた視線速度法以外に、公転する惑星が恒星の一部を隠すことによる周期的恒星減光を用いたトランジット観測法など、複数の観測手法によって数多くの惑星が発見され、さらにはその特徴を統計的に議論できるまでの急速な進展をみせている。特に観測衛星ケプラーは トランジット観測法により数千個の候補を発見している。また、補償光学技術の開発により、すばる望遠鏡を用いた日本のグループをはじめとして、10年前にはほとんど不可能であった惑星の直接撮像にもすでに成功しており、今後の大きな発展が期待されている。

近い将来、巨大望遠鏡による惑星自体の精密観測を通じて、地球によく似た「第二の地球」の発見や、水が液体で存在するなど生命の発生の可能性があるハビタブルな惑星の確認、さらには、大気観測による生命兆候の確認など、新たな科学的チャレンジが続くと考えられる。このように系外惑星の研究は21世紀の天文学、惑星科学、宇宙生物学の主要なテーマとして掲げられるようになっており、マイヨール博士によって切り拓かれた研究の地平は確実に拡大しているといえる。

以上の理由によって、ミシェル・マイヨール博士に基礎科学部門における第31回(2015)京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

太陽系外惑星 ―人類古来の夢から現代科学の対象へ

宇宙は無限である。(中略)原子の数が無限なだけでなく、宇宙に存在する世界の数もまた無限である。我々のものに似た世界が数知れず存在し、それと異なる世界も無数にあるのだ。(エピクロス、紀元前341年-紀元前270年)

「世界は複数存在するのか」という問いは、2000年の間、哲学の世界で論じられるものでした。人類の古くからの夢ともいえるこの問いを、観測装置の進歩が現実の問いに変え、宇宙物理学の中でも非常に活発な学問分野を生んだのです。この科学的探究の一部を担える私たち研究者は、非常に恵まれていると思います。

研究は人によってなされるものです。講演会では、私が太陽系外惑星51 Pegasi bを発見するまでの道のりと、研究仲間の極めて重要な貢献についてお話しします。装置開発や発見というものは、一人の力で成し得るものではないのです。

過去20年間の研究成果を皆様と共有し、現在および今後の研究について論じることができれば幸甚です。

【関連情報】
記念講演録全文(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

惑星系形成メカニズムと第二の地球探査

Formations Mechanisms of Planetary Systems and the Quest for Earth-Twins

日時
2015年11月12日(木)11:00~17:15
場所
国立京都国際会館
企画者・司会
観山 正見 [広島大学 特任教授]
主催
公益財団法人 稲盛財団
後援
京都府、京都市、NHK
協賛
日本天文学会、日本物理学会、日本惑星科学会(五十音順)

プログラム

11:00
開会挨拶 佐藤 文隆 [京都大学 名誉教授]
受賞者紹介 観山 正見
11:10
受賞者講演 ミシェル・マイヨール [基礎科学部門 受賞者]
「ドップラー分光法:地球型惑星発見への道」
12:00
休 憩
13:00
講 演 佐藤 文衛 [東京工業大学 准教授]
「岡山、すばるにおける太陽系外惑星探索」
13:40
講 演 田村 元秀 [東京大学 教授]
「すばる望遠鏡による系外惑星と原始惑星系円盤の観測」
14:20
講 演 小久保 英一郎 [国立天文台 教授]
「惑星を作る実験」
15:00
休 憩
15:15
講 演 井田 茂 [東京工業大学 教授]
「系外惑星の多様性と遍在性の起源」
15:55
講 演 長谷川 哲夫 [国立天文台 チリ観測所 所長]
「惑星系形成に関するALMAの新発見」
16:35
講 演 須藤 靖 [東京大学 教授]
「ペイル・ブルー・ドットを超えて」
17:15
閉 会
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