1999年思想・芸術部門映画・演劇
モーリス・ベジャール 写真

モーリス・ベジャール
(Maurice Béjart)

  • フランス / 1927年-2007年
  • コリオグラファー(振付家)
  • ベジャール・バレエ・ローザンヌ 主宰

『春の祭典』『ボレロ』などの作品を通して、舞踊の芸術表現としての地位を回復し、世界に大きな影響を与えた振付家

舞台芸術としてのバレエを、思想の表現しうる器にまで高めると同時に、長い間見失われていた舞踊の始原的な力を一挙に回復せしめ、舞踊のみならず、他の芸術はもとより、文学、思想の世界にまで影響を及ぼしている20世紀を代表するコリオグラファー(振付家)である。
[受賞当時の部門: 精神科学・表現芸術部門]

プロフィール

略歴

1927年
フランス、マルセイユに生まれる
1941年
14才でバレエのレッスンを始める
1945年
マルセイユで舞踊家としてデビュー
1954年
パリで《エトワール・バレエ団》を創設
1955年
『孤独な男のためのシンフォニー』を振り付け、振付師として本格的なスタートを切る
1959年
『春の祭典』を創作、世界的振付家としての評価を決定的なものとする
1960年
ブリュッセルに《20世紀バレエ団》を創設
1986年
仮名手本忠臣蔵をもとに『ザ・カブキ』を東京で上演
1987年
本拠地をローザンヌに移し、《ベジャール・バレエ・ローザンヌ》を設立

主な受賞と栄誉

1967年
文化芸術勲章シュバリエ章(フランス)
1974年
エラスム賞
1986年
勲三等旭日中綬章(日本)
1988年
王冠勲章 グラン・ドォフィシェ章(ベルギー)
1993年
世界文化賞(日本)
1994年
フランス学士院芸術アカデミー会員

主な作品

1955年

『孤独な男のためのシンフォニー』(音楽:アンリ他)

1959年

『春の祭典』(音楽:ストラヴィンスキー)

1961年

『ボレロ』(音楽:ラヴェル)

1964年

『第九交響曲』(音楽:ベートヴェン)

1971年

『さすらう若者の歌』(音楽:マーラー)

『ニジンスキー・神の道化』(音楽:チャイコフスキー他)

1986年

『ザ・カブキ』(音楽:黛 敏郎)

1990年

『ニーベルングの指輪』(音楽:ワーグナー)

1993年

『M』(音楽:黛 敏郎他)

贈賞理由

『春の祭典』『ボレロ』などの作品を通して、舞踊の芸術表現としての地位を回復し、世界に大きな影響を与えた振付家

ベジャール氏は、舞台芸術としてのバレエを、思想表現の器にまで高めると同時に、長い間見失われていた舞踊の始原的な力を一挙に回復せしめ、舞踊のみならず、他の芸術はもとより、文学、思想の世界にまで影響を及ぼしてきた。

ベジャール氏は、1955年に実存主義の雰囲気を色濃く漂わせる「孤独な男のためのシンフォニー」を振り付け、コリオグラファーとして本格的なスタートをきり、1959年初演の「春の祭典」で一躍世界の注目を集めた。春祭に捧げられる犠牲の乙女の物語という原作からは遠く離れ、レオタードを身につけた全裸を思わせる男女同数の群舞が豊穣な性の力を誇示するその振付けは、真に革新的なものであり、観客に大きな衝撃を与えたのである。同時に、それは舞踊が本来持っていた根源的な力を改めて告げ知らせることでもあった。ベジャール氏は、シンメトリーを捨て、輪を、円環を、その原初的な力を迷うところなく選び取り、それまでの舞踊の額縁舞台という制約を突破することにより、当時世界の主流であったクラッシク・バレエの流れを大きく変えたのである。この「春の祭典」が、以後、世界の舞踊界に与えた影響は計り知れないものがある。

その後も、ベジャール氏は「第九交響曲」「ボレロ」等、多くの作品を発表し、舞踊の始原的な力を人間の五感に直に訴えて人々を魅了してきた。中でも、名作「ボレロ」が、映画「愛と哀しみのボレロ」(監督:クロ-ド・ルルーシュ)に感動的なクライマックスとして収録されていることは有名であるが、氏の作品が舞踊を一般 の人々にまで一層親しみやすいものにしたことは紛れもない事実である。また、氏は舞台芸術のための学校<ムードラ>を設立して後進の育成にも力を注いでおり、ここから現在活躍中の多くのダンサー、コリオグラファーが巣立っている。

ベジャール氏により、舞踊は思索の時間となり、舞台は思想の空間になったのである。氏の思想の核心に潜むのは愛であり、人種や民族の壁を超えて結び合おうとする姿勢である。舞踊を中心に、人間の生命をより深く考え、より強く感じようとする新しい精神の潮流の中にあるベジャール氏は、そのまま21世紀を切り開く芸術家である。よって、ベジャール氏に、精神科学・表現芸術部門における1999年京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

舞踊と文明

踊るということは、何よりも伝えること、相手と結びつき、一体化して、自分の存在の深淵から語りかけることです。舞踊とは結合です。それは人間と人間との結合であり、人間と宇宙との結合であり、人間と神との結合なのです。口で語られる言葉は、幻想の領域を脱することはできません。言葉は、私たちがそれを理解したと思っても、私たちを欺くようなイメージを隠しもっているために、私たちをバベルの塔のように、どうどうめぐりの意味論の迷路へと誘い込んでしまうのです。人間は、長く話し合えば話し合うほど、完全に合意するより、争いになってしまうことの方が多いのです。

また、踊るということは、動物の言葉を話し、石ころとコミュニケートし、海の唄う歌や、そよぐ風を理解し、星と共に夜空を探索することであり、存在の極致に近づくことでもあります。踊ることは、私たちの人間という貧しい条件を完全に超越して、宇宙の深遠な営みに全身で参加することなのです。

どのような文明でも、その黎明期において、人間は裸足で地面を怒り狂ったように踏みつけていました。そこからリズムや音や空間や神に憑かれたような状態が生まれました。そしてそれが目に見えない力と結合し、舞踊が生まれたのです。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

ベジャールによるベジャール

Béjart by Béjart

日時
1999年11月12日 13:20~17:30
場所
国立京都国際会館
出演
モーリス・ベジャール 精神科学・表現芸術部門受賞者
企画・司会
三浦 雅士 専門委員会委員, 評論家

プログラム

13:20
開会
挨拶 稲盛 豊実 稲盛財団常務理事
高階 秀爾 審査委員会委員長、国立西洋美術館館長
第一部 「ベジャール、ダンサーを語る」
13:30
受賞者紹介 三浦 雅士
13:45
映像 「ル・ダンスール」
1968年、ベジャール監督によるドキュメント映画。
1992年、45歳で亡くなった類い稀なダンサー、ジョルジュ・ドンの若き姿を映像にとどめている。
14:45
ベジャール、ダンサーを語る
15:00
休憩
第二部 「ベジャール、自作を語る」
15:15
映像 「バレエ・フォー・ライフ」
1997年初演のバレエ作品の映像。「フレディ・マーキュリーとジョルジュ・ドンに触発されて作ったこのバレエは、若くして逝ってしまった者たちについての作品なのだ」とベジャールは語っている。
16:45
ベジャール、自作を語る
17:00
質疑応答
17:30
閉会
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