Marcian Edward Hoff, Jr.

第13回(1997)受賞

先端技術部門

エレクトロニクス

マーシャン・エドワード・ホフJr.

/  電子技術者

1937 -

FTIテクリコン社 チーフテクノロジスト

記念講演会

21世紀のコンピュータ技術について

1997年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

マイクロプロセッサの誕生からその未来へ

1997年

11 /12

10:00~17:30

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

世界初のマイクロプロセッサの開発

4氏のグループは世界初のマイクロプロセッサ4004を開発し、広範な機能を備えたマイクロコンピュータが少数の半導体チップで構成できることを示すことにより、マイクロプロセッサを基盤として産業および民生機器のエレクトロニクス化の道を拓き、新産業の創成と現代社会に計り知れない貢献をした。

贈賞理由

フェデリコ・ファジン博士、マーシャン・エドワード・ホフJr.博士、スタンレー・メイザー氏、嶋正利博士達4人のグループは、共同で1971年に世界最初の汎用マイクロプロセッサ4004を開発し、現代社会に絶大なインパクトを与え、世界の産業構造と社会構造に大きな変革をもたらした。

4氏が開発したマイクロプロセッサ4004は、3mm×4mmのシリコンチップ一枚の上に2300個のトランジスタを集積し、その能力は初期のコンピュータの時代には、一つの部屋を占有する程の大きさであった中央処理装置(CPU)の機能に匹敵するほどの革新的なものであった。

このマイクロプロセッサは、データや命令を収納するメモリーおよび入出力用のレジスタなどと組み合わせることにより、マイクロコンピュータというそれまでなかったシステムを可能とし、その構成要素やプログラムを変えることによって、数字・文字・画像の処理やシステムの制御など、多様な用途に効率よく対応するという全く新しい技術の流れを作り出す役割を果たした。トランジスタや集積回路の発明によってエレクトロニクスは顕著な技術革新をもたらしてきたが、マイクロプロセッサ4004の出現によってプログラムが可能になる電子部品の時代が始まり、さらに飛躍的な発展をすることとなったのである。この結果、システムを構築する技術もハードウエアとソフトウエアを有機的に活用する方式に移行し、いわゆる第二次産業革命の引き金となった。このマイクロプロセッサ4004の登場以降、今日まで約四半世紀が経過し、この間データ幅は4ビットから8ビットへ、さらに16ビットから32ビット、64ビットへと発展、その計算能力と処理能力は驚異的な向上を見せている。マイクロプロセッサ4004には、この発展を遂げつつある技術の基本概念が全て含まれていたといえる。

今日、マイクロプロセッサはパーソナルコンピュータをはじめとして、家電製品から自動車、通信機器、医療機器に組み込まれ、我々の日常生活の隅々まで浸透しており、さらに工作機械などの産業用機器にも幅広く普及している。およそ人間の発明したもので、マイクロプロセッサの開発と発展ほど短期間のうちに大きな影響を与えたものは他に見あたらない。こうした進展は、マイクロプロセッサ4004の誕生が契機となって創り出されたものであり、日米伊4名の技術者の成果なくしてもたらし得なかったものである。よって、ファジン博士、ホフ博士、メイザー氏、及び嶋博士に先端技術部門の第13回京都賞を贈呈する。

プロフィール

略歴
1937年
アメリカ、ニューヨークに生まれる
1958年
ニューヨーク工科大学卒業
1962年
博士号(電子工学)取得、スタンフォード大学
1968年
インテル社、応用研究マネージャー 4004マイクロプロセッサの開発に参画
1983年
アターリ社、副社長
1985年
技術コンサルタント開業
1990年
FTIテクリコン社チーフ・テクノロジスト
主な受賞・栄誉
1979年
スチュアート・バレンタインメダル、フランクリン研究所
1980年
クレード・ブラネッティ賞、IEEE
1982年
IEEEフェロー
1984年
100年祭メダル、IEEE
1996年
PCマガジン優秀技術賞、ファジン、メイザー、嶋と共同受賞 秋のコムデックス、アメリカ
主な論文・著書
1970年
"Impact of LSI on Future Minicomputers" IEEE
1972年
"The New LSI Components" Compcon
1972年
"The One-Chip CPU, Computer or Component" WESCON
1972年
"The MCS-4 An LSI Microcomputer System" with Faggin, F., Mazor, S., Shima, M. and other, IEEE
1974年
3,810,127 Programmable Circuit and Method of Programming
1974年
3,821,715 Memory System for Multi-Chip Digital Computer with Faggin, F. and Mazor, S.
1979年
"Single-Chip N-MOS Microcomputer Processes Signals in Rial Time", Electronics
1981年
"A History of Microprocessor Development at Intel" IEEE Micro
1996年
"The History of the 4004" with Faggin, F., Mazor, S. and Shima, M., IEEE Micro

プロフィールは受賞時のものです