1997年先端技術部門エレクトロニクス
マーシャン・エドワード・ホフJr.  写真

マーシャン・エドワード・ホフJr.
(Marcian Edward Hoff, Jr.)

  • アメリカ / 1937年10月28日
  • 電子技術者
  • FTIテクリコン社 チーフテクノロジスト

世界初のマイクロプロセッサの開発

4氏のグループは世界初のマイクロプロセッサ4004を開発し、広範な機能を備えたマイクロコンピュータが少数の半導体チップで構成できることを示すことにより、マイクロプロセッサを基盤として産業および民生機器のエレクトロニクス化の道を拓き、新産業の創成と現代社会に計り知れない貢献をした。

プロフィール

略歴

1937年
アメリカ、ニューヨークに生まれる
1958年
ニューヨーク工科大学卒業
1962年
博士号(電子工学)取得、スタンフォード大学
1968年
インテル社、応用研究マネージャー 4004マイクロプロセッサの開発に参画
1983年
アターリ社、副社長
1985年
技術コンサルタント開業
1990年
FTIテクリコン社チーフ・テクノロジスト

主な受賞と栄誉

1979年
スチュアート・バレンタインメダル、フランクリン研究所
1980年
クレード・ブラネッティ賞、IEEE
1982年
IEEEフェロー
1984年
100年祭メダル、IEEE
1996年
PCマガジン優秀技術賞、ファジン、メイザー、嶋と共同受賞 秋のコムデックス、アメリカ

主な論文・著書

1970年

“Impact of LSI on Future Minicomputers” IEEE

1972年

“The New LSI Components” Compcon

1972年

“The One-Chip CPU, Computer or Component” WESCON

1972年

“The MCS-4 An LSI Microcomputer System” with Faggin, F., Mazor, S., Shima, M. and other, IEEE

1974年

3,810,127 Programmable Circuit and Method of Programming

1974年

3,821,715 Memory System for Multi-Chip Digital Computer with Faggin, F. and Mazor, S.

1979年

“Single-Chip N-MOS Microcomputer Processes Signals in Rial Time”, Electronics

1981年

“A History of Microprocessor Development at Intel” IEEE Micro

1996年

“The History of the 4004” with Faggin, F., Mazor, S. and Shima, M., IEEE Micro

贈賞理由

世界初のマイクロプロセッサの開発

フェデリコ・ファジン博士、マーシャン・エドワード・ホフJr.博士、スタンレー・メイザー氏、嶋正利博士達4人のグループは、共同で1971年に世界最初の汎用マイクロプロセッサ4004を開発し、現代社会に絶大なインパクトを与え、世界の産業構造と社会構造に大きな変革をもたらした。

4氏が開発したマイクロプロセッサ4004は、3mm×4mmのシリコンチップ一枚の上に2300個のトランジスタを集積し、その能力は初期のコンピュータの時代には、一つの部屋を占有する程の大きさであった中央処理装置(CPU)の機能に匹敵するほどの革新的なものであった。

このマイクロプロセッサは、データや命令を収納するメモリーおよび入出力用のレジスタなどと組み合わせることにより、マイクロコンピュータというそれまでなかったシステムを可能とし、その構成要素やプログラムを変えることによって、数字・文字・画像の処理やシステムの制御など、多様な用途に効率よく対応するという全く新しい技術の流れを作り出す役割を果たした。トランジスタや集積回路の発明によってエレクトロニクスは顕著な技術革新をもたらしてきたが、マイクロプロセッサ4004の出現によってプログラムが可能になる電子部品の時代が始まり、さらに飛躍的な発展をすることとなったのである。この結果、システムを構築する技術もハードウエアとソフトウエアを有機的に活用する方式に移行し、いわゆる第二次産業革命の引き金となった。このマイクロプロセッサ4004の登場以降、今日まで約四半世紀が経過し、この間データ幅は4ビットから8ビットへ、さらに16ビットから32ビット、64ビットへと発展、その計算能力と処理能力は驚異的な向上を見せている。マイクロプロセッサ4004には、この発展を遂げつつある技術の基本概念が全て含まれていたといえる。

今日、マイクロプロセッサはパーソナルコンピュータをはじめとして、家電製品から自動車、通信機器、医療機器に組み込まれ、我々の日常生活の隅々まで浸透しており、さらに工作機械などの産業用機器にも幅広く普及している。およそ人間の発明したもので、マイクロプロセッサの開発と発展ほど短期間のうちに大きな影響を与えたものは他に見あたらない。こうした進展は、マイクロプロセッサ4004の誕生が契機となって創り出されたものであり、日米伊4名の技術者の成果なくしてもたらし得なかったものである。よって、ファジン博士、ホフ博士、メイザー氏、及び嶋博士に先端技術部門の第13回京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

21世紀のコンピュータ技術について

20世紀は技術が長足の進歩を遂げた時代であるとともに、人口が爆発的に増加した世紀でもありました。人口の増加によって地球上の限られた資源に巨大な負荷がかかるようになりました。技術の進歩のマイナス面ばかりを見て、昔の単純な生活様式に戻ろうと言う人もいますが、そのような単純な生活様式は効率が悪く、逆戻りは最早、不可能です。私たちが唯一出来ることは、これ以上の人口増加を抑制し、地球上の資源をもっと有効に利用するために技術を活用することです。

今世紀に開発された機器の中で最もパワフルなツールはデジタル・コンピュータでしょう。デジタル・コンピュータは様々な技術分野に応用可能です。マイクロプロセッサの開発によって、デジタル・コンピュータのコストが下がり、また、様々な装置の中に演算機能を組み込むことが可能になりました。

マイクロプロセッサによってパソコンも登場しました。インターネットのようなコンピュータ・ネットワークにアクセス出来ることで、一般の人々のパソコンへの関心が高まっています。しかしながら、インターネット以外にもマイクロプロセッサには多くの用途があることを忘れてはいけません。組み込み制御用マイクロプロセッサを多くの機器、自動車、その他のシステムに利用することによって、地球上の限られた資源を有効に利用することが出来ます。

今後もコンピュータ研究を続けることで、私たちが使用する装置に様々な新しい機能を加えることが可能です。例えば、自動通訳翻訳装置が出来れば、コミュニケーション・システムが進歩するでしょうし、パターン認識によって自動操縦の自動車も出来るようになります。これらの組込用アプリケーションの研究を継続するためには、若い世代の人々がコンピュータの仕事に関心を持つようにしむけ、次世代のコンピュータ学者がコンピュータを単なる情報へのアクセス装置としてではなく、幅広い観点から考察するように教育することが重要であると思います。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

マイクロプロセッサの誕生からその未来へ

The Birth of Microprocessor and Future Possibility

日時
1997年11月12日(水)10:00~17:30
場所
国立京都国際会館
企画
大見 忠弘 [専門委員会委員]東北大学大学院工学研究科教授 榊 裕之 [専門委員会委員長]東京大学先端科学技術センター教授

プログラム

10:00
司会 榊 裕之
開会 榊 裕之
10:05 
挨拶 稲盛 豊実 稲盛財団常務理事
10:10 
挨拶 末松 安晴 [審査委員会委員長]高知工科大学学長
10:15 
記念講演I マーシャン・エドワード・ホフJr. 先端技術部門受賞者
「マイクロプロセッサアーキテクチャの着想」
10:45 
記念講演II フェデリコ・ファジン 先端技術部門受賞者
「マイクロプロセッサの誕生」
11:15 
記念講演III 嶋 正利 先端技術部門受賞者
「マイクロプロセッサの未来」
11:45 
記念講演IV スタンレー・メイザー 先端技術部門受賞者
「ICと設計ツールの進歩」
12:15 
昼食
13:15 
司会 大見 忠弘
講演 西谷 隆夫 日本電気シリコンシステム研究所所長代理
「マルチメディア時代のプロセッサ」
14:00 
講演 南谷 崇 東京大学先端科学技術センター教授
「非同期式プロセッサの研究開発」
14:45
休憩
15:00
講演 中村 行宏 京都大学大学院工学研究科教授
「VLSIプロセッサの高位論理合成設計」
15:45
講演 浅田 邦博 東京大学大規模集積システム設計教育研究センター教授
「日本の大学でのVLSI設計教育」
16:30 
講演 亀山 充隆 東北大学大学院情報科学研究科教授
「知能集積システムの新しいパラダイムを目指して」
17:15
質疑応答
17:30
閉会 大見 忠弘
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