1993年先端技術部門エレクトロニクス
ジャック・セントクレア・キルビー 写真

ジャック・セントクレア・キルビー
(Jack St. Clair Kilby)

  • アメリカ / 1923年-2005年
  • 半導体技術者
  • テキサスインスツルメンツ社 顧問

モノリシック半導体集積回路の基本概念の創出と実証

今日の最先端技術であるLSI、超LSIの基盤となったモノリシック半導体集積回路の基本的概念を世界で初めて提案、実証し、集積回路技術の進歩発展の基礎を創るとともに、その初期における研究開発と実用化に大きく寄与し、マイクロエレクトロニクスの発展に多大な貢献をした。

プロフィール

略歴

1923年
ミズーリ州、ジェファーソンに生まれる
1950年
ウィスコンシン大学で修士号取得
1958年
テキサス・インスツルメンツ社技術者 後に副社長
1970年
同社顧問
1978年
テキサスA&M大学電子工学部教授
1988年
名誉理学博士号(イリノイ大学)

主な受賞と栄誉

1966年
デービッド・サーノフ賞(IEEE)
1969年
国家科学賞
1975年
スヴォーリキン賞(アメリカ工学アカデミー)
1982年
発明殿堂入り
1986年
IEEEメダル・オブ・オナー
1990年
国家技術賞
2000年
ノーベル物理学賞

主な論文・著書

1956年

Transistor Amplifier Packaged in Steatite. Electronics. (with Roup, R.R.), 1956.

1976年

Invention of the Integrated Circuit. IEEE Trans. on Electron Devices. Vol. ED-23., 1976.

1980年

4,188,177. System for Fabrication of Semiconductor Bodies. (with McKee, W.R. and Porter, W.A.), 1980.

1982年

4,322,379. Fabrication Process for Semiconductor Bodies. (with McKee, W.R. and Porter, W.A.), 1982.

贈賞理由

モノリシック半導体集積回路の基本概念の創出と実証

ジャック・セントクレア・キルビー博士は、今日の最先端技術であるLSI、超LSIの基盤となったモノリシック半導体集積回路の基本的概念を世界で初めて提案し、集積回路技術の発展の基礎を創るとともに、その初期における研究開発と実用化に大きく寄与し、マイクロエレクトロニクスの発展に多大な貢献をした偉大な技術者である。

1940年代後半のトランジスタの発明によって、それまで全盛であった真空管のような「真空の中の電子」を使う技術から脱皮し、「結晶の中の電子」を使う現代エレクトロニクスの幕開けとなった。

キルビー博士は、1958年、すべての部品を同一の半導体に作り込むという、モノリシック化の着想を得て、一つの半導体基板の中にトランジスタ、抵抗、キャパシタをすべて作り込み、電子回路を構成するという概念を提唱し、これを実証した。

博士はさらに1959年、メサトランジスタ、バルク抵抗、拡散キャパシタからなるフリップフロップ集積回路を試作してその動作を確認した。博士は特殊計算機システム開発チームのリーダーとしてこの集積回路技術の実用化を率先して推進し、世界で最初の計算機用集積回路を実用化し、画期的なシステムを完成させた。

また、この技術を産業、民生分野に応用すべく、現在の電卓の先駆的モデルである小型カリキュレータの試作を行った。このように博士は、半導体を用いた集積回路が極めて広範な分野に適用できることを多くの応用例から実証し、大きなインパクトを与えたのである。これは工学的に極めて重要かつ画期的な仕事であった。

今日のマイクロエレクトロニクスの発展は、多くの要素技術の発明と多くの技術者の努力によって実現されてきたことは事実である。しかし、キルビー博士が開発した半導体集積回路技術がその後の集積回路技術の研究開発に大きなインパクトを与え、現代マイクロエレクトロニクス産業の起源となったLSI、VLSI、さらにULSIへの発展の道を切り拓いたのである。

以上のような輝かしい業績により、ジャック・セントクレア・キルビー博士は第9回京都賞先端技術部門の受賞者に最も相応しい。

記念講演

記念講演要旨

エンジニアリングの面白さ

今日、私達の生きる近代社会は、ほとんど全てがテクノロジーに依存しています。この依存に対する認識から、マンフォードやエルルなどの作家は、テクノロジーが暴走してしまっており、これを、抑制するための措置がとられなければならないと指摘しています。

しかし、そのような作家達も、過去の進歩の多くを快く受け入れています。彼らは、自動車に乗ったり、飛行機で飛んだりすることは厭わない一方で、テクノロジーがひとりでに生命や勢いを持つようになり、それが好ましくない方向、あるいは危険な方向にさえ向かうかもしれないと感じているのです。その影響で、科学やテクノロジーを職業に選ぼうとする若い人の数が減っています。

私は、現在エンジニアリングを志す若い人達も、この分野に入ることでエキサイティングでやりがいのある仕事と出会うことができるだろうと確信しており、私自身の経験を例として挙げたいと思います。

私は、特に物造りではあまり知られた地域でないカンザス州西部の小さな町で育ち、中西部の比較的良いとされる大学の一つに通い、1947年に卒業しました。

エレクトロニクス産業に入るには、エキサイティングな時期であり、新しいエレクトロニクス製品が次々と発表されていました。その年トランジスタが発明され、これは、この分野を全く変えてしまう開発でした。その結果、エレクトロニクス分野は急速に拡大し始め、今日にまで至っています。

若いエンジニアとして、私は、重要なプロジェクトに貢献するチャンスを与えられました。もちろん、この中で最も重要だったのは、米国内だけでなく、日本や世界中で750億ドルの産業にまで育った集積回路でした。

これによって、私は非常に満足出来る成果を手に入れることができました。私の存在は小さなものであっても、私は進歩を目の当たりにできたのです。

生涯の仕事を探している若い人達に、私はエンジニアリングを心よりお薦めします。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

集積回路の誕生から知的システムの時代へ

From the Birth of Integrated Circuit to Large Scale Intelligent System

日時
1993年11月12日(金)13:00~17:30
場所
国立京都国際会館
企画
大見 忠弘 先端技術部門専門委員会委員、東北大学工学部教授

プログラム

13:00
開会の辞 大見 忠弘
13:05
挨拶 稲盛 豊実 稲盛財団常務理事
13:10
業績紹介 難波 進 長崎総合科学大学教授
13:30
記念講演 ジャック・セントクレア・キルビー 先端技術部門受賞者
「集積回路技術の進歩」
14:30
座長挨拶 難波 進
14:45
講演 嶋 正利 ブイ・エム・テクノロジー株式会社取締役副会長
「マイクロプロセッサーの誕生-21世紀への展望」
15:30
休憩
15:45
講演 亀山 充隆 東北大学工学部教授
「多値情報処理に基づく次世代知能集積システム」
16:30
講演 大見 忠弘
「21世紀のしなやかな知的情報処理を実現する4端子デバイスエレクトロニクス」
17:15
閉会
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