2009年先端技術部門エレクトロニクス
赤﨑 勇 写真

赤﨑 勇
(Isamu Akasaki)

  • 日本 / 1929年1月30日
  • 半導体科学者
  • 名古屋大学 特別教授、名城大学 教授

窒化ガリウムpn接合の先駆的実現による青色発光素子発展への貢献

青色発光ダイオードの実現に向けて、永年にわたり粘り強く研究を進め、ほぼ不可能と思われていた窒化ガリウム系pn接合を実現する先駆的な成果を世界に示した。この成果は、青色発光素子の実用化に向けての力強い一歩となった。同氏はその後も先導的に研究を進め、その貢献は世界的に高く評価されている。

プロフィール

略歴

1929年
鹿児島県知覧町生まれ
1952年
京都大学 理学部 卒業
1964年
名古屋大学 工学博士
1952
神戸工業株式会社(現 富士通株式会社)
1959-1964年
名古屋大学 工学部 助手、講師、助教授
1964-1981年
松下電器産業株式会社 東京研究所 基礎第4研究室長、同半導体部長
1981
名古屋大学 工学部 教授
1992年
名古屋大学 名誉教授
1992年
名城大学 理工学部/理工学研究科 教授
2004年
名古屋大学 特別教授

主な受賞と栄誉

1995年
ハインリッヒ・ヴェルカー・ゴールドメダル
1997年
紫綬褒章
1998年
IOCGローディス賞、C&C賞、IEEEジャック・モートン賞、英国ランク賞
1999年
モンペリエ大学名誉博士
2001年
朝日賞
リンショッピン大学名誉博士
2002年
勲三等旭日中綬章、応用物理学会業績賞(研究業績)、藤原賞
2004年
文化功労者
会員:
IEEE フェロー、電子情報通信学会名誉員、応用物理学会功労会員、米国工学アカデミー外国人会員

主な論文

1986年

Metalorganic vapor phase epitaxial growth of a high quality GaN film using an AlN buffer layer (Amano, H., Sawaki, N., Akasaki, I. and Toyoda, Y.). Applied Physics Letters 48: 353-355, 1986.

1989年

Effects of AlN Buffer Layer on Crystallographic Structure and on Electrical and Optical Properties of GaN and Ga1-xAlxN (0<x≤0.4) Films Grown on Sapphire Substrate by MOVPE (Akasaki, I., Amano, H., Koide, Y., Hiramatsu, K. and Sawaki, N.). Journal of Crystal Growth 98: 209-219, 1989.

1989年

P-Type Conduction in Mg-Doped GaN Treated with Low-Energy Electron Beam Irradiation (LEEBI) (Amano, H., Kito, M., Hiramatsu, K. and Akasaki, I.). Japanese Journal of Applied Physics 28: L2112-L2114, 1989.

1997年

Crystal Growth and Conductivity Control of Group III Nitride Semiconductors and Their Application to Short Wavelength Light Emitters (Akasaki, I. and Amano, H.). Japanese Journal of Applied Physics 36: 5393-5408, 1997.

2006年

Breakthroughs in Improving Crystal Quality of GaN and Invention of the p-n Junction Blue-Light-Emitting Diode (Akasaki, I. and Amano, H.). Japanese Journal of Applied Physics 45: 9001-9010, 2006.

贈賞理由

窒化ガリウムpn接合の先駆的実現による青色発光素子発展への貢献

赤﨑勇博士は、青色発光ダイオードの実現に向け、永年にわたり窒化ガリウム(GaN)結晶の成長と素子応用の研究を粘り強く進め、ほぼ不可能と思われていたGaN系pn接合を実現する先駆的な成果を達成した。この成果は、内外の研究の流れを変え、青色発光素子の実用化に向けた研究を活性化させる歴史的一歩となった。同氏は、その後も先導的研究を一貫して進めており、その貢献は世界的に高く評価されている。

半導体を用いた発光ダイオード(LED)は、効率や寿命などに優れ、多様な応用がある。このため早くから研究開発が進み、赤色や緑色の発光素子などが実現されてきた。さらに、青色LEDが実現すれば、光の3原色が揃い、フルカラーの表示や白色照明などへと応用が拡がるものと期待されていた。また、青色の半導体レーザが実現できれば、光ディスクの記録密度を格段に高められることなどが予測されていた。このため、青色LEDを目指す試みが1970年頃から活発になり、有望な材料としてGaNが注目され、精力的な研究が推進された。しかし、GaN結晶の質を高め、電気的性質を制御することは難しく、n型結晶は実現されたが、LEDに不可欠のp型結晶は実現できなかった。このため、70年代末には、研究者の多くがGaN系青色LEDの実現を断念し、撤退した。

しかし、赤﨑博士は粘り強く研究を続け、1985年には、サファイア基板に低温で緩衝層を形成した後にGaNを成長すると、品質が格段に高まることを見出した。さらに、質の高まったGaN結晶にマグネシウム原子を導入し、電子線を照射すると、結晶がp型化することを、天野浩博士らの協力を得て、発見した。続いて、この手法により世界初のGaNのpn接合を1989年に実現し、青色LEDとして動作することも示した。

これらの成果は、青色発光素子材料としてのGaN系材料の可能性を再認識させ、実用化に向けた研究開発が内外で精力的に推進される引き金となった。この結果、関連の研究が進み、青色LEDが1993年に実用化され、今では表示と照明に広く用いられている。また、青色半導体レーザも、その後に実用化され、高密度光記録機器の実現などに重要な役割を果たしている。赤﨑博士は、こうした青色発光素子の実現への道を拓くとともに、一連の研究を通じ、その後の発展にも先導的な貢献をなした。

以上の理由によって、赤﨑勇博士に先端技術部門における第25回(2009)京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

コバルトブルーに魅せられて

私がルミネッセンスに興味を抱くようになったのは、大学を出て最初の職場で、テレビ用ブラウン管の蛍光面を担当することになった時です。その後、名古屋大学で、ゲルマニウム(Ge)単結晶作製と半導体物性の研究に取り組み、1961年、今日“気相エピタキシャル成長法”と呼ばれている方法で、Ge単結晶膜の作製に成功。これが縁で、1964年、新設の松下電器東京研究所に招かれ、Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体の結晶成長と発光素子の研究を始めました。

1960年代、赤色や黄緑色の発光ダイオード(LED)や赤外の半導体レーザは開発されていましたが、青色発光素子は70年代に入っても実用化の見通しは全くありませんでした。

高性能の青色発光素子の実現には、窒化ガリウム(GaN)などエネルギーの大きい半導体の高品質単結晶の作製と、そのpn接合の実現が不可欠ですが、いずれも極めて困難だったからです。私は、なんとかしてこれらの困難を克服し、GaN pn接合による青色発光素子を実現しよう―と志を立てました。

しかし、結晶成長は困難を極め、試行錯誤の繰り返しでした。1970年代後半、多くの研究者がこの“未到の半導体”の研究から撤退し、“一人荒野を行く”心境で愚直にGaNの結晶成長に明け暮れていました。1978年、ごく微小ながら高品質の結晶を顕微鏡の視野に捉え、GaNの可能性を直感しました。そして、もう一度、本研究の原点である“結晶成長”の基本に立ち返ることを決意しました。これは私にとっても、GaNの研究開発にとっても大きな岐路でした。1979年、GaNの結晶成長に最適の方法として、“有機金属化合物気相成長法(MOVPE)”を採ることにしました。この判断が正しかったことは、今日、青色LEDなどGaN系素子が殆どこの方法で作製されていることから明らかです。

1981年から、名古屋大学で院生・共同研究者の多大の協力を得て、低温バッファ層技術による高品質GaN結晶、この結晶へのマグネシウム添加と電子線照射によるp型伝導、さらにGaN pn接合型青色LEDなどを、初めて実現しました。講演では、その後の展開についても述べたいと思います。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

窒化物半導体とそのデバイス応用の現状と未来

Nitride Semiconductors and Their Device Applications: Current Status and Future Prospects

日時
平成21年11月12日(木)13:00~17:25
場所
国立京都国際会館
企画
榊 裕之[(審査委員会 委員長)豊田工業大学 副学長]
企画・司会
柊元 宏[(審査委員会 委員)東京工業大学 名誉教授]、藤田 静雄[京都大学 大学院工学研究科 教授]
主催
財団法人 稲盛財団
後援
京都府 京都市 NHK
協賛
IEEE Photonics Society日本チャプター、応用物理学会、電気学会、電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ、光産業技術振興協会

プログラム

13:00
開会挨拶 受賞者紹介 榊 裕之
受賞者講演 赤﨑 勇[先端技術部門 受賞者]
「窒化ガリウム結晶品質の飛躍的改善とpn接合青色発光ダイオードの実現」
招待講演 太田 光一[豊田合成株式会社 常務取締役 オプトE営業部 研究開発センター 担当]
「窒化物半導体LEDの最近の進展」
招待講演 池田 昌夫[ソニー株式会社 先端マテリアル研究所 R&Dダイレクタ・主幹技師]
「窒化物半導体LDの最近の進展」
休憩
招待講演 長谷川 文夫[筑波大学 名誉教授]
「窒化物半導体高速・パワーデバイスの最近の進展」
招待講演 荒川 泰彦[東京大学 生産技術研究所 教授]
「窒化物半導体ナノ構造の最近の進展」
合同セッション 「窒化物半導体の新展開」
 碓井 彰[古河機械金属株式会社 研究開発本部 本部長]
  「窒化物半導体の低欠陥化」
 岸野 克巳[上智大学 理工学部 教授]
  「窒化物半導体ナノコラム」
 川上 養一[京都大学 大学院工学研究科 教授]
  「無極性・半極性窒化物半導体の光物性」
 天野 浩[名城大学 理工学部 教授]
  「窒化物半導体応用の波長範囲の拡大…赤外から紫外まで」
 名西 やすし[立命館大学 理工学部 教授・ソウル国立大学 WCU教授]
  「窒化インジウム半導体の進展」
17:25
閉会
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