2007年基礎科学部門地球科学・宇宙科学
金森 博雄 写真

金森 博雄
(Hiroo Kanamori)

  • 日本 / 1936年10月17日
  • 地球物理学者
  • カリフォルニア工科大学名誉教授

地震の物理過程の解明と災害軽減への応用

巨大地震の地震波記録からその全過程を明らかにする解析手法を考案し、巨大地震の解明に画期的前進をもたらし、地震学に新時代を開くなど、地球科学の発展に大きな影響を与えるとともに、このような研究から得られた知見を地震災害軽減のために役立てる方法を提唱し、実践している。

プロフィール

略歴

1936年
東京都生まれ
1962年
東京大学 助手
1964年
東京大学 理学博士
1965年
カリフォルニア工科大学 研究員
1966年
東京大学 助教授
1969年
マサチューセッツ工科大学 客員教授
1970年
東京大学 教授
1972年
カリフォルニア工科大学 教授
1989年
カリフォルニア工科大学 ジョン・E &ヘイゼル・S・スミッツ地球物理学教授
1990年
カリフォルニア工科大学 地震研究所 所長
2005年
カリフォルニア工科大学 ジョン・E &ヘイゼル・S・スミッツ地球物理学名誉教授
2005年
日本学術振興会 外国人招へい研究者 (京都大学 防災研究所)
2006年
名古屋大学 客員教授

主な受賞と栄誉

1992年
ハリー・フィールディング・リード・メダル(アメリカ地震学会)
1993年
アーサー・L・デイ賞(米国科学アカデミー)
1993年
カリフォルニア・サイエンティスト・オブ・ザ・イヤー賞(カリフォルニア科学センター)
1994年
朝日賞(朝日新聞社)
1996年
ウォルター・H・ブーカ・メダル(アメリカ地球物理学連合)
2004年
日本学士院賞
2006年
文化功労者
会員
米国芸術科学アカデミー

主な論文

1970年

Synthesis of long-period surface waves and its application to earthquake source studies-Kurile Islands earthquake of October 13, 1963, Journal of Geophysical Research 75: 5011-5027, 1970.

1975年
Theoretical basis of some empirical relations in seismology, Bulletin of the Seismological Society of America 65: 1073-1095 (with Anderson, D. L.), 1975.
1977年
The energy release in great earthquakes, Journal of Geophysical Research 82: 2981-2876, 1977.
1983年
The rupture process and asperity distribution of three great earthquakes from long-period diffracted P-waves, Physics of the Earth and Planetary Interiors 31: 202-230 (Ruff, L. and Kanamori, H.), 1983.
1997年
Real-time seismology and earthquake hazard mitigation, Nature 390: 461-464 (with Hauksson, E. and Heaton, T.), 1997.
贈賞理由

地震の物理過程の解明と災害軽減への応用

金森博雄博士は、巨大地震の地震波記録からその全過程を明らかにする解析手法を考案し、巨大地震の解明に画期的前進をもたらし、地震学に新時代を開くなど、地球科学の発展に大きな影響を与えるとともに、このような研究から得られた知見を地震災害軽減のために役立てる方法を提唱し、実践している。

1960年代に博士は、地球全体を揺する巨大地震の研究を始め、環太平洋の巨大地震の発生機構を次々に明らかにし、ほとんど独力で「巨大地震学」とも言うべき分野を創始した。これらの研究を通して、誕生間もないプレートテクトニクス理論に大きく貢献するとともに、新しい地震の尺度「モーメント・マグニチュード」を考案した。その有用性は、2004年12月のスマトラ・アンダマン地震について、殆どの観測機関がこの尺度で報告していることからも明かである。博士は巨大地震の研究を発展させ、多様な破壊過程を一般的に説明する「アスペリティ・モデル」を提唱した。このモデルの妥当性は、アスペリティ周辺の非地震性滑りがGPS観測網によって検出され、実証されつつある。また、多様な個々の地震現象をこれらの理論から明らかにした。これらの発見は、地球科学の広い分野に大きな影響を与え続けている。博士は、長周期地震波の即時解析に基づく津波警報システムの提案、高層ビルや石油タンクなど巨大構造物の長周期地震波との共振についての指摘、「リアルタイム地震学」の提唱などを通して、破壊過程に関する知見を地震災害軽減へ活用する研究にも大きな貢献をした。大地震発生後に迅速にデータを収集・解析し、地震波到達直前の強振動予測に活用するリアルタイム地震学の実践システムはすでに南カリフォルニア地区で運用されている。こうした試みは、日本をはじめ他国でも始まりつつあり、博士が提唱した地震災害軽減の試みがまさに実を結ぼうとしている。

博士は、地震の全過程を明らかにする現代的な地震学を創出し、地震現象の多様性を示すことにより、地球科学の諸分野に大きな影響を与えただけでなく、地震災害軽減への取り組みを通して人類の幸福にも多大な貢献をしている。

以上の理由によって、金森博雄博士に基礎科学部門における第23回(2007)京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

波に魅せられて

私は、1936年に6番目の子供として生まれました。両親は、物事の探求にあたっては、私のやりたい方法でやらせてくれました。また、戦時下であったため、少年時代には、正式な授業も、本も、ノートも、疑問に思うことを尋ねる人も満足にはありませんでした。そのため、誰かに聞いたり、本で調べたりする前に、まずは自分自身で考えて、解答や解決策を見いだすということが私の習い性になりました。私は、私の研究人生を通じてこの基本的な姿勢を持ち続けてきたように思います。

高校生になるころには、科学に強い興味をもつようになりました。また、子供のころに見ていた日本アルプスの雄大な姿に畏敬の念を抱いていましたので、自然がどのようにして山を造ったのかを知りたくなりました。

科学と自然の力への興味から、大学では地球物理学を専攻しました。そして、物理で波動方程式を学んだことをきっかけに、波を利用して地震と火山についての研究をするようになりました。その後、スペースシャトルの出す衝撃波や、彗星の衝突に起因する木星大気の擾乱など、波を利用して、他の現象についても研究することができました。子供のころから不思議に思っていたいろいろな自然現象を研究できたことは素晴らしいことでした。

1980年代半ばには、どうすれば私たちが得た科学知識を社会に役立てることができるかということを考えるようになりました。私は、地震被害の軽減のために、リアルタイムの地震情報を使おうと思いました。そして、多くの人達と共に、実質的な被害軽減のためにリアルタイム情報を利用する効果的な方法をいくつか開発しました。カリフォルニア工科大学と米国地質調査所で始めたCUBE(Caltech-USGS Broadcast of Earthquakes)プロジェクトはその一つです。

私は、自分が本当にしたかったことを続けてこられて大変幸運だったと思います。次の世代の人たちにアドバイスをするとすれば、「自分が最もしたいことをして、富や名声を得たいという欲望に人生をまかせるべきではない。」ということになります。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

巨大地震学からリアルタイム地震学へ

"From Great Earthquake Seismology to Real Time Seismology"

日時
2007年11月12日(月)13:00-17:30
場所
国立京都国際会館
企画/司会
深尾 良夫 [(審査委員会 委員) 海洋研究開発機構 地球内部変動研究センター センター長]
主催
財団法人 稲盛財団
後援
京都府 京都市 NHK
協賛
日本地球惑星科学連合 日本地震学会 日本火山学会 日本地震工学会

プログラム

13:00
開会挨拶 佐藤 文隆 [(審査委員会 委員長) 京都大学 名誉教授]
基調講演 上田 誠也 [東京大学 名誉教授]
「我々の体験した固体地球科学の革命」
受賞者紹介 水谷 仁 [(審査委員会 委員) 宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究本部 名誉教授]
受賞者講演 金森 博雄 [基礎科学部門 受賞者]
「波は語る-地震とその関連現象の解明-」
休憩
講演 モリ・ジェームズ・ジロウ [京都大学 防災研究所 教授]
「地震災害に関する大学‐政府計画
カリフォルニア工科大学と米国地質調査所の協力」
講演 西谷 章 [早稲田大学 常任理事、理工学術院 教授]
「事前地震情報を活かした構造制御への将来展望」
休憩
自由討論 司会 水谷 仁
受賞者・講演者・会場参加者全員
17:30
閉会
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