1995年先端技術部門材料科学
ジョージ・ウィリアム・グレイ  写真

ジョージ・ウィリアム・グレイ
(George William Gray)

  • イギリス / 1926年-2013年
  • 化学者
  • ハル大学 名誉教授

液晶の体系化と分子設計法の確立による液晶材料の発展への根幹的貢献

現代情報化社会において、きわめて重要な役割を果たしている液晶表示素子である液晶材料の研究開発に根幹的寄与をし、液晶材料科学の基礎を創り、その体系化を行うとともに、応用における実用上の分子設計法を確立した。

プロフィール

略歴

1926年
スコットランドに生まれる
1946年
グラスゴー大学理学部卒業
1953年
ロンドン大学博士号取得
1960年
ハル大学 上級講師
1978年
同大学有機化学教授
1990年
同大学名誉教授
1993年
メルク社研究顧問

主な受賞と栄誉

1979年,92年
女王賞
1983年
英国王立協会会員(FRS)
1987年
金メダル、英国王立協会
1991年
大英勲章第3位(CBE)
1993年、1994年
金メダル、化学工業協会

主な論文・著書

1973年

New Family of Nematic Liquid Crystals for Displays (with K. Harrison, J. Nash.) Electron Letts., 9, 1773.

1976年

A Liquid Crystal Mixture for Use in Smectic Liquid Crystal Display Devices (with A. Mosley). J. Chem. Soc., Chem. Commun., 147, 1976.

1979年

Liquid Crystal Compounds Incorporating the trans-1, 4-Substituted Cyclohexane Ring System (with D. McDonnell). Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53, 1979.

1989年

The Synthesis and Transition Temperatures of Some 4,4″-dialkyl-and 4,4″-aldoxyalkyl-1,1′: 4′,1″-terphenyls with 2, 3 or 2′, 3′-difluoro substituents and of their biphenyl analogues (with M. Hird, D. Lacey and K. Toyne). J.Chem. Soc., Perkin Trans. II, 1989.

1990年

Synthesis and Properties of Some Novel Ferroelectric Materials-Hosts and Dopants (with M. Hird, D. Lacey and K. Toyne).Mol. Cryst. Liq. Cryst., 191, 1990.

贈賞理由

液晶の体系化と分子設計法の確立による液晶材料の発展への根幹的貢献

ジョージ・ウィリアム・グレイ博士は、今日の情報化社会に極めて重要な役割を果たしている液晶表示素子である液晶材料の研究を行い、それらを実証的に体系化するとともに、実用上の分子設計法を確立し、液晶材料の開発に根幹的寄与をなした。

液晶材料は、周知のように、省エネルギー型の表示素子としてデジタル電卓、パソコン、液晶テレビなど数限りなく多方面に使用されており、現代社会において不可欠の材料となっている。

液晶状態は液体の流動性と固体の異方性を併せ持った、気体、液体、固体に次ぐ第4の物質状態であり、古く1888年に発見された。

グレイ博士の液晶ならびに液晶材料に関する研究は、1951年ハル大学の講師の時代から始まっている。その研究は当初は液晶分子の基礎的研究、特にその合成ならびに性質を体系化し、分子構造と物性の基礎を明らかにする研究であった。

その後、液晶を電場で制御することにより、表示デバイスに応用できることが考えられたが、グレイ博士は1972年化学的に安定で転移温度が低く、室温で作動可能なシアノビフェニル系液晶材料の開発に成功し、液晶のディスプレイへの実用化を可能とした。

以後20年以上を経た現在も、この一連の化合物が、標準的液晶化合物として広く利用されている。また博士は、今日最も汎用されているネマティック型液晶材料の基本的分子構造を明らかにしたが、この業績は基本的には現在もまだ越えられていないと言えよう。その後も応用面でのさまざまなニーズに対して、それまで蓄積してきた基礎的研究の知識に立って応えてきており、グレイ博士によって液晶材料の今日の成功がもたらされたと言える。

このようにグレイ博士は、液晶分子の合成と物性という基礎研究から出発し、液晶デバイスに使用できる液晶化合物の合成に成功するとともに、安定性、耐久性など材料にとって不可欠な分子設計にも大きく貢献をして、液晶を耐久性のある機能材料として広く世の中に認知せしめた。その功績は絶大であり、博士なくして今日の液晶デバイスの隆盛はなかったであろう。

グレイ博士はまた、液晶に関する数多くの論文と、液晶に関する定本といえる著書数冊を発刊し、若い液晶研究者に大きな影響を与えるなど、第11回京都賞先端技術部門材料科学分野の受賞者に最も相応しいと言える。

記念講演

記念講演要旨

液晶に生きたわが人生-それはいかに人類に貢献したか

受賞者は、まず1995年度の京都賞先端技術部門受賞を知らされた時の喜びと誇りを話し、同時に、必然的にこの高い栄誉を受けるに値するかどうか、いささか疑問を抱いたことを語っている。それは、自身が多くの過ちを犯してきたことを自覚しているからである。

本年の受賞者が、聴衆の中の他の誰かではなく、なぜ自分なのかということを分析している。結論としては、自分の知識、教育、訓練と、早い時期に父親から受けた強い影響に負うところが大きい。偶然的な要素が非常に重要な役割を果たしている。それは人々との出会いやいくつかの出来事、さらには、表示技術の研究において、2つの重要な発明、つまり自分の発明と他の人物の発明のなされた時期が、幸運にも一致したということである。

技術的な講演ではないにせよ、ある1人の科学者の経歴を業績を説明するためには、いくらか科学的な内容を交えざるをえない。また、科学者は自らの専門分野について一般人に伝えるべく、真剣な努力をすることが重要である。科学者と一般人、豊かな者と貧しい者の間の壁を破るためのコミュニケーションと教育の重要性は、いくら強調してもし過ぎることはない。受賞者は、簡単な用語とアナロジーを用いて、液晶について簡潔に説明し、また、液晶が重要である理由を、そのエレガントな二重性、つまり流動性を持った秩序という観点から説明する。特にネマティック液晶の優れた光学的特性を論証する。

タイミングよく殆ど同時に発見された(1)ツイステッド・ネマティック・デバイス(ねじれネマティック方式)及び(2)室温で安定な液晶を説明し、この材料の発見が、初期の基礎研究で確立された、しっかりとした知識に基づいていることを強調している。このような基礎研究を注意深く育てなければならない。もちろん、こうした材料をフルに活用する技術は、他のグループとの相互協力に依存している。その全体的な結果として、今や大きな富をもたらしている液晶電気光学ディスプレイ産業の確固たる基礎が与えられた。

情報産業の分野全体と社会への影響の大きさのために、受賞者の業績はいつまでも注目されるであろう。しかし、40年を越える自分の研究からは、他にも重要な成果が生まれている。そうしたことの結果が、国際的な評価、更に「液晶の父」という尊称につながったのである。

受賞者は、現代の若い人々が成功するためのいくつかの条件について述べた後、京都賞を設立され、受賞者の生涯の記念となる式典を開いて下さった稲盛理事長のビジョンと哲学に改めて敬意を評して講演を締めくくっている。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

液晶の新しい展開と応用

New Development and Applications of Liquid Crystals

日時
1995年11月12日(日)13:00~17:35
場所
国立京都国際会館
企画 司会
清水 剛夫 先端技術部門専門委員会委員、京都大学工学部教授梶山 千里 先端技術部門専門委員会委員、九州大学工学部教授

プログラム

13:00
開会 清水 剛夫
挨拶 稲盛 豊実 稲盛財団常務理事
挨拶 井村 裕夫 先端技術部門審査委員会委員長、京都大学総長
13:15
受賞者紹介 柳田 博明 先端技術部門専門委員会委員長、東京大学工学部教授
13:20
記念講演 ジョージ・ウィリアム・グレイ 先端技術部門受賞者
「液晶研究の40年-過去の成果と未来の可能性」
14:20
座長 苗村 省平 メルクジャパン(株)液晶テクニカルセンター所長
講演 竹添 秀男 東京工業大学工学部教授
「液晶における強誘電性と反強誘電性」
講演 野平 博之 埼玉大学工学部教授
「キラルテクノロジーと強誘電性液晶材料の開発」
15:30
15:50
座長 高津 晴義 大日本インキ化学工業(株)記録材料技術本部グループマネージャー
講演 横山 浩 電子技術総合研究所分子物性研究室室長
「液晶の表面物理の新しい話題」
講演 小出 直之 東京理科大学理学部教授
「機能性高分子材料としての液晶高分子の研究と新展開」
17:00
座長 船田 文明 シャープ(株)液晶研究所副所長
講演 内田 龍男 東北大学工学部教授「液晶デバイスの最近の進歩と展望」
17:35
閉会 梶山 千里
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