2005年先端技術部門エレクトロニクス
ジョージ・H・ハイルマイヤー  写真

ジョージ・H・ハイルマイヤー
(George H. Heilmeier)

  • アメリカ / 1936年-2014年
  • 電子工学技術者
  • テルコーディア・テクノロジーズ社 名誉会長

液晶を用いた平面型表示装置の実現への先駆的貢献

「壁掛けテレビ」の実現がまだ遠い夢であった1960年代に、液晶の持つ特異な性質を利用して平面型表示装置を実現することに挑み、今日あらゆる場面で利用されている液晶ディスプレイの原型となる平面型表示装置を世界で初めて試作し、現在の平面型表示装置の飛躍的な技術発展に先駆的な貢献をした。

プロフィール

略歴

1936年
米国ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ
1958年
ペンシルベニア大学 卒業
1962年
プリンストン大学 博士号(工学)
1958年
RCA研究所 テクニカルスタッフ
1966年
RCA研究所 固体デバイス研究部門 部門長
1969年
RCA研究所 デバイスコンセプト研究部門 部門長
1970年
ホワイトハウスフェロー、米国国防長官特別補佐官
1971年
米国国防総省 国防研究技術局 アシスタントディレクター
1974年
米国防衛高等研究計画局 ディレクター
1977年
テキサスインスツルメント社 部長
1983年
テキサスインスツルメント社 副社長、兼、最高技術責任者
1991年
ベル・コミュニケーションズ・リサーチ社 社長、兼、最高経営責任者
1996年
ベル・コミュニケーションズ・リサーチ社 会長兼最高経営責任者
1997年
テルコーディア・テクノロジーズ社 名誉会長

主な受賞と栄誉

1976年
デービッド・サーノフ賞、IEEE
1990年
C&C賞、NEC
1991年
米国科学栄誉賞
1992年
米国工学アカデミー 創設者賞
1996年
ジョン・スコット科学業績賞、フィラデルフィア市
1997年
栄誉賞、IEEE
1999年
ジョン・フリッツ賞、米国工学協会
会員
米国工学アカデミー 、米国芸術科学アカデミー、IEEEフェロー

主な論文

1966年

Possible Ferroelectric Effects in Liquid Crystals and Related Liquids (Williams, R. and Heilmeier, G. H.), Journal of Chemical Physics 44: 638、1966.

1968年

Dynamic Scattering: A New Electrooptic Effect in Certain Classes of Nematic Liquid Crystals (with Zanoni, L. A. and Barton, L. A.), Proceedings of the IEEE 56: 162, 1968.

1970年

Liquid Crystal Display Devices, Scientific American 222: 100, 1970.

1976年

Liquid Crystal Displays: An Experiment in Interdisciplinary Research that Worked, IEEE Transactions on Electron Devices ED-23: 780, 1976.

贈賞理由

液晶を用いた平面型表示装置の実現への先駆的貢献

ハイルマイヤー博士は、「壁掛けテレビ」の実現が遠い夢であった1960年代に、液晶の特異な性質を利用して平面型表示装置を実現することに挑み、今日あらゆる場面で利用されている液晶ディスプレイの原型となる平面型表示装置を世界で初めて試作し、現在の平面型表示装置の飛躍的な技術発展に先駆的な貢献をした。

エレクトロニクス機器では、画像や文字の表示機能が不可欠である。ブラウン管は表示装置として長く使われてきたが、平面型や携帯型の表示装置には不向きであった。米国RCA社では、平面型表示装置の実現に液晶を用いることを検討し、ウィリアムズ博士が電気光学効果などの液晶の性質を研究していた。

RCA社のハイルマイヤー博士は、分子配向によって内部電場を大きく制御できる液晶の性質に興味をもち、デバイス応用に強い関心をもって研究グループに参画した。そして、1964年に染料をドープしたネマティック液晶において、電圧印加により色の変化が起こる現象を発見した。この発見が液晶表示装置実現への足がかりとなり、博士はその後、液晶表示装置を実現するための要素技術を次々と開発した。そして、ある種のネマティック液晶において、液晶自体が電界印加によって透明状態から白濁状態に変化する「動的散乱効果」と呼ばれる現象を発見し、その利用により平面型表示装置をついに実現した。この動的散乱効果では液晶自体が白濁し光を散乱するため、簡単な構造で表示装置を作製できた。さらに、この効果は数十ミリ秒程度の高速性をも示しており、作製された表示装置は実時間表示をも視野に入れるものとなっていた。1968年にRCA社は、博士らが試作した様々な平面型表示利用装置を、世界初の液晶表示装置として発表した。この発表は、電機各社や研究機関の強い関心を呼び、本格的な研究開発競争を巻き起こした。そして、その後、制御性の高いツイステッド・ネマティック(TN)方式やより安定した液晶材料の開発などの成果が相次ぎ、また、製造各社による素子構造の改良や生産技術の開発努力があり、今日の液晶表示装置の本格的な実用化に繋がった。

現在の液晶表示装置の普及は、携帯電話からカラーテレビに及び、極めて広範である。ハイルマイヤー博士による液晶表示装置実現への先駆的貢献は、このような表示装置の革命的変化の大きなきっかけとなったものであり、その波及効果は非常に大きく、技術進歩の歴史に残るものであり、極めて高く評価される。

以上の理由によって、ジョージ・H・ハイルマイヤー博士に先端技術部門における第21回(2005)京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

移動祝祭日-我が輝ける日々

ノーベル賞受賞作家アーネスト・ヘミングウェイは、1920年代にパリで過ごした日々を「移動祝祭日」のようだ、と書いています。時代と場所こそ違いますが、私もヘミングウェイと同じ刺激的な日々、つまり「移動祝祭日」を実際に体験しました。その話をしたいと思います。

ペンシルベニア州フィラデルフィア市で、両親が自分たちには無縁だったもの‐正規の学校教育‐を重んじる家庭環境で育ったときの思い出を、つまり、私の人生観を形作る上での出来事、また、どのような助言を受け入れ、どのような選択をしてきたのかを振り返ります。さらに、私は専門家として世界で初めて液晶ディスプレイを開発し、その後、人生の最終章ともいえる現在に至るまで、10年ごとに新しい道を歩んできたことをお話しし、創造性に関する私自身の考えについても触れてみたいと思います。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

「液晶表示の新展開」

Symposium:New Developments of Liquid Crystal Displays

日時
2005年11月12日
場所
国立京都国際会館
企 画
梶山 千里[九州大学 総長] 苗村 省平[メルク(株) 液晶事業部 厚木テクニカルセンター 所長]

プログラム

1:00
開会挨拶 梶山 千里
導入講演 苗村 省平 「流れる結晶の電子ディスプレイ応用」
受賞者紹介 榊 裕之[審査委員会 委員長、東京大学 生産技術研究所 教授]
受賞者講演 ジョージ・H・ハイルマイヤー[先端技術部門 受賞者]
「液晶ディスプレイ:その草分け時代の回想」
休憩
セッションI 座長:横山 浩[産業技術総合研究所 ナノテクノロジー研究部門 部門長]
講演 近藤 克己[(株)日立製作所 日立研究所 主管研究長]
「物性研究をベースとした液晶表示モードの開発」
講演 内田 龍男[東北大学大学院工学研究科 副研究科長]
「液晶ディスプレイ開発の経緯と将来」
セッションII 座長:石井 裕[シャープ(株) ディスプレイ技術開発本部 副本部長]
講演 竹添 秀男[東京工業大学 大学院理工学研究科 教授]
「屈曲形液晶におけるキラリティ」
講演 菊池 裕嗣[九州大学 先導物質化学研究所 教授]
「高分子が拓く液晶の新しい世界」
5:05
閉会挨拶 苗村 省平
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