1997年先端技術部門エレクトロニクス
フェデリコ・ファジン  写真

フェデリコ・ファジン
(Federico Faggin)

  • イタリア / 1941年12月1日
  • 半導体技術者 / 起業家
  • シナプティックス社 社長

世界初のマイクロプロセッサの開発

4氏のグループは世界初のマイクロプロセッサ4004を開発し、広範な機能を備えたマイクロコンピュータが少数の半導体チップで構成できることを示すことにより、マイクロプロセッサを基盤として産業および民生機器のエレクトロニクス化の道を拓き、新産業の創成と現代社会に計り知れない貢献をした。

プロフィール

略歴

1941年
イタリア、ビチェンツァに生まれる
1965年
博士号取得(物理学)、パデューア大学、イタリア
1967年
SGS‐フェアチャイルド社、イタリア
1968年
フェアチャイルドR&D半導体研究所、アメリカ
1970年
インテル社、4004マイクロプロセッサの開発に参画
1974年
ザイログ社、社長
1982年
サイグネット・テクノロジーズ社、社長
1986年
シナプティックス社社長

主な受賞と栄誉

1988年
国際マルコニィ・フェローシップ賞、イギリス
同科学技術金メダル、イタリア
1996年
「Z80、25年間にわたる産業への功績」嶋、他と共同受賞
秋のコムデックス、アメリカ
1996年
PCマガジン優秀技術賞、ホフ、メイザー、嶋と共同受賞
秋のコムデックス、アメリカ

主な論文・著書

1972年

“Standard Parts And Custom Design Merge In Four-Chip Processor Kit” with Hoff, M. E., Electronics

1972年

“The MCS-4 An LSI Microcomputer System” with Hoff, M. E., Mazor, S., Shima, M. and other, IEEE

1974年

3,821,715 Memory System for Multi-Chip Digital Computer, with Hoff, M. E. and Mazor, S.

1975年

“Trends In Microprocessors” IEEE

1976年

“Z80: Chip Set Heralds Third Microprocessor” Generation” with Shima, M. and other, Electronics

1978年

“How VLSI Impacts Computer Architecture” IEEE Spectrum

1996年

“The History of the 4004” with Hoff, M. E., Mazor, S. and Shima, M., IEEE Micro

贈賞理由

世界初のマイクロプロセッサの開発

フェデリコ・ファジン博士、マーシャン・エドワード・ホフJr.博士、スタンレー・メイザー氏、嶋正利博士達4人のグループは、共同で1971年に世界最初の汎用マイクロプロセッサ4004を開発し、現代社会に絶大なインパクトを与え、世界の産業構造と社会構造に大きな変革をもたらした。

4氏が開発したマイクロプロセッサ4004は、3mm×4mmのシリコンチップ一枚の上に2300個のトランジスタを集積し、その能力は初期のコンピュータの時代には、一つの部屋を占有する程の大きさであった中央処理装置(CPU)の機能に匹敵するほどの革新的なものであった。

このマイクロプロセッサは、データや命令を収納するメモリーおよび入出力用のレジスタなどと組み合わせることにより、マイクロコンピュータというそれまでなかったシステムを可能とし、その構成要素やプログラムを変えることによって、数字・文字・画像の処理やシステムの制御など、多様な用途に効率よく対応するという全く新しい技術の流れを作り出す役割を果たした。トランジスタや集積回路の発明によってエレクトロニクスは顕著な技術革新をもたらしてきたが、マイクロプロセッサ4004の出現によってプログラムが可能になる電子部品の時代が始まり、さらに飛躍的な発展をすることとなったのである。この結果、システムを構築する技術もハードウエアとソフトウエアを有機的に活用する方式に移行し、いわゆる第二次産業革命の引き金となった。このマイクロプロセッサ4004の登場以降、今日まで約四半世紀が経過し、この間データ幅は4ビットから8ビットへ、さらに16ビットから32ビット、64ビットへと発展、その計算能力と処理能力は驚異的な向上を見せている。マイクロプロセッサ4004には、この発展を遂げつつある技術の基本概念が全て含まれていたといえる。

今日、マイクロプロセッサはパーソナルコンピュータをはじめとして、家電製品から自動車、通信機器、医療機器に組み込まれ、我々の日常生活の隅々まで浸透しており、さらに工作機械などの産業用機器にも幅広く普及している。およそ人間の発明したもので、マイクロプロセッサの開発と発展ほど短期間のうちに大きな影響を与えたものは他に見あたらない。こうした進展は、マイクロプロセッサ4004の誕生が契機となって創り出されたものであり、日米伊4名の技術者の成果なくしてもたらし得なかったものである。よって、ファジン博士、ホフ博士、メイザー氏、及び嶋博士に先端技術部門の第13回京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

シリコンバレーでの我が半生-新製品開発にかけて

私はイタリアで育ちましたが、非常に幼い頃から私は機械類の虜で、特に飛行機にひかれていました。パイロットになりたいと思い、12歳の時には自分で設計した模型飛行機を作りました。模型飛行機作りに夢中になるうちに、次第に技術教育を受けたいと思うようになりました。1961年に、私は19歳でオリベッティに入社し、小型のデジタル・コンピュータの設計に携わりました。また、4人の技術者のリーダーとして、このコンピュータの製造に成功しました。

そのうち、どうしても物理学を学びたいと思うようになり、オリベッティを退職してイタリアのパドア大学に入学しました。1965年に物理学博士の称号を受け、最優秀学生として卒業しました。1966年にシリコンバレーに行く機会を得ましたが、その時、是非そこで働き続けたいと思いました。私のこの希望は、やがて1968年に実現することになります。その後フェアチャイルド・セミコンダクタ社の有名な研究所(カリフォルニア州パロ・アルト)に職を得、シリコン・ゲート・テクノロジーの開発に携わりました。シリコン・ゲート・テクノロジーはMOS集積回路の製造方法として当時、最も進んだ技術で、来るべき大規模集積回路時代の先触れとなったものです。

私は1970年にインテルに入社し、世界最初のマイクロプロセッサとなった4004の設計を手がけました。その後5年間、市場に出回ったものだけでも20件以上の集積回路の設計に携わりましたが、その中にはマイクロプロセッサ市場の成長を促進した8080も含まれています。

1974年に私は「企業病」にとりつかれました。これはシリコンバレーに蔓延している「病気」で、私はかつての上司と共同でマイクロプロセッサ専門のザイログ社を設立しました。同社の最初の製品となったZ80マイクロプロセッサは、私が構想したもので、発売早々にベストセラーになりました。Z80の発売は1976年でしたが、今だに量産されています。ザイログ社はマイクロプロセッサの初期の時代に重大な役割を果たしましたが、ザイログ社の経営最高責任者として、私は競争の激しいビジネスの世界で企業を経営することの難しさを学びました。

その後の17年間に、私はさらに2社を設立し、経営最高責任者を務めました。シグネット・テクノロジー社とシナプティクス社です。シグネット・テクノロジー社では、1984年初めにインテリジェント電話を発売しました。この電話をパソコンに接続すると、パソコンが音声とデータのワークステーションになります。シナプティクス社の方は1986年の設立で、ヒューマン・コンピュータ・インタフェースの製品の開発・販売を専門にしています。そのために、コンピュータに触覚、聴覚、視覚を持たせる研究を進めています。1995年には、シナプティクス社がタッチパッドを発売しました。タッチパッドは、まるでコンピュータの皮膚のように指で触られた場所を知覚する位置決め装置で、大成功を収めました。タッチパッドのおかげで同社も急成長し、成功しています。

1980年代半ばより、私は個人的に脳の働きに関心を持っております。特に、複雑な機構を操作することで、どのようにしたら機械に意識を持たせることが出来るか、といったことにとりつかれています。この疑問を解くために、私は余暇の大半を費やしています。インテリジェントなマシンを作ることで、逆に人間性への理解も進むのではないでしょうか。また、このような研究を通して、人を人たらしめている人間の特性について学び、この素晴らしい宇宙における私たち人間の役割を考察することが出来ると思います。もしかしたら、人間一人ひとりの心の奥深い部分に、宇宙(コスモス)の目的と結びついた深い精神の次元があるのかもしれません。このような発見が遠くない将来にあっても、私は驚かないと思います。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

マイクロプロセッサの誕生からその未来へ

The Birth of Microprocessor and Future Possibility

日時
1997年11月12日(水)10:00~17:30
場所
国立京都国際会館
企画
大見 忠弘 [専門委員会委員]東北大学大学院工学研究科教授 榊 裕之 [専門委員会委員長]東京大学先端科学技術センター教授

プログラム

10:00
司会 榊 裕之
開会 榊 裕之
10:05
挨拶 稲盛 豊実 稲盛財団常務理事
10:10
挨拶 末松 安晴 [審査委員会委員長]高知工科大学学長
10:15
記念講演 マーシャン・エドワード・ホフJr. 先端技術部門受賞者
「マイクロプロセッサアーキテクチャの着想」
10:45
記念講演 フェデリコ・ファジン 先端技術部門受賞者
「マイクロプロセッサの誕生」
11:15
記念講演 嶋 正利 先端技術部門受賞者
「マイクロプロセッサの未来」
11:45
記念講演 スタンレー・メイザー 先端技術部門受賞者
「ICと設計ツールの進歩」
12:15
昼食
13:15
司会 大見 忠弘
講演 西谷 隆夫 日本電気シリコンシステム研究所所長代理
「マルチメディア時代のプロセッサ」
14:00
講演 南谷 崇 東京大学先端科学技術センター教授
「非同期式プロセッサの研究開発」
14:45
休憩
15:00
講演 中村 行宏 京都大学大学院工学研究科教授
「VLSIプロセッサの高位論理合成設計」
15:45
講演 浅田 邦博 東京大学大規模集積システム設計教育研究センター教授
「日本の大学でのVLSI設計教育」
16:30
講演 亀山 充隆 東北大学大学院情報科学研究科教授
「知能集積システムの新しいパラダイムを目指して」
17:15
質疑応答
17:30
閉会 大見 忠弘
PAGETOP