2003年基礎科学部門地球科学・宇宙科学
ユージン・ニューマン・パーカー 写真

ユージン・ニューマン・パーカー
(Eugene Newman Parker)

  • アメリカ / 1927年6月10日
  • 物理学者
  • シカゴ大学 名誉教授

太陽風と宇宙電磁流体現象の解明による宇宙科学への多大な貢献

地球・太陽・宇宙にわたる電磁流体現象の研究により、太陽風をはじめとする多くの基礎概念を提案し、地球と宇宙の科学に新たな領域を切り拓いた。その影響は恒星や星間空間、銀河系の様々な現象の解明に大きく寄与しており、宇宙の新しい物理像を生みだした。

プロフィール

略歴

1927年
ミシガン州ホットン市生まれ
1951年
カリフォルニア工科大学 博士号
1957年
シカゴ大学 核研究所、物理学研究科 助教授
1960年
シカゴ大学 核研究所、物理学研究科 准教授
1962年
シカゴ大学 エンリコ・フェルミ研究所、物理学研究科 教授
1967年
シカゴ大学 天文学・天体物理学研究科 教授
1995年
シカゴ大学 チャンドラセカール殊勲名誉教授、物理学研究科、天文学・天体物理学研究科、エンリコ・フェルミ研究所名誉教授

主な受賞と栄誉

1967年
米国科学アカデミー会員
1969年
ヘンリク・アルクタウスキ賞、米国科学アカデミー
1978年
米国天文学会、ジョージ・エラリー・ヘール賞
1989年
米国科学賞
1990年
ウィリアム・ボウィ賞、米国地球物理連合
1992年
金賞、英国王立天文学会
1997年
ブルース賞、太平洋天文学会
2003年
ジェームズ・クラーク・マクスウェル賞、米国物理学会

主な論文

1958年

Dynamics of the Interplanetary Gas and Magnetic Fields. Astrophysical Journal 128:664, 1958.

1963年

Interplanetary Dynamical Processes. Interscience Division. New York: John Wiley and Sons, 1963.

1970年

The Generation of Magnetic Fields in Astrophysical Bodies. Ⅰ The Dynamo Equations. Astrophysical Journal 162:665, 1970.

1971年

The Generation of Magnetic Fields in Astrophysical Bodies. Ⅱ The Galactic Field. Astrophysical Journal 163:255, 1971.

1979年

Cosmical Magnetic Fields: Their Origin and their Activity. Oxford: Clarendon Press, 1979.

1987年

Magnetic Monopole Plasma Oscillations and the Survival of Galactic Magnetic Fields. Astrophysical Journal 321:349, 1987.

1998年

Nanoflares and the Solar X-ray Corona. Astrophysical Journal 330:474, 1998.

1994年

Spontaneous Current Sheets in Magnetic Field, with Application to Stellar X-rays. New York: Oxford University Press, 1994.

贈賞理由

太陽風と宇宙電磁流体現象の解明による宇宙科学への多大な貢献

パーカー教授は半世紀にわたって、太陽と宇宙の電磁流体力学現象の研究に携わり、「太陽風」をはじめとする多くの基礎概念を理論的に構築し、地球と宇宙の科学に新たな領域を切り拓いた。これにより、地磁気嵐やオーロラ等の地球磁気圏現象、太陽磁場の起源、太陽の外層大気(コロナ)の活動性と太陽風の変動、惑星間空間の磁場、彗星の尾の吹流し、宇宙線強度の変動など、太陽・地球間の多様な現象が解明され、その影響は恒星や星間空間、銀河系の電磁流体現象の研究にも発展し新しい宇宙観を生み出した。

パーカー教授の数多い業績の中でも特筆すべきは「太陽風」を理論的に予知したことである(1958年)。磁気嵐などの研究から、太陽コロナでの爆発時に電離した気体(プラズマ)の雲が放出されると推測はあったが、常時しかも超音速でプラズマが流れ出ていることをパーカー教授は理論的に導出した。特に、超音速流であるとの予言はそれまでの常識を覆すものであり、数年後、人工衛星による直接観測で見事に実証された。

太陽風は太陽の磁場を帯びて噴き出し、太陽の自転の影響でらせん状の磁場を宇宙空間につくる。地球に吹きつける太陽風は地球の磁場圏で止められ、迂回して流れる。地球は、この磁気圏により超高温・超音速の太陽風から守られている。太陽風の確認で、地磁気嵐や衝撃波の生成、オーロラ、放射線帯など地球を取り巻く現象を解明する枠組みが完成したといえる。

真空であると考えられていた宇宙空間を実は高速の太陽風が常時満たしており、それで地球・太陽間の種々の現象が解明されるなど、パーカー教授の理論は宇宙空間の認識を根本的に変えた。

またパーカー教授は、電磁流体力学理論を「星風」や「銀河風」など宇宙のあらゆる現象に拡張した。さらに長年の難問である天体磁場のダイナモ理論にも重要な寄与をし、著書『宇宙磁場―その起源と活動性―』(1979年)はその分野におけるバイブル的存在になっている。300編以上にも及ぶ論文はそのほとんどが単著であり、またその旺盛な活力によって、宇宙開発や基礎科学の振興にも大きく貢献した。

このようにパーカー教授は、電磁流体力学による研究を、太陽、宇宙空間、恒星、銀河系の様々な宇宙現象の解明へ展開し、宇宙物理学を発展させた。

以上の理由によって、ユージン・ニューマン・パーカー教授に基礎科学部門における第19回(2003)京都賞を贈呈する。

記念講演

記念講演要旨

好奇心にあふれた我が人生

子供の頃、例えば蒸気エンジンの不思議な話をしてもらった時は嬉しかったものです。「押したり引いたり」という、子供にとってわかりやすい言葉のおかげで、蒸気エンジンのしくみがすぐに理解できました。また、両親は、顕微鏡を買ってくれたり、たくさんの本を読んでくれたりして、好奇心を満たしてくれました。16歳の時、私は学校で1年間物理を勉強し、自然界のあらゆる現象の根底に物理が存在することを知りました。そして、生涯かけて物理の研究を続けようと心に決めたのです。やがて私はミシガン州立大学で物理学と数学を学び、1948年に卒業しました。その後、カリフォルニア工科大学大学院へ進み、1951年にそこで博士号を取得したのです。

今から50年ほど前に私が物理学の研究を始めた頃、技術や機器の進歩により、地球物理学、宇宙物理学、天体物理学、銀河物理学の分野で誰も予想できなかったほどの発展が見られました。その頃にはすでに、地球の磁場が地球の対流する液体鉄の核によって形成されたことがはっきりとわかっていました。ほどなくして、太陽の磁場の姿が明らかになり、宇宙線の主成分は陽子であることが解明され、さらにその強度変動が測定されました。そして、物理学者を目指す者が取り組むべき問題のすべてがそこにあったのです。多くの難題が科学的に解明されていく様子を何年にもわたって実際に目にすることができたのはありがたいことでした。そして、今日でも解明すべき謎は残されており、私たち科学者はその解決に挑戦しているのです。不思議な現象が新たに発見されても、依然として私たちの能力ではその本質をほとんど解明することができません。理論物理学の進歩をもってしても、黒点の起源、太陽ダイナモの性質の詳細といった以前からの謎には、長い歳月を経た今もなお解明されないままのものがあります。また、太陽の活動に見られるマウンダー極小期や、太陽の磁気活動全般と地球気候のきわめて密接な関係といった難問も見つかっています。この点は、今日、地球温暖化との関連で重要な問題となっており、地球温暖化について私たちに賢明な選択ができるとするならば、この星の気候を形成する様々な要素についてもっと詳しく知っておく必要があります。私たちの行く手には、考えなければならないこと、測定しなければならないこと、観察しなければならないことが山ほどあり、いつになればすべての謎が解明されるのか検討もつきません。今後も私たちの好奇心をかきたてる謎は、果てしなく生まれ続けるのです。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

宇宙電磁流体力学と太陽活動

Cosmical Magnetohydrodynamics and Solar Activity

日時
2003年11月12日
場所
国立京都国際会館
企画
佐藤 文隆 [(審査委員会 委員長)甲南大学 理工学部 教授] 柴田 一成 [京都大学 大学院理学研究科 教授]
司会
西田 篤弘 [(審査委員会 委員)宇宙科学研究所 名誉教授]

プログラム

13:00
開会
挨拶 佐藤 文隆
受賞者講演 ユージン・ニューマン・パーカー
「磁場の自発的不連続面と恒星X線コロナ」
講演 柴田 一成
「宇宙電磁流体力学:太陽風からリコネクションまで」
休憩
太陽活動と地球環境 司会:柴田 一成
講演 常田 佐久 [国立天文台 太陽物理学研究系 教授]
「ジーン・パーカーと太陽物理学の革命的進展」
講演 寺沢 敏夫 [東京大学 大学院理学系研究科 教授]
「太陽圏・星間物質・宇宙線」
講演 五家 建夫 [宇宙航空研究開発機構 総合技術研究本部 環境計測技術 グループ長]
「宇宙開発と太陽活動」
講演 村木 綏 [名古屋大学 太陽地球環境研究所 教授]
「太陽活動の長期変動と地球環境への影響」
質疑応答
挨拶 西田 篤弘
17:30
閉会
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