1987年思想・芸術部門映画・演劇
アンジェイ・ワイダ 写真

アンジェイ・ワイダ
(Andrzej Wajda)

  • ポーランド / 1926年-2016年
  • 映画監督

ポーランドの激動の歴史をみつめ、人間の自由と勇気、尊厳のあり方を表現し、世界に大きな影響を与えた映画監督

戦後ポーランドにおいて優れた映画を製作し続け、人間の尊厳と自由精神の高揚を力強く訴えるとともに、その高邁な作品と情熱的な製作態度で人々に多大な影響を与えてきた世界的な映像作家である。
[受賞当時の部門: 精神科学・表現芸術部門]

プロフィール

略歴

1926年
ポーランド、スワルキに生まれる
1945年
クラクフ美術アカデミー在学
1954年
ウッジ国立映画大学卒業
映画監督として『世代』(A Generation)でデビュー
1959年
舞台演出家として『帽子いっぱいの雨』(A Hatful of Rain)でデビュー
1972年
フィルム・ユニットX(イクス)の代表を務める
1978年
ポーランド映画討論クラブ連盟会長を務める
1978年
ポーランド映画人協会会長を務める
1981年
ポーランド映画討論クラブ連盟名誉会長を務める

主な受賞と栄誉

1959年
ヴェネチア国際映画祭国際批評家連盟賞『灰とダイヤモンド』
1971年
モスクワ国際映画祭監督賞『白樺の林』
1975年
モスクワ国際映画祭金賞『約束の土地』
1980年
日本文化庁芸術祭大賞『大理石の男』
1980年
ベルリン国際映画祭最優秀主演男優賞『コンダクター』
1981年
カンヌ国際映画祭グランプリ『鉄の男』
1982年
セザール賞監督賞『ダントン』

主な作品

1959年

『灰とダイヤモンド』

1971年

『白樺の林』

1975年

『約束の土地』

1977年

『大理石の男』

1981年

『鉄の男』

1982年

『ダントン』

贈賞理由

ポーランドの激動の歴史をみつめ、人間の自由と勇気、尊厳のあり方を表現し、世界に大きな影響を与えた映画監督

アンジェイ・ワイダ氏は、ポーランドの世界的な映画作家として知られる。ワイダ氏は、第二次世界大戦後、この国の映画がめざましい興隆をとげた1950年代後半に、『地下水道』、『灰とダイヤモンド』等を製作し、いわゆるポーランド派活動の先頭に立った。以来、豊かな感性と緻密な構成力を駆使して、常に優れた作品を発表し、映画芸術の発展に大きく貢献した。

1926年3月6日、ポーランド北東部のスワルキに生まれたワイダ氏は、13歳でドイツ軍の祖国侵略にあい、16歳のころから反ナチズム抵抗運動に参加した。解放後はクラフクの美術アカデミーで絵画を学び、ウッジの国立映画大学で演出を学んだ。1954年卒業後、『世代』、『地下水道』、『灰とダイヤモンド』の抵抗3部作とよばれる連作で、戦中戦後の祖国同胞の悲惨な体験に題材をとり、戦うこと、生きることが人間をどのように動かしてゆくかを鮮烈な映像に刻み、世界的な反響をよんだ。これらをリアリズム系列とよぶならば、ワイダ氏はまたロマンティシズムの系列とよぶべき作品があって、『夜の終わりに』、『白樺の林』、『ヴィルコの娘たち』などで青春の傷みや安らぎをうたった。さらにまた、『灰』、『天国の門』、『約束の土地』、『ダントン』等では、時代をさかのぼって人間の欲望と挫折を描いた。

作風も題材も幅広いワイダ氏の作品を一貫して流れるものは、心に目標を持つ人間の、大いなる困難に立ち向かって努力する姿であり、それによって人間性の深奥に迫ろうとするが、そのことはワイダ氏自身の作家的姿勢とも深くかかわっている。また、『大理石の男』や『鉄の男』には、この国の政治体制や社会の変革を人々がどのように生きたかを訴える力強い発言がある。常に変わらぬ創作活動は、フランスでの『ダントン』、ドイツでの『ドイツの恋』等の外国での映画製作にも及んでいる。

アンジェイ・ワイダ氏の功績は、その作品経歴が示すように、戦後ポーランドにおいて優れた映画を製作し続け、人間の尊厳と自由精神の高揚を力強く訴えてきたことにあり、その高邁な作品と情熱的な製作態度は、人々に多大な影響を与えてきた。近年の政局の下でポーランド映画人協会会長、フィルム・ユニットX(イクス)代表の公職を退いたが、それによってさらにワイダ氏は自らの自由な精神の高揚を果たすことができるにちがいない。

ワイダ氏は演劇にも映画と同等の情熱を注ぎ、特にドストエフスキー作品の演出家として高い名声を得ている。昨年満60歳を迎えたのを記念して国内各地で、『ワイダ演劇展』や『ワイダ映画30本展』が開かれた。近年、『愛の記録』のあとフランスでの『悪霊』の映画化が決定し、今後の芸術活動にも大きな期待が寄せられる。

記念講演

記念講演要旨

カメラを通して人生を見る

本記念講演会主催者の要請により、私の30年にわたる映画・演劇人としての生活を振り返ってみました。それは一つの映画から次の映画へと続く映画製作の数々、そして舞台演出の数々であり、またそれによって何か一般的な教えとか原則を引き出して、皆様に問うてみようという試みでした。

私は何か素晴らしいことを発見してきたでしょうか?私は映画そのものについて述べているのではなく、仕事の方法についてお話しているのです。

この試みは「私は自分の時間を有効に利用しただろうか」という疑問にすべて集約されます。

私の最初に意識した体験は戦争でした。人の生活がいかに消え、そしてそれが何と短いものかを私は見てしまいました。この個人的体験から、また自分のすべての計画を遂行するには時間が足りないのを承知していますから、私はどんな仕事も後にまわすということはしませんでした。

戦後の苦しい時代に我が国で繰り返された社会的、政治的危機から、より良き政治的状況を待ち望んでも詮ないことだということを私は学びました。

映画と演劇は共通の活動領域をもつ芸術です。

演出家にとって自分個人だけが芸術家であるだけでは不十分であり、演出家と共に働く俳優達を芸術家として育てあげる能力が必要とされます。

芸術家は自分個人の資質とは別に、本人の出自する国にもとづくある種の天才的火花をも保持する必要があるのでしょう。この天才的資質を育てあげ、またそれをもって世界のどこに問うても良いでしょう。しかしどんなに苦労しても、また老年になって人混みのなかでもまれても「有り難う」と言える、自分の祖国が在ることが好ましいものです。

以上に述べたことのすべてから、ポーランドにおける演出家がなぜ政治的問題に発言し、個人や団体の自由にかかわる社会的討議に参加すべきか、その理由がはっきりおわかり戴けるでしょう。

我々は社会的人間であらねばなりません。なぜなら演劇にも映画も集団のなかで生まれ、そして大衆のために捧げられるからです。

【関連情報】
記念講演録(PDF)
ワークショップ

ワークショップ

アンジェイ・ワイダの映画の世界

The world of Andrzej Wajda's film

日時
1987年11月12日(木)10:30-17:00
場所
国立京都国際会館
司会:
高野 悦子 精神科学・表現芸術部門専門委員会委員、岩波ホール総支配人

プログラム

13:00
開会
13:05
挨拶 稲盛 和夫 稲盛財団理事長
13:10
解説 登川 直樹 精神科学・表現芸術部門専門委員会委員、日本大学芸術学部教授
13:30
映画 アンジェイ・ワイダ監督作品
『愛の記録』
15:35
休憩
15:50
講演 アンジェイ・ワイダ 精神科学・表現芸術部門受賞者
「映画監督とそのスタッフたち」
17:00
閉会
【関連情報】
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